マナーうんちく話34≪乾杯のマナー≫
1月はいぬる、2月は逃げるといわれますが、この時期になるとすっかり日差しも長くなり、春の足音が大きくなってきます。
そして草木が芽吹き、遠くの山々に霞がかかり、春らしいのどかな光景が見られるようになります。
科学的には「霧」も「霞」も同じだそうですが、春は霞という言葉がお似合いですね。
ところで四季が豊かな日本の暦には一年間の節目が沢山あります。
一年を72に分けた「七十二侯」、24に分けた「二十四節気」が一般的ですが、大きく分類した「五節句」があります。
五節句は公的行事として江戸幕府が定めましたが、3月3日はその一つの「上巳の節句」です。
この時期は旧暦では桃の花が咲く頃ですから「桃の節句」ともいわれます。
ちなみに上巳とは3月最初の巳の日で、この日は昔から邪気に見舞われると考えられていました。
邪気とは災害や病気や飢餓ですが、平安貴族は自分たちに降りかかる邪気を紙で作った人形で体を撫でて、人形に穢れを乗りうつらせて川に流す「流し雛」の行事を行っていました。
それがやがて人形を飾って、娘の健やかな成長や幸せを願う行事となったわけで、物が豊かになった今では非常に豪華な人形が登場してきたというわけです。
かつて日本には「不浄」つまり「穢れ」を忌み嫌い、「清浄」つまり「ハレ」を尊ぶという習慣があり、今でも川や海で禊(みそぎ)をすることがあります。
話は少し飛躍するかもしれませんが、和食を頂くときに「おしぼり」が用意されます。これは本来の意味は手を清めるためです。
食べ物は命を繋ぐとても神聖なものですから、それを頂くときには手を清めて頂くということです。
和食ならではの精神文化で、西洋料理のナプキンとは意味がことなります。
ところで「雛人形」を飾るということは、娘が身も心も美しく育って欲しいという願いを込めるということです。
従ってそのことを子どもに、そのことをきちんと教えて頂きたいものです。
豪華さを競うことより大切だと思うのですが・・・。
また強い願いを込めるので、それなりの「しきたり」や「作法」めいたものも尊重していただきたいものです。
次回に続きます。