まなーうんちく話798《月々に 月見る月は 多けれど・・・。》
四季が明確に分かれ、南北に細長い日本列島では、季節に応じ様々な花を愛でることができます。
幸せの黄色い花、清楚な感じの白い花、情熱の赤い花・・・。
春を華麗に彩る桜の花も日本人には好まれていますが、この時期に梅雨の恵みを受け凛と咲く紫の花も、私たちの心に沁みるものがあります。
七十二侯では「菖蒲華(あやめはなさく)」から「半夏生(はんげしょうず)」の時期です。
ところでいずれも非常に美しく、どちらを選んでいいのか判断に迷うことを意味する「いずれ菖蒲か杜若」という諺があります。
源頼政が「ぬえ」という妖怪を退治した褒美として「菖蒲前」という美女を賜る時に、同じ装いの12人の美しい女性の中から選ぶように命じられ、どれが菖蒲前かわからなくて詠んだ歌といわれています。
源頼政の本業は源氏の武士ですが、貴族的思考もできた人で歌人としても活躍したといわれたそうです。
文武両道に長けていていたわけですね。
ちなみに、夜ごとに自分の屋敷に出没する妖怪を退治してもらったわけですから、その主も素直に自分に仕えていた女官菖蒲前を褒美として差し出せばいいのに、いざとなったら惜しくなったのでしょうか?
同じ体型の美女を12人も揃え、同じ衣装を着せて、12人並ばせて、このなかに菖蒲前がいるので選んで連れて帰りなさい!と申し付けたとか・・・。
いずれも甲乙つけがたい美しい女性ばかりですから、選ぶ方は大いに迷います。
そこで思わず詠んだ歌が「いずれ菖蒲か杜若」といわれていますが、菖蒲(あやめ)も杜若(かきつばた)も大変美しいのですが専門的な知識がないと見分けがつきません。
加えて菖蒲(あやめ)は菖蒲(しょうぶ)とも読みます。
端午の節句でおなじみですが、花が咲かないヤマイモ科の植物です。
我が家の庭には、そろそろ見ごろが過ぎようとしていますが「花菖蒲」が咲いています。
ところで旧暦の7月は「文月」といわれ、短冊に色々な願い事を書いて笹の葉に飾り付ける「七夕」にちなんだといわれ、和風月名の中では大変ロマンチックな解釈だと思いますが、この習わしのもとは、お盆にご先祖をお迎えするための神事です。
もちろん5色の短冊に願い事を書いて見守ることは今風でよいと思いますが、当時の暦はほとんど農事に関連していることから考えると、文月の語源は稲穂が膨らむころを意味する「穂含月(ほふみづき)」が訛ったという説が有力です。
今の7月は田植えが終わったばかりでピンときませんが、旧暦7月といえば現在の8月中旬から9月中旬ですから頷けます。
また7月になれば一斉に「山開き・海開き」が行われます。
季節的にもマッチしていますが、実は昔は、山は信仰の対象です。
だから冬に山に入り、山を拝むことは禁止されており、夏になって解禁日を迎え、それが今の山開きの起源だといわれています。
そういえば、今でも山開きの時には神事が執り行われますね。
一方海開きですが、これも海の神様に泳ぐ人の安全を祈願する行事ですね。
つまり山開きも、海開きもレジャー一辺倒ではなく、神様やご先祖様に対し、畏敬の念と安全を祈願する、真摯な気持ちを込めた大切な神事と言えるのではないでしょうか。
だからこそ自然やご先祖に思いをはせるとともに、備えを十分施し、決められたルールを守り、自然にも人にも素敵なマナーを発揮したいものです。
梅の実が熟すときに降る長雨だから「梅雨」という名前が付けられましたが、もとは「黴雨(ばいう)」だそうです。
楽しくて、活動的なイベントが目白押しになる季節ですが、食中毒などに十分注意して元気でお過ごしください。大雨対策もお忘れなく。