マナーうんちく話2248《世界の「3大食法」と日本の「箸文化」》

平松幹夫

平松幹夫

テーマ:日常生活におけるマナー

●国によってテーブルマナーが異なる理由
マナーは国々の気候風土、国民性、歴史、文化、宗教などにより大きく異なりますが、食事のマナーは、主食や調理法や食べる時に使用する道具及び宗教により違います。

例えば世界の4割を占める「手食」は南アジア、西アジア、東南アジア、中近東、アフリカなどで、イスラム教徒やヒンドゥー教徒に多くみられますが、神道の和食とは全く考え方が異なります。

手食の人にとっては、食べ物は神様から頂いた大変神聖なものだという考え根底にあります。
これは日本の箸食と全く同じ考えです。

ただその神聖な食べ物を手で直接食べるのは神様に対して失礼だ。
だから食べ物と人の「橋渡し」として「箸」を使用するのが「箸食」の日本の考えです。

一方「手食」は神聖な食べ物だからこそ直接手で食べることを「良し」とする考えであり、清浄とされる右手で食べるマナーが存在します。

加えて日本は粘り気のあるジャポニカ米を焚いて食べますが、手食地方の米はバサバサした長粒のインディカ米ですから、手で食べるのが合理的ということです。

●日本の箸食文化
そして世界3大触法の一つ「箸食」は、東南アジア、中国、台湾、韓国などですが、熱い料理が多い中国料理や、粘り気の多いジャポニカ米のご飯にマッチします。

また同じ箸であっても、箸の素材や長さや太さなどは多岐にわたります。

勿論作法も国により異なりますが、恐らく日本のように豊かな文化を有し、厳格な作法が定められている国はないと思います。

加えて、日本のほとんどの家庭では歯ブラシと同じで、個人用の箸を使用します。
いわゆる「マイ箸」ですね。

人により使用する箸の柄も長さも色も異なるということです。
ちなみに老若男女皆同じなのは「祝い箸」だけです。

●多様性に富んだ日本の箸
日本の箸は非常に多様性に富んでいるのが大きな特徴です。
先ず箸の用途ですが食事をするときに使用する「食箸」、料理に使用する「菜箸」、料理を取り分けるための「取箸」などがあります。

素材も豊富ですが、日本の箸の素材は木や竹といった植物性が多いのが特徴です。
竹は、しなやかで強く、細かいものが食べやすくなっています。
また杉は独特の香りがあり懐石料理などに主に用いられますが、割箸にも利用されます。
檜の箸には耐水性があります。
いずれにせよ、植物性ですから口当たりがいいのが嬉しいですね。

それに日本は昔から神様や仏様を信仰してきたので、神道や仏教が反映された独特の箸文化を有しています。

「マナーうんちく話」でもたびたび触れている「神人共食箸」です。
両方が尖っていて、上の部分は神様が、下の部分は人が使用しますが、正月のお節料理や結婚式など、おめでたい時に利用します。

さらにおもてなしの世界では、香りのよい杉を使用した両口箸の「利休箸」も日本ならではの美しい文化だと思います。
ちなみにこれは千利休の作ですが、料理屋さんでは「休」という字は休業につながり縁起が良くないので「利久箸」と表現することもあるようです。

形も丸や5角、6角などもあり、使用する人により長さも色々です。

●手食から進化したフォーク・ナイフ・スプン食

フーク・ナイフ・スプン食も世界の3割を占めますが、オセアニア、南北アメリカ、ヨーロッパ、ロシアなど肉食系が多い地域です。

牛や豚や羊などの肉は、手や箸ではなかなか食べにくいので、切ったり、刺したりできる丈夫な小物が必要になってくるわけですが、こうして考案されたのがナイフやフォーク類で、そんなに長い歴史はありません。

フォークやナイフを「カトラリー(cutlery)」と言いますが語源はカットで「切る」という意味です。

一般的にカトラリーといえばナイフやフォークやスプンを指す場合が多いのですが、広い意味では食事で使用する「料理を口に運ぶ食器」の総称でもあるので、たまに箸も含む場合があります。

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平松幹夫
専門家

平松幹夫(マナー講師)

人づくり・まちづくり・未来づくりプロジェクト ハッピーライフ創造塾

「マルチマナー講師」と「生きがいづくりのプロ」という二本柱の講演で大活躍。「心の豊かさ」を理念に、実践に即応した講演・講座・コラムを通じ、感動・感激・喜びを提供。豊かでハッピーな人生に好転させます。

平松幹夫プロは山陽新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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