マナーうんちく話516≪袖触れ合うも多生の縁≫
冬将軍がやってくると身も心も寒くなります。
ナポレオンも退却を余儀なくされたほどの厳しい寒さにつけられた呼称ですから、無理もありません。
そんな時、手紙やメールで相手に対する思いやりの心を発揮する時に、よくつかわれる言葉が「ご自愛ください」です。
相手のことを気遣う美しい言葉だけに、その意味をキチンと理解して、正しく使用したいものです。
そもそも「自愛」とは、自分自身の身体を大切にすることです。
つまり、自分の健康状態に気おつけるということです。
ちなみに、「自」は身体で、「愛」は大切の意味です。
従って「くれぐれもお体をご自愛ください」と言う表現は重複するので、「くれぐれもご自愛ください」になります。
この点に注意して頂けば、男性にも女性にも使用できます。
加えて、この言葉は「相手を気遣う」意味ですから、上司や年長者にも用いることが出来ます。
「ご自愛ください」と言う表現を使用する者は、相手に対して「無理をしないで、いつまでも健康でいて下さい」とお願いしているわけですから、「私は貴方の事をこんなに思っていますよ」という意味になります。
また、「ご自愛ください」と言う言葉を使用された場合は、「相手から大切に思われている」ということです。
まして、上司や目上の人から「ご自愛ください」と表現されたら、「身に余る言葉」として有り難く受け止めて下さいね。
また、「ご自愛ください」によく似た意味の言葉としては、「お身体に気おつけて下さい」「御身くれぐれもたいせつになさいますように」など、よりストレートな表現の仕方もあります。
これから年末になり何かとあわただしくなります。
寒さも増してきます。
こんな時だからこそ、手紙やメールの末尾に、「寒くなりましたので」「風邪がはやっていますので」「慌ただしくなってまいりますので」、くれぐれも「ご自愛ください」と、一言添えてみられてはいかがでしょうか。
年賀状にもお勧めです。
思いやりが増して、より丁寧な印象になります。
数ある言葉の中で、日本語は非常に難しい言葉です。
しかし同時に非常に美しい言葉でもあります。
相手の事をさりげなく気遣う美しい言葉は、素晴らしいコミュニケーションになり、よりよい人間関係が築けます。
積極的に使用したいものですね。