マナーうんちく話553≪「和の作法」と「一回一動作」のお勧め≫
【鰻重の美しい食べ方】
先ずは蓋を開けます。水分などが落ちないように丁寧に開けて、蓋は内側を上に向けておいて下さい。蓋は基本的には器の外側に置きます。
ちなみに、本体の下に蓋を重ねる人がいますが、これは蓋に傷がつく恐れがあるので感心しません。
蓋を開けたら、香りを充分楽しんで下さい。
箸をつけるのはどんぶりと同じように、左下から、右下にかけて下半分を頂きます。ご飯と鰻は、交互に食べるか、一緒に食べればいいでしょう。
下半分、つまり全体の半分食べ終えたら、器を180度静かに回転させ、山を崩すように左から食べます。
この時点で吸い物や、奈良漬などの香の物も一緒に召し上がって下さいね。
最後に蓋を元の状態に丁寧に戻します。
指先を揃えて、両手で持つと美しく見えるでしょう。
特に女性の場合、指先の所作はとても目立ちます。
日頃から指先のお手入れをお忘れなく。
【蒲焼きのうんちく】
フランス料理では「鰻の赤ワイン煮」等の料理がありますが、日本で鰻と言えば、すぐに「かば焼き」を思い浮かべます。
その位「蒲焼き」は、鰻本来のおいしさを見出した日本独特の料理で、米のご飯との相性も抜群だと思います。
まだ栄養学や食品学等の知識もない時代に、鰻効果で猛暑を快適に過ごした先人の知恵には脱帽です。
さらに江戸時代にはボケ防止にも効くとされ、お年寄りも好んで鰻の蒲焼を食していたと言われています。
今は超高齢化社会。
10年先には65歳以上の高齢者の5人に一人が認知症になるのでは?と危惧される中、鰻の需要はますます高まりそうですね。
そしてなんといっても、鰻の蒲焼の魅力は「たれ」にあります。
醤油、みりん、砂糖などで煮詰め、ある期間寝かせますが、このプロセスに独特の秘伝が詰まっており、それに伝統の技が加味されるから、より魅力的になるのでしょう。
ステーキのデミグラスソースもしかりですね。
ソースは英語もフランス語もイタリア語も「sauce」と綴られ、語源はいずれもラテン語の「SAL」、つまり塩の意味が込められているソウでス。
フレンチの「デミグラスソース」と和食の「たれ」。
日本は今や世界一「飽食の国」と言われていますが、美味しい物が食べられることは本当に幸せです。深謝すると共に、何時までもこの状態が持続するよう、それなりの努力も大切ですね。
ところで、蒲焼の名前の由来は諸説あります。
○香りが素早く鼻の中に入ってくるので「香ばや」が転じたとする説。
○鰻を焼いた時の色が樺(かば)の皮に似ているからとする説。
○夏から秋にかけて池や沼等の水中に群生する茶色の蒲の花穂に、鰻を筒状に切って焼いた形が似ているとする説。
○蒲鉾(かまぼこ)から転じたとする説。
さらに、鰻重は店により値段の高い順に「松・竹・梅」のメニューに分かれているケースもありますが、内容の差は様々です。
日本らしい格付けでいいですね。