マナーうんちく話87≪ハッピーな食卓とは?≫
ホテル業界に入り、最初に配属された部署が饗応部で、フランス料理のレストランで接客の仕事に就くことになりました。
ビップと呼ばれるお客様も多く、お陰で接客の仕事がすっかり板についた気がします。加えて、フランス料理との長い付き合いが始まり、結局30年以上フランス料理のテーブルマナーに携わることになりました。
マナーに関する多くの書物を読みましたが、中でも「ティファニーのテーブルマナー教本」はとてもわかりやすく、かつ実行しやすい内容で、大いに親しみが持てます。一部を紹介しておきますので参考にして下さい。
●魚用のフォーク・ナイフと肉用のフォーク・ナイフの違いを理解すること。
●ナプキンは膝の上に置き、首に縛り付けたり、バンドに挟まないこと。
●スープスプンは右手に親指を上にして持ち、スープを吸う時にはスプンを向う側に少し傾け、手前から向こうに動かしてスープを満たします。
●カップで出たスープは小さいスプンを使用してもいいし、カップを手に持って飲んでもOKです。
●魚が柔らかくて骨が無ければ、魚用のフォークだけで食べても構いません。
●肉料理を食べる時は、フォークで肉を刺しナイフで切りますが、一度にひと切れだけ切って食べます。
●左手にフォークを持ったままで水を飲んではいけません。
●パンは指先でちぎり、バターナイフはバターを塗る時だけ使用します。
●アスパラガスは茎があまり長くなければ手で食べます。
●フィンガーボールを使用する時には指先だけ水に付けます。
●食卓の上に肘を付けないこと。
●食べ物を余り沢山口に入れないこと。
●食べ物を口に少し入れたまま、うまく話が出来ように練習すること。
●姿勢を正しく腰をかけます。
●目上の人より先に食堂から出ないでください。
テーブルマナーを教えるこの本は、ティファニー社が編纂したもので、とても魅力的です。勿論これ意外に色々な作法が存在しますが、基本的なことは是非理解して下さい。
私が初めてこの本を読んで感じたことは、今までのマナー教本と異なり、大変シンプルで、しかもユーモアセンスあふれる絵でした。
マナーの解説は、とても簡単ですが、時には大胆な表現もあります。
そして何より勉強させられたのが、かたくなにマナーを守るというのではなく、「食事は楽しむもの」であるということです。
つまり、フォーク・ナイフやグラスや料理の知識や作法があっても、社交性が伴わなければいけないということです。
だから良好な人間関係づくり等、様々なマナーが要求されます。言い方を変えれば、「食事を楽しむ」ために、マナーの存在意義があるということです。
「鶏が先か卵が先か」になりますが、食事を楽しむ大前提は、これまで何度もお話ししましたが「美しい食べ方」であり、それは「他者への配慮」です。
1日3回、1年間で1000回以上食事をするわけですから、それが楽しいと自然に人生そのものが楽しくなります。
より良い生き方とは、つまりそういうことではないでしょうか?