マナーうんちく話516≪袖触れ合うも多生の縁≫
ホテル業界で33年間、現場の第一線で接客の仕事に携わってきました。
多くの苦労も経験しましたが、得たものも結構あったような気がします。
その一つになりますが、TPOに応じたエスコートが自然に身に付いた気がします。
この事はマナー講師にとって、とてもありがたいことです。
そして今、世の中はとても便利で豊かになりました。
高等教育機関も非常に増え充実しています。
そのおかげで物質的にも恵まれ、高い知識を身に着けている人は珍しくなくなりました。しかし、その割には他者を思いやることができる人や、謙虚な人は少なくなった気がしてなりません。
英語教育には大変熱心ですが、レディーファースト文化を正しく理解し、エスコートが上手にできる人は、本当に少ないように思えます。
家庭の躾や学校教育の在り方にも問題はあるとおもいますが、最終的には本人の自覚次第だと考えます。
そこでレディーファーストとエスコートの仕方・受け方について触れてみます。
「レディーファースト」とは、公共の場で、女性や高齢者や子どものような弱い立場の人を優先させ、気遣うことです。また女性に配慮して、女性のほうが上位者とみなして振舞うという考え方もあります。
【レディーファーストに対する心構え】
では改めてレディーファーストを実践するにはどうしたらいいのか?についてですが、単に知識を有しているだけではだめです。
人を思いやる心や、人のためになるという気持ちが大切です。
その心構えを常に持ち、レディーファーストのスキルを身に付ければ、多くの人から感謝され、信頼を得ることができるでしょう。
当然周囲との人間関係も良くなるでしょう。
「私は気が利かないタイプ」だからとあきらめる必要はありません。
レディーファーストはタイプとか性格という問題ではなく、経験の問題です。
それに決して難しいことでもなく誰にでもできることです。
まず相手の立場に立って、「頼まれる前にする」ことを常に心がけて下さい。
例えば日本の挨拶は「先手必勝」といわれますが、されるのを待つのではなく、こちらから積極的に仕掛けることです。
頼まれもしないのにしたら「おせっかい」にならないか?と心配もありますが、レディーファーストはバランスが難しいことは確かです。
ポイントは「さりげなく」ですが、こればかりは経験を積むことが必要です。
さらに「見返り」は求めないで下さいね。
「give and take」ではなく「give and give」と心得て下さい。
そして相手のためになる、相手に喜んでもらうことが自分の幸せに結びつくという考えが大切です。
まさに「情けは人のためにならず」です。
戦前の精神教育は、男性は「質実剛健」、女性は「良妻賢母」ですが、その名残もあって、いまでも女性は控えめにという気持ちの人も結構います。
謙虚になることは、とてもいいことですが、TPOに応じ、男性がレディーファースト心を発揮したら、女性はそれを素直に受け「ありがとう」で答えることも大切です。
礼も過ぎれば無礼になりますが、遠慮も度を過ぎれば失礼になります。
次回はエスコートの具体的なシーンについて触れてみます。