マナーうんちく話535≪五風十雨≫
今年は真冬になるのが早かった気がしますが、如何でしょうか。
ところで最近、都会においても、猿や猪が出現して、警察官の捕り物騒ぎが放映されています。
このところ猪、鹿、猿などによる農作物の被害は拡大する一方ですが、それに加えて所によっては「熊」の出現が頻繁になっています。
そして暦の上では、寒い地方で熊がそろそろ冬眠する時期です。
冬の山は木の葉が落ちて、まるで山全体が静かに眠っているように感じるので「山眠る頃」と表現されますが、狂暴な熊もこの時期には眠りにつくのですね。
しかし人間の世界では、正月の準備で忙しくなる時です。
12月の風物詩である年末の大掃除が各地で行われていますが、もともとこの時期の大掃除は正月を迎えるために行われます。
以前にも触れましたが、12月の異称は「除月」といいます。
旧年を払い、除いて新しい年を迎えるという意味だそうですが、この「除」は実は神様が天に上り下りする梯子を意味するという説があります。
ちなみに正月は、神道で「歳神様」と呼ばれる田の神様や先祖の集合霊を、各自の家に迎えて、もてなして、見送る一連の行事です。
その神様を迎えるためには当然家をきれいにしなければいけません。
むしろ、きれいにするというより、清めなければならないというわけです。
従って年末大掃除は、歳神様を迎えるために家を清める行事ということです。
昔はこういった行事は武士も町人も一斉に起こったようで、年末の大掃除は「正月事始め」と言って12月13日に行われました。
なぜ12月13日かといえば、12月13日は、婚礼以外はすべて吉とされた「鬼宿日」だからです。
正月事始めは具体的にどんなことをするのかといえば、まず一年間に天井や壁などについた汚れを落として清めるために大掃除をします。
次に歳神様が里帰りするにあたり、その依り代になる「門松」用の松の木を切りに山に出かけます。
これが「松迎」という行事です。
ちなみに、これらの行事を取り仕切る人のことを「年男」といい、家長がその任につきます。
現在の大掃除は一般家庭ではお母さんが総監督を務める家が多いようですが、この点が江戸時代とは大きく異なりました。
日本は四季に恵まれているせいか、年中行事が世界的に大変多い国ですが、正月は中でも一番大切な行事です。
なにしろ歳神様は一年の家内安全、子孫繁栄、五穀豊穣をもたらしてくれるわけですから、迎えてもてなす方も力が入ります。
だから12月13日の正月事始めから、1月15日の「とんど焼き」の日までは、日本中が正月気分になったようになります。
神道は米の神様ともいわれますが、米を主食にしている日本人である以上、このような行事には関心を持ちたいものですね。
国際化とは不必要に西洋かぶれするのではなく、まず自国の文化や礼儀作法に精通し、次世代に伝えるとともに、国際社会に発信することではないでしょうか・・・。
最近は飽食の時代になったせいでしょうか、それとも健康への関心が高まったからでしょうか、米をあまり食べなくなってきているように思います。
炭水化物を余分に足らない人も増えているのでしょう。
でも長い歴史の中で日本人は米を主食にしてきた国民です。
米とともに歩んできた歴史を持つ国から、米を遠ざけてしまって、本当に幸せになれるのでしょうか・・・。
少なくとも私は、生きている以上、米と仲良くしたいと思っています。