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コラム
マナーうんちく話1831《「お膳立て」と美しいご飯の食べ方》
2019年5月11日
和食のマナーは大きなものは別として、器を手で持って食べることに大きな特徴があります。
昔は今のようにダイニングルームではなく、箱膳に並べられた料理を正座して食したので、手で持って食べたほうが合理的だったという物理的な理由もありますが、「いただきます」の挨拶に代表されるように食べ物への敬意も込められている気がします。
今でも、ご飯を頂くときにはご飯茶碗を持ち上げますが、実はこのしぐさも米に敬意を払う意味があります。
加えて汁椀とご飯茶碗を頂くときには必ずご飯茶碗が左になります。
米に敬意を払って左上位になっているからです。
だから茶碗でご飯を頂くときにも美しく頂いてほしいわけです。
茶碗を4本の指をそろえて底を持ち、親指を縁に添えて下さい。
またご飯はすくうのではなく、箸でくるむ感覚でいただくことです。
またマナーに精通した人はご飯を頂くときに、茶碗を持ったらすぐに口に運ぶのではなく、一呼吸置きます。
いったん胸の前で構えるといいでしょう。
品格とはこのようなところで現れます。
ちなみに和食には「おわん」を使用しますが、同じ和食のおわんでも、「汁用のおわん」は木でつくられるので「椀」になり、ご飯の時には「碗」になります。
汁のお椀は木でつくられるのは、持った感触が柔らかくて、軽くて、暑い汁の熱を通しにくく、汁を吸う時に直接口にするからです。
もともと昔のお椀は全て木で作られていたようですが、「石へん」のお碗は中国から陶磁器が伝わり、それで作られたのが原因です。
これから米作りの時期になります。
生産者の方は日本の稲作は世界に誇れる素晴らしい文化だということを自覚し、胸を張っていただきたいと思います。
またほとんどの日本人が主食として白いご飯を頂きます。
一粒の米に、どのような歴史や営みがあるかについて、思いをはせ、もったいない文化を自覚し、姿勢を正し美しく真摯な気持ちで食してください。
ところで「お膳立て」という言葉をご存知でしょうか。
膳とは料理を載せる台です。
つまりお膳立てとは、料理や食器を膳に乗せて人に出せるようにすることですが、現在では「ある事柄に備えて準備を整える」という意味で使われます。
約半世紀前の日本の台所はかまど、流し台、食器棚などが台所の主役であり、それなりの存在感があったような気がします。
今の日本の台所は食器、調理器具、電化製品、調味料などであふれ、ほとんどの家の台所で和食、洋食、中華料理に対応できるでしょう。
もちろん素晴らしいことでしょうが、反面、和食の伝統が薄れている現状には大きな危機感を感じます。
主菜、副菜、汁物のセットをお膳に乗せる食卓はすっかり減少し、利便性ばかりに重きが置かれるようになることは寂しい限りですね。
物は豊かになったけど、賢くて、美しい食卓はむしろ減少したということでしょう。孤食、個食、固食などの「コケッココ症候群」がそれを物語っています。
「生きることは食べること」ですから、食べ方がおかしくなれば生き方もおかしくなります。令和になり漠然とした期待を抱いている人も多いと思いますが先ずはこのような点に目を向けたいものですね。
欧米では銀の食器を代々家庭で使用するように、日本では和の食器や漆器碗も大切に扱っていただき、食文化を次世代に伝承できればいいですね。
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