マナーうんちく話569≪泥より出でて、泥に染まらず≫
温暖化の影響で数十年に一度とか百年に一度といわれる災害に見舞われることが珍しくなくなりましたが、2021年の節分は124年ぶりに2月2日になります。
日本は四季の国で春・夏・秋・冬が明確に分かれていますが、それぞれの季節のスタートが立春、立夏、立秋、立冬で、その前日が「節分」です。
土用や八十八夜のように「雑節」の一つにあたる節分は、まさに季節の節目にあたる日ですが、近年「節分」といえば春の節分を指すのが一般的になっています。
暖房器具、照明器具、食糧に乏しかった昔、寒さや飢えとの戦いの連続であった冬から、花咲く春を迎えるということは無上の喜びだったわけですね。
従って春の節分はまさに待ちに待った日であり、特別な日だったわけでしょう。
加えて旧暦では立春が一年のスタートになります。
ただ、節分は季節の境目で、大変不安定な日と言えます。
また今でもインフルエンザが流行期を迎えますが、春の節分の頃は疫病が流行する頃でもあります。
そのような状況下を狙って、天から目にみえない邪気が降りかかってきます。
邪気とは、現在のコロナや飢餓や天災を指し、昔の人はそれを「鬼」とよんだのでしょうね。
そこで鬼退治をするわけですが、本来は正義のヒーローがやってきて、邪気を退治したともいわれていますが、現在では悪魔の鬼に向かって豆をまくスタイルになっています。節分の鬼は複雑な歴史が反映されているようです。
ちなみに昔から米・麦・粟・稗・豆などの五穀は邪気を払うと考えられていました。また鬼は火を嫌います。だから邪気を払う効果があるとされた豆を火で炒って、効果を高めたのでしょう。
この他にも鬼は臭いものや尖ったものも嫌うので、イワシの頭やヒイラギを使用する方法も存在します。
ところで邪気を鬼に見立て豆まきをしたのは室町時代からだといわれていますが、それにしても古い歴史を有しています。
そして昔は、しきたりの意味や意義を理解し、それなりの作法に準じて、行われていたようです。
例えば炒った豆はいったん神棚にお供えします。
それを年男が「福は内、鬼は外」と唱えながらまき、それに参加した人たちが数え年の数だけ食して、その年の健康祈願をします。
自宅で豆まきをされる場合は、家の中心となる部屋で、時計回りにまけばいいでしょう。
ちなみに「年男」とは、自分と同じ干支(えと)の歳を迎えた男女と、年末年始の行事を仕切る家長という意味があります。
ご家庭の事情に応じて、豆をまく人を決めたらいいと思います。
豆まきの行事ではもうけが少ないのでしょうか?今はすっかりコマーシャルベースにのっとり、「ふと巻きずし」を恵方に向かって、無言で丸かじりする風習が勢いを増しているようです。
さらにコロナ禍の今は、無言で食事をする「黙食」が奨励されているので、恵方巻と呼ばれるふと巻きずしを、無言で食べるのが一層流行るかもしれませんね。
節分の豆まきは、春を迎えるために邪気を祓い清め、福を呼び込むわけですが、同時に自分自身も清めてはいかがでしょうか・・・。
私は例年、近所の氏神様に参拝するよう心掛けています。
恵方巻もいいと思いますが、「豆まき」のような年中行事に込められた、遥かなる歴史にも思いをはせてみるのもお勧めです。
最後に「春の来ない冬」はありません。
気持ちも新たに、元気で、前向きにご活躍下さい。