マナーうんちく話453≪冬来りなば春遠からじ≫
8月は陰暦では「葉の落ちる月」、つまり「葉落ちる月」が転じて「葉月」と言いますが、もう1週間もすれば立秋です。
夏の盛りも過ぎ、暦の上では秋で、暑中見舞いから「残暑見舞い」に変わりますが、現実的には、一年で一番暑い時で、暑さの記録が更新される頃でもあります。
そして夏休み真只中です。
ちなみに日本の夏休みは、商家に丁稚や女中として奉公に出た男の子や女の子が、盆と正月に休みがもらえる「薮入」の名残です。
昔は今と違い大変貧しかったので、男も女もある年齢に差し掛かると働かなくてはいけません。
田舎では就職先がありませんので、都会の商家に出稼ぎに行くわけですね。
都会の商家の主人にとっては、田舎は木や竹が生い茂っているイメージが強いので、「藪」と表現したのでしょう。だから「薮入」になりました。
商家に奉公に出た若者は、日頃は朝から晩まで辛い仕事についているので、暇を与えられ、服を新調してもらい、子づかいや手土産を頂いて実家に帰ることは最大の楽しみです。
「水入らず」と言う美しい言葉があります。
他人を交えずに、内輪だけの集まりのことです。
薮入で故郷に帰った子どもは、わずか数日間ですが、家族水入らずのひと時を過ごすわけです。
学校や企業で夏の間、授業や業務を休にみにしてレジゃを楽しむ休暇が今の夏休みですが、かなり違いますね。
ところで、一日の事を「朔日(さくじつ)」と表現しますが、旧暦8月1日は「八朔(はっさく)」です。
この頃になると早稲(わせ)が実る頃で、農家ではこの穂を、日頃お世話になっている人に贈る習慣がありました。
「田の実の節句」と言います。
やがて、「田の実」が「頼み」になり、そこから、農家に限らず、武家の間でも、日頃お世話になった恩に対して御礼をする日になりました。
今でも旧暦8月1日頃、つまり8月下旬から9月下旬にかけ全国各地で「八朔祭り」が開催されていますね。
この頃から食べ始めることが出来るかんきつ類の「八朔」を思い浮かべる人も多いと思います。
また、習い事をしている人は、「これからお稽古をしばらく休みますのでよろしくお願いいたします」と言って、先生の所に行って挨拶する日です。
稽古を休むと言うことは、色々な事が出来ると言うことです。
楽しい事、やりたいことを一生懸命することにより、厳しい暑さをしばし忘れるのもお勧めです。
夏休みは子どものみならず大人も楽しいわけですが、色々な人が、色々な場面で頑張ってくれたお陰で、今の日本の発展があることを肝に銘じておきたいものですね。
そして、夏休みでないとできない、夫婦や家族水入らずの楽しい一時をお過ごしください。
ちみに「水入らず」とは、「水で洗う必要は無い」と言う意味です。
目上の人から杯を頂いたら、それをありがたく頂戴して、杯を返すわけですが、そのまま返したら失礼です。
だから水で洗って返すわけですが、あえて洗わなくてもいいよ!ということで、親愛を深めることです。
夏休みは、夫婦や家族のきずなを深める絶好の機会です。