マナーうんちく話494≪和顔愛語≫
電車にギリギリセーフで乗ったら「ヤレヤレ」と思いますが、御礼を言うことはあり得ないでしょう。
しかしエレベーターにギリギリセーフで乗れた時は如何でしょうか?
「ありがとうございました」のお礼が言える人はマナー美人だと思います。
エレベーターにギリギリ間に合ったということは、誰かがボタンを押して待っていてくれたわけですから、当然それに対しては「ありがとう」の一言が欲しいものです。
日頃私たちがよく使う「ありがとう」の感謝の言葉は、日本でも最も好まれている言葉です。
加えて一番美しい言葉と言われていますが、漢字で「有り難う」と書きます。
「有り難い」。
つまり滅多にあることではない、だからこそとても嬉しいという感謝の気持ちが込められているわけです。
ビジネスシーンで買い物をして頂いたお客様に「有り難うございました」とお礼を述べるのは誰しも同じです。
ではこの意味は如何でしょうか?
「沢山の店がひしめき合う中で、ようこそ私どもの店にお越しいただき、心からお礼申し上げる」という意味に他なりません。
ところで江戸しぐさは「商人しぐさ」と言われますが、当時の商人は大変粋を好んだと言われています。
だから、嬉しいことや感謝すべき事に対しては、素直に「ありがとう」の言葉を発したそうです。
「ありがとう」と言われて嬉しくない人はまずいないと思います。
しかし、この耳にとても心地良い美しい言葉が、次第に聞こえなくなった気がしてなりません。
特に子育て中の親や教育に携わる人、そして指導的立場にある人は率先して手本を見せて欲しいものです。
子どもは親や教師にとても影響されます。
だから日本では「子は親の背中を見て育つ」ともいわれます。
ヨーロッパでは「雛鳥は親鳥の通りにさえずる」といいます。
親がなにかあれば「ありがとう」の言葉を連発すれば子供もそれに倣います。
上司が笑顔で「ありがとう」と言えば部下は喜びます。
エレベーターのボタンを押して待っていてくれた人に、「ありがとうございます」と御礼を言えば、言われた人は「どういたしまして」と明るく答えてくれるでしょう。
これらは些細なことかもしれませんが、その小さな人と人とのつながりが、やがて社会の輪になっていくのではないでしょうか。
如何に些細なことでも、相手が何かをしてくれたら自然に「有り難う」が言えるようになったらいいですね。
品格とはそういうことです。