マナーうんちく話453≪冬来りなば春遠からじ≫
「毎年のことよ 彼岸の入りに 寒いのは」(正岡子規)
三寒四温、春暖遅々とはよくいったもので、今日3月17日は彼岸の入りだと言うのに、畑には大霜が降りていましたね。
ところで、秋を感じさせる香りに「キンモクセイ」がありますが、春先のちょうどこの時期にも、春の訪れを教えてくれる甘い香りが漂ってきます。
そう、「沈丁花(じんちょうげ)」の香りです。
我が家の食卓にも活けていますが、清楚な感じの白い花です。
地味な感じで、あまり目立ちませんが、たとえ花には気が付かなくても、キチンと香りで知らせてくれます。
3月20日は「春分の日」ですが、この日を中心に、前後3日ずつ、合計7日間が「春の彼岸」です。
そして、その初日が「彼岸の入り」と言われますが、今年は3月17日です。
ちなみに、春分の日は彼岸の真ん中の日になりますから「彼岸の中日」と言います。さらに、彼岸の最後の日は「彼岸明け」と言われます。
雑節の彼岸は仏教の国日本では、大変なじみの深い年中行事ですが、何を意味するかご存知でしょうか?
お墓参りをする日ですから、おおよその見当はつくと思いますが・・・。
彼岸は、漢字の意味からすれば、「川の向こう側」です。
つまり、悟りの世界であり、理想の世界でもあるわけですが、仏教では西方にあるとされています。
春分の日は、太陽が真東から昇り、真西に沈みます。
だから、浄土に一番近くなる日とされるわけです。
お彼岸にお墓参りするのはこのためですね。
「彼岸のいつ頃に墓参りをしたらいいの」とよく聞かれますが、彼岸の期間中であればいつお参りしてもいいでしょう。
墓地の雑草を抜いて、墓石を洗い、線香と花をお供えします。
墓石に水を柄杓でかけ、故人に近い順に拝礼しますが、水をかけるのは、仏の喉の渇きを潤すためとも言われています。
そして彼岸団子をお供えするわけですが、春は牡丹の花になぞらえて「ぼた餅」と言い、秋は萩の花が咲くので「お萩」と言われます。
同じ彼岸団子でも、季節の花にちなんで名前が付けられているわけですね。
ちなみに「牡丹」は百花の王様と言われとても高貴な花です。
一方、萩は秋の七草にも登場しますが、万葉集でも一番多く詠まれている花で、大きなボタンに比べれば、大変小さな花です。
ティラミス、ババロア、モンブラン、エクレア、シュークリーム、ワッフル等西洋のスイーツの語源も非常にユニークですが、四季が明確に分かれ、自然が豊かな国のスイーツも大変興味深いですね。
そして「ぼた餅」も「お萩」も先祖崇拝と感謝の心が凝縮されたものです。