マナーうんちく話453≪冬来りなば春遠からじ≫
台風一過。澄んだ青空に秋の趣が感じられるようになりました・・・。
ところで厳しい残暑ですが、9月7日は二十四節気の一つ「白露」で、大気が冷えて露ができ始める頃です。
ちなみに白露とは草に降りる露が、玉のように白く輝いて見える様子です。
この時期は空気が澄み渡り、月がとてもきれいに見える頃ですから、露は「月のしずく」とも呼ばれます。響きがいいので店・菓子・曲名などにも使用されます。
ところで日本には「二十四節気」と「七十二候」、それに5つの節句がありますが、五節句の中の「菊の節句」をご存じでしょうか?
以前にもこのコラムで触れましたが、菊の節句は「重陽の節句」で、五節句の中では一番格式が高く、一番めでたい節句です。
数字には偶数と奇数がありますが、昔中国では奇数が「陽の数」とされていました。
日本では慶事には奇数が用いられますが、奇数は陽の数字でめでたいからです。
9月9日は陽数(奇数)の中でも、最大の数である「9」が重なるので「重陽(ちょうよう)」の節句と呼ばれ、旧暦では菊の花が咲く時期でもあるので「菊の節句」ともなづけられたわけです。
秋から冬にかけて花が乏しくなる中、凛と咲く菊を、昔の人は大変重宝したのでしょう。「不老長寿」の花とし、邪気を払う効果があると考えられていました。
だから重陽の節句は、江戸幕府は一番格式が高い節句と定め、諸大名以下を登場させ祝いました。
菊花の宴を開催したり、「菊酒」を飲んで長寿を祈念したりしたわけです。
民間でもこれにならいチョコに日本酒を注ぎ、菊の花びらを2-3枚浮かべて頂きます。また「栗ご飯」を炊いて食べる風習ができました。
さらに、この日から「衣替え」を行い「綿入り」をきるようになったとか・・・。
現在は色々な若返り方法が紹介されていますが、日本では平安時代から菊を使用した「着せ綿」という風習がありました。
9月8日の夜、菊を布で覆い、それを外に出しておくと、綿は露を吸います。
翌朝、つまり9月9日の朝に、その露を吸った綿で身体を拭けば、大変若返ると考えられていたようです。
「菊酒」に「着せ綿」、いずれも人生100歳時代を豊かに過ごすにはとても適した風習だと思いますが、そんな素晴らしい文化が日本から消え去ってしまいました。
勿体無い限りですね・・・。
物質的豊かさや便利さばかりが追求され、日本人として豊かな生活が次第に遠のいてしまっている気がしてなりません。
さらに日本独特の「勿体無い文化」しかりです。
様々な工夫をしながら、物を大切に使用する文化はどこの国でもありますが、不思議なことに「勿体無い」という言葉はみあたりません。
物を無駄にしないという意味と、物を大切に使用するという二つの意味がありますが、もともと八十八の手間暇をかけた米粒を、大事に扱うことは、日本人なら小さい時からしつけられたことですね。
2005年に京都議定書の関係で来日した、ケニアの環境副大臣ワンガリ・マータイ博士が、日本の勿体無い文化に感銘を受け、世界に「mottainai」文化を広げて頂いた話は、まだ記憶に新しいと思います。
では肝心かなめの日本はどうでしょう?
年中行事一つ取っても、有意義な文化がどんどんすたれています。
食料廃棄物も深刻な問題を抱えたままです。
最も勿体無いことは、自分で自分の命を絶つことですが、減少傾向にあるとはいえ日本の自殺率は高い水準のままでしょう。税金の無駄遣いも後を絶ちませんね。
こんな国が本当に幸せになれるのか?心配になるときもあります・・・。