マナーうんちく話498≪うかつ謝り≫
新型コロナ肺炎で多くの行事が中止になっていますが、この時期は暦の上では桃の花が咲く頃で、数年前に植えた我が家の李も愛らしい花を咲かせてくれました。
薄桃色の花の開花は桜と同様とても楽しみですが、梅や桜と同じで、葉が出る前に花が咲きます。
昔から桃には邪気払いの力があると信じられ重宝されていたようですが、私の住んでいる「ハレの国」岡山は桃の産地であり、桃太郎伝説があります。
鬼退治をしたのは桃から生まれた桃太郎ですが、桃には特別な呪力がそなわっていたのかもしれませんね。
そして今、桃の品種は沢山市場に出回っていますが、いずれも水分が非常に多く、平安時代には夏の「水菓子」として親しまれていたようです。
ところで桃のつぼみがほころび、花が咲き始めると、そろそろモンシロチョウが飛び始めます。今では大変少なくなってきましたが、春のうららかさに彩を添える貴重な風物詩だと思います。
ただモンシロチョウの幼虫である青虫は、とても食欲が旺盛で、野菜作りには困った存在です。私は農薬を使用しないので、毎年多くの葉野菜が被害をこうむります。
ちなみに昔は蝶の事を「夢見鳥」とよんでいたようです。
夢の中で蝶なのか?蝶の夢の中なのか・・・。
幻想的なイメージが漂いますが、「蝶の夢を見た」話は今ではあまり聞きませんね。
さて皆さんはお世辞を言うタイプですか、言わない方でしょうか。
「お世辞はどうも苦手」という人もいれば、前向きにどんどんいう人もいるでしょう。
ただしここでの「お世辞」は「へつらい」でも「おべんちゃら」でもありません。
勿論「忖度」でもありません。
「おべんちゃら」はある意味で微笑ましい側面もありますが、忖度はいつ聞いても非常に不機嫌になりますね。
もうすっかり慣れっこになりましたが、言う方もつらいし、聞く方も不機嫌になりますね。保身のためには仕方ないということでしょうか?
そうであれば、下の者にも優しく接してほしいものですね。
その点江戸時代のお世辞で気分を害されることは先ずありません。
江戸商人が商売繁栄のために築き上げた「江戸しぐさ」でのお世辞は、挨拶の後に一言加味することで、互いに良好な人間関係を築く知恵です。
例えば、午前中にお客様と合えば「お早うございます」と言葉を発しますが、これで終わってはよろしくありません。
「お早うございます」の後に、「今日はいい天気になりそうですね」とか、「今日は絶好の花見日和になりそうですね」などと付け加えるわけです。
さらにその後に「最近は、お加減はいかがですか?」とか、「お風邪はもう良くなりましたか。ご無理をなさらないでくださいね」などと、相手に対する思いやりの言葉を添えればなおいいですね。
これに「笑顔」が伴えば、まさに「和顔愛語」です。
ちなみに以前このコラムでも触れましたが、江戸しぐさに「三つ心、六つ躾、九つ言葉、文十二、理十五で末決まる」があります。
江戸時代には武士の子どもは藩校で、商人の子は寺子屋で学問を習っていましたが、当時は既に年齢に相応しい段階的なカリキュラムが整っていたようです。
特に言葉遣いは厳しく教え込まれ、9歳頃には「お早うございます」「今日は」の後に、何か一言加味するよう教えられていたとか。
今は英語全盛です。英語も大事でしょうが、このような挨拶や、美しい箸の持ち方なども併せて教えて頂きたいものです。
いずれにせよ円滑な社会生活を営むためにも、江戸しぐさに見られる「世辞」を多くの人が言えるようになればいいですね。