マナーうんちく話1507《感性が磨かれる秋立ちぬ頃》

平松幹夫

平松幹夫

テーマ:歳時記のマナー

中山間地域に住んでいると、厳しい暑さが続く中にも、この時期になるとトンボが飛び交い、朝晩の風に心地よい涼しさを感じるようになります。
台風一過のせいもあり、にわかに秋めいてきた感があります。

8月7日は二十四節気の一つ「立秋」でしたが、暦の上では秋がスタートしたということで「新涼の候」などの時候の挨拶になります。

そしてこれ以後の厳しい暑さは「残暑」と表現され、秋分の日まで使用されます。
現実には最も厳しい暑さの頃で、各地でこの夏最高気温が発表されています。
無理をせず元気に乗り越えてくださいね。

ところでこの時期にふさわしい歌がありますね。
藤原敏行の「空き立つ日によめる」と題した歌で、日本人には非常になじみの深い歌です。

《秋きぬと 目にはさやかに見えねども 風の音にぞ おどろかれぬる》

まさに立秋の日の歌ですが、今では風の音で秋を感じる繊細な感性はほとんど残っていないのではないでしょうか。

それどころか、ラジオ体操の音や盆踊りの音が騒音になる時代です。
物が豊かで便利にはなったけど、人と人とのきずなは失われ、無縁社会という言葉が生まれました。

そういえばつい数十年前までは、「夕涼み」というものがあり夏の風物詩でした。
夕方になると涼風を求め家の外に出て、近所の人と会話を交わし、ゆったりしたひと時を過ごすわけです。

このゆったりとした時間こそ繊細な感性をはぐくんでくれるのではないでしょうか。

秋を告げるセミとして「ヒグラシ」がいます。
カナカナとなくので「カナカナセミ」ともいわれますが、晩夏から初秋に発生します。

もちろん厳密ではなく早ければ7月初めころに声が聞こえてくることもありますが、あの独特の鳴き声は「いよいよ夏が来るよ」というより、「間もなく秋になりますよ」と聞こえてくるようですね。

兼好法師は《花は盛りに、月は隈(くま)なきをのみ見るものかは。》と詠んでいます。

桜は満開の時だけ見るものではない。
また月は晴天の時だけ眺めるものではない。
自然の魅力はあらゆる状態の中で見ることができる。
ただし、それにはそれを見る人間の感性が大切であるという意味でしょうか・・・。

立秋のころに吹く風やなくセミの声に、何を感じることができるか。

ビジネスマナーでは「敬語」が良く取り上げられます。
本当に日本の敬語を理解しようと思えば感受性が大切だと思います。

全国津々浦々盆踊りの曲が聞こえてくる頃ですが、最近の盆踊りの曲はすっかり変わりましたね。
テンポの速い曲に変わってしまいましたが、これも時代の流れでしょうか?

しかし盆踊りは里帰りされた仏様をおもてなしするためのものです。
いかに時代が変わろうとも、哀愁の漂う曲がお似合いだと思うのですが・・・。
敬語が乱れていく理由がわかるような気がします。

ちなみに立秋を過ぎたら暑中見舞いから「残暑見舞い」になりますが、暑中見舞いの日付は「盛夏」ですが、残暑見舞いは「晩夏」になりますのでご注意ください。
加えて相手を思いやる言葉もお忘れなく・・・。

暑い中にも秋の気配が漂う頃です。
季節の移ろいを目や耳や舌でしっかり感じてくださいね。

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平松幹夫
専門家

平松幹夫(マナー講師)

人づくり・まちづくり・未来づくりプロジェクト ハッピーライフ創造塾

「マルチマナー講師」と「生きがいづくりのプロ」という二本柱の講演で大活躍。「心の豊かさ」を理念に、実践に即応した講演・講座・コラムを通じ、感動・感激・喜びを提供。豊かでハッピーな人生に好転させます。

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