まなーうんちく話798《月々に 月見る月は 多けれど・・・。》
暖冬の予報でしたが寒い日が続いています。
ちまたでは歳末商戦が華やかに繰り広げられていますが、この時期は何といってもクリスマス商戦でしょう。
約12650万人の国民の内、圧倒的多数が神道と仏教を信仰する国において、キリスト教国に負けないくらい、早くから、盛大にクリスマス商戦を展開しますが、今や完全に年の瀬の風物詩です。
そしてそのクリスマスシーンに不可欠なのが、サイレントナイトで始まる「きよしこの夜」の曲ではないでしょうか。
世界的に有名な讃美歌の一つで、日本でも小学校の音楽の教科書に採用されるなど、親しみ深く、大変穏やかなメロディーはスムーズに老若男女の胸に届きます。
一方クリスマスソングと共に年末の風物詩として、すっかり定着しているのがベートーベェンの「第九」ではないでしょうか。
第九といえば、第四楽章の「歓喜の歌」がシンボルになっています。
そしてこれもすっかりおなじみになり、クラシックに疎い人でも多少のなじみはあると思います。
年末に第九を歌う考えがドイツで芽吹き、第一次世界大戦後の平和を願う気持ちとマッチしてはやったそうです。
日本で初めて第九が演奏されたのが今から100年前だといわれています。
その後関東大地震を経験するわけですが、復興に向けて疲れ果てた心と身体に大きな希望と勇気を与えたことでしょう。
ちなみにベートーベェンの第九は1824年に音楽の都ウイーンで発表され、以来世界中の多くの人に親しまれているクラシック最大級のヒット曲です。
今でも年の瀬になると、商店街やデパートなどでよく耳にするのも、多くの人々のすさんだ心に、温かい灯をともしてくれるからでしょう。
今年は大きな災害に見舞われましたが、クリスマスソングとは趣が異なり、「苦悩を払拭して歓喜に至れ」と、各地で演奏される第九に勇気と希望を分けて欲しいものです。
ところで神道や仏教国でこれだけ親しまれるのも、日本が平和で、豊かで、そして外国の文化もおおらかな気持ちで受け入れようとする国民性だと思います。
これはこれで素晴らしいことですが、反面自国の文化や礼儀作法が薄れていくのは大変悲しい現状です。
この時期には「年末年始行事のしきたりとマナー講座」「和食のマナー講座」を各地で開催しますが、日本の正月や和食に込められた豊かな精神文化は、世界が絶賛しているにもかかわらず、日本では影を潜めています。
物質的豊かさ、便利さ、快適ばかりを追求し、日本人として本当に大切なものがどんどん失せていると感じます。
日本が世界に誇る「思いやりの心」しかりです。
ビジネスシーンでは「おもいやり」は大きなビジネスチャンスになり、掛け声は高いようですが、その本質を理解している人は少ないのが現状です。
最後に「年の瀬」の「瀬」は川の瀬、流れが速く急な所という意味です。
江戸時代は買い物の多くは今でいう「ローン」、つまり「ツケ」で、それを年末に清算して正月を迎えるわけですが、支払ってしまったら今度は生活が頻拍します。困ったものです。
年の瀬とは、その様な江戸時代の庶民の生活感から出た言葉だそうです。
豊かになってクリスマスソングや第九を聞けることに感謝するとともに、正月の意義や意味について再認識することもお勧めです。