マナーうんちく話535≪五風十雨≫
突然ですが質問です。
平安時代から日本人に愛されて来た、初夏から盛夏が旬の「和風ハーブ」をご存知でしょうか?
ちなみにハーブ(herb)の語源は、草や野草を意味するラテン語のヘルバ(herba)ですが、今では伝統的に薬草や香料や保存料として用いられる植物をさし、穀物や野菜や果物とは区別して用いられているようです。
またハーブは「香草」と呼ばれる場合も多いようですが、それは中世ヨーロッパでは香りが魔除けに役立つと信じられていたからでしょうか。
日本でも独特の臭いは邪気を払う効果があると信じられていましたね。
つまりハーブとは、その定義が非常に幅広く、簡単に纏めるのは難しそうですが、「生活に役立つ植物の総称」だと認識頂ければ良いと思います。
冒頭の答えは「紫蘇(しそ)」です。
冷やしそうめんや冷ややっこが美味しい季節になりますが、これから何かと重宝されます。殺菌作用や血行促進効果があるとされています。
毎年我が家の畑にもお目見えしますが、改めて種を蒔くまでもなく、昨年のこぼれ種のせいで、自然に時期が来れば生えてくれます。
トマトやゴーヤやカボチャもそうですが、特に紫蘇は繁殖力が強いような気がします。
そして最近ではあまり見かけなくなりましたが、麦の実りの季節です。
実りの季節は一般的には秋ですが、麦は冬に種を蒔いて丁度今頃が収穫期になりますから、麦にとっては今が実りの季節になるわけです。
そしてなんといっても、初夏の夜を美しく彩る風物詩として古くから慕われているのが「蛍」ではないでしょうか。
蛍と日本人の関わりは非常に古く、最初に蛍が文献に登場するのは日本書紀だといわれています。
大きい蛍が「源氏ボタル」、小さい蛍は「平家ボタル」といわれますが、平安末期の源平合戦に由来するそうです。
「蛍20日蝉3日」という言葉があります。
昔の人は蝉と蛍を儚い物の象徴としていたようですが、蛍は水が綺麗な所に生息するので、今では豊かな自然の象徴です。
私が住んでいる地域でも、毎年短い命を精一杯輝かせて楽しませてくれています。
「ホタル狩り」という言葉もあります。
華やかな春の「桜狩り」と異なり、梅雨時の湿った夜に淡い光を点滅させる蛍を眺めるのは、幾つ歳を重ねても、しんみりとした気分になるから不思議ですね。次世代にもぜひ残したい風情です。
またスーパーなどで「鮎」を見かけるようになりましたが、紫蘇やホタルと同じくらい日本人と鮎との関係も深いものがありますね。
そして「アユ」は色々な漢字が当たられています。
「鮎」は一定の縄張りを独占するから。
「香魚」は独特の臭いがするから。
さらに一年で一生を終えるから「年魚」の名前が付いています。
加えてアユは四季折々の季語を持つのも特徴です。
春は「若鮎」、夏は「鮎」、秋は「落ち鮎」、そして冬は「氷魚」です。
またアユは見るからに姿かたちが美しいので、神前に供える魚として重宝され、アユの語源は「饗(あえ)」に由来するという説もあるようです。
塩焼きが好まれますが、神様にお供えするような魚ですから、是非美しい食べ方を実践して下さい。
「マナーうんちく話《鮎の塩焼きの正しい?食べ方》」を参考にして下さいね。