マナーうんちく話569≪泥より出でて、泥に染まらず≫
2月の異称は「如月」が良く知られていますが「梅見月」とも呼ばれます。
冬枯れの向こうから紅梅の花が咲き始めました。
我が家の庭にも間もなく、幸福と長寿をもたらす福寿草が、黄金色の花を咲かせてくれる頃です。
梅も福寿草も早春に真っ先に春を告げてくれますが、梅が「春告げ草」と呼ばれるのに対し、福寿草は江戸時代には「福告げ草」と呼ばれたそうです。
加えて四季の国日本には、春、夏、秋、冬の訪れを知らせてくれる「香木」があります。香りで季節の到来を知らせてくれるわけですね。
たとえば沈丁花は甘い香りで春の訪れを教えてくれ、クチナシは夏の訪れを、金木星は秋を、そして蝋梅は冬を知らせてくれます。
そして季節は二十四節気の「大寒」から、節分を経て「立春」へと移行します。
節分は雑節の一つですが、年に4回ある季節の分かれ目です。
コロナの対応が3年前とはすっかり変わり、年中行事も復活の兆しを見せているので、今年の節分はあちらこちらで「豆まき」が見られそうですね。
今年は中国産の大豆が値上がりしているので、国産の大豆を使用するところが多いとか・・・。
ところで節分にはなぜ豆をまくのでしょう?
旧暦では立春が一年の始まりですから、立春の前日の節分は大晦日にあたる大変重要な日ですから、その清めとして豆を撒くわけです。
節分は冬ではないのですが、まだ立春になってないので春でもありません。
冬でもなく、春でもない非常に不安定な時期ということです。
その不安定なところに向けて、コロナのような感染症の病や、大雪、大雨、強風などの天災、あるいは飢餓などが襲ってきます。
昔の人はそれらを鬼の仕業と考えており、鬼払いの効果がある豆をまいたようです。
ちなみに鬼は火が嫌いですから炒った豆を撒くわけですが、その後、数え年の分だけ豆をいただき、無病息災を祈ります。
鬼が嫌がる柊や鰯の頭などで退治する方法もあります。
葉が鋭く、ギザギザをしている柊は、日本でも西洋でも邪気払いに使用されますが、この点は西洋でも東洋でも同じ考えのようです。
ただ鋭いギザギザで魔よけの木として重宝された柊も、年を重ねるとギザギザがほころび、丸くなって、優しく心を和ませるようになります。
素晴らしい年の取り方で、私も見習いたいと思います。
そもそも日本の年中行事は、国や国民の繁栄や安泰を祈願するためにはじめられたわけですから、仏教や神道、あるいは陰陽道などの考えが、いたるところにとりいれられています。
従ってせっかく豆まきをするのであれば、なるべく作法通りにされたらいいと思います。
豆まきの豆は神棚があれば神棚にお供えして、神の力を授かれば、より効果が期待できるかもしれませんね。
豆を撒く人は、その家の家長や福男・福女が担当すればいいでしょう。
夜になって、鬼が家から出られるように窓を開放し、大きな声で「鬼は外、福は内」と呼びながら撒き、撒き終わったら福が逃げないよう速やかに窓を閉じます。
※掛け声は地域により異なるので、地域の風習に合わせるのがいいでしょう。
最後に数え年の数だけ豆を食べて邪気を払い、福を呼びます。
縁起のいい「福茶」を飲むのもお勧めです。
豆を3粒、梅干し、昆布を湯飲みに入れ、お湯を注げば出来上がりです。
そして翌日は立春となりいよいよ春になるわけですが、私は毎年「立春大吉」と書いた紙を部屋に貼って、一年間の無病息災を祈ります。
1月7日には七草粥、11日には鏡開きのゼンザイ、15日の小正月には小豆粥、そして節分には大豆をいただき、立春には立春大吉の札を貼る等、年の初めには健康や家内安全を願う行事が多いですね。
2月8日は「針供養」の日です。
昔の女性にとって、針仕事はとても重要な仕事で、折れたり、錆びたり、曲がったりして使えなくなった針に感謝して、供養しました。
筆もそうですが、使えなくなった文房具や小道具にも感謝の心を抱き、供養する気持ちは本当に素晴らしいと思います。
SDGsのような洒落た言葉はありませんが、物を大切にしてきた先人の思いに馳せるのもいいですね。
「小豆3粒、包める布は捨てるな」といわれたようです。
また2月14日はバレンタインデーです。
現役時代が懐かしいですが、最近のチョコレート事情も大きく変化したようですね。
すっかり多様化し、さまざまなバリエーションが生まれ、「本命チョコ」の他に「友チョコ」「ファミチョコ」「マイチョコ」「感謝チョコ」などなどがあるようですが、ややこしいですね。
なによりも本命チョコが減少傾向にあるのも気になります。
時代に流れでしょうか?
バレンタインデーの由来になったバレンチノ司祭もびっくりでしょう。
それよりももっと心配なことは婚姻数と、生まれてくる子どもの激減でしょう。
何兆円もの予算で兵器を充実させても、食料自給率や子どもの数が増えなければ、国は栄えないと思うのですが・・・。
この時期に相応しい「梅一輪 一輪ほどの暖かさ」という服部嵐雪の有名な句があります。
たった一輪の梅の花ですが、それを見ると思わず心がほっこり温かくなります。
さらに立春以降に来る寒さは「春寒」とも「寒の戻り」ともよばれますが、「早春寒波」や「余寒」という言葉もあります。
余寒がまだまだ厳しいですが、梅を始め、花の香りが漂う頃でもあります。
雪にも負けず、早春の寒波にも負けず、花咲く春を楽しみに元気で、笑顔でお過ごしくださいね。