まなーうんちく話798《月々に 月見る月は 多けれど・・・。》
今日から5月。
桜が散った後、藤の花や牡丹の花が晩春の趣を添えていますね。
しかし桜は「花は桜、人は武士」と言われた様に日本を代表する花ですから、先人は散った後に、木に残っているオメシベやメシベまで見届けて夏を迎えたようで、「葉桜」という名前もあります。
一方牡丹は、日本でも大変高貴な花として愛されてきましたが、丁度今が見頃で、春のフィナーレを華やかにかに飾ってくれています。
また、《立てば芍薬 座れば牡丹 歩く姿はユリの花》と、美しい女性に例えて江戸時代から謳われています。
ところで、季節の変わり目はいつも名残惜しさがありますが、冬から春へと変わる季節と異なり、春から夏へ移行する季節は格別だったようです。
そのせいか春を惜しむ歌が沢山あります。
《行く春や 鳥啼き魚の 目は泪(なみだ)》と松尾芭蕉は詠んでいます。
うららかで百花繚乱の素晴らしい春が過ぎ去ろうとしているので、鳥まで鳴いているような気がする。また、魚も目に涙を浮かべているように思えるのでしょうか・・・。
春を迎える喜びは人も鳥も魚も動物も非常に嬉しいだけに、その別れもわびしいものがあります。
そして5月は新茶の季節です。
今年の5月1日は立春から数えて88日目の夜、つまり「八十八夜」です。
この時期の新茶は、二番茶や三番茶に比べて、渋み成分も少なく大変美味で、無病息災や長寿の縁起物として重宝されます。
桜や牡丹とはまた一味違う、香り優しい、ほのかな甘みは、心も体も満たしてくれそうです。
ちなみに日本は稲作を中心として農耕文化を築いておりますので、八と十と八を重ねて出来上がる「米」と「八十八夜」が重なるので、農業にとって大変縁起がいい日とされています。
加えて八十八は末広がりです。
昔から大変縁起のいい数字とされています。
だから種もみを蒔き、茶摘みをするわけです。
さらに夏野菜の苗を植える頃ですが、「八十八夜の忘れ霜」には注意が必要です。
自然が油断大敵と教えてくれるのでしょう。