マナーうんちく話464≪「おいとま」と「お見送り」のマナー≫
暦の上では「小満」の頃ですが、「麦秋」という初夏の季語があります。
今ではあまり見かけなくなりましたが、それでもこの時期になると麦が成熟期を迎え、強烈な太陽の光を受け黄金色の穂が美しく輝きます。
昔の人はこの光景を見て安堵して少し満足したのでしょうか?
二十四節気の一つ「小満」となづけられたようです。
なんだかんだと言いながらも、人類は自然から計り知れないくらいの恩恵を受けているわけですね。
ところで日本には昔から「恩返し」というとても美しい言葉が存在します。
恩とは「めぐみ」とか「いつくしみ」です。
そして、自分にとってありがたいことや良いことをしてくれた人に対して、それにふさわしい行為をしてお返しすること、つまり受けた恩に報いることを「恩返し」といいます。
人は正直なもので、相手からいろいろと恩を受けるとその恩を返したくなるのでしょう。
鶴や狐などの動物もそうかもしれませんね。
「鶴の恩返し」や「狐の恩返し」という昔話があります。
一方、受けた恩を忘れることを「恩知らず」、また恩を押し付けることを「恩着せがましい」と言いますがこれは感心しません。
人は一人で生きていくことはできません。
常に助けたり、助けられたり、支えたり、支えられたりしながら生きていくものです。
だから相手から恩を受けたら、素直に「ありがとう」と笑顔でこたえることが大切です。
日本は昔から相手に迷惑をかけることを大変気にする国民だと思います。
「箸使い」もそうです。
同席している人に不快感を与えないための「嫌い箸」は実に80近くあります。
だから今になって、困ったことがあっても「助けて下さい」と手を上げられない人が多いのだと思います。
また恩を受けたら「恩を返す」と思うことが大切です。
しかし恩を返せる時が来ても、恩を受けた相手がいないこともあります。
「恩返ししたいときに親はいない」という諺がありますね。
しかし恩は必ずしも受けた相手にだけ返す必要はありません。
何時もいろいろと目には見えないものにも恩を受けています。
だから受けた恩を他の人に返す手もあるということです。
つまり「恩送り」で、昔から日本人に定着している良識の一つです。
恩を受けたら別の人にお返しする。
そしてその恩を受けた人が、また別の人に恩を授ける。
こうして恩が世の中を循環し、社会全体に正の連鎖が巻き起こるわけです。
似たような言葉に「情けは人のためにならず」があります。
人になさけを掛ければ、それが巡り巡って自分に返ってくるという意味です。
さらに仏教用語には「ご利益」という言葉があります。
仏教の教えを守り、人のためになることを行えば、自分にも良いことが巡ってくるという意味です。
ただ「恩返し」「恩送り」は気持ちを抱くことが大切ですが、行動を伴うことがより大事で、自分が何かしら世話になった、助かったと感じたら、誰か困っている人に進んで助け舟を出してあげればいいと思います。
私もこうしてコラムを書いたり、相談を受けたり、地域創生講座を開催していますが、全て恩返しのつもりで、安心して助け合える地域づくりを目指しています。