マナーうんちく話1010《「蒲焼き」の歴史と「鰻重」の美しい食べ方》

平松幹夫

平松幹夫

テーマ:和食テーブルマナー

【鰻重の美しい食べ方】

先ずは蓋を開けます。水分などが落ちないように丁寧に開けて、蓋は内側を上に向けておいて下さい。蓋は基本的には器の外側に置きます。

ちなみに、本体の下に蓋を重ねる人がいますが、これは蓋に傷がつく恐れがあるので感心しません。

蓋を開けたら、香りを充分楽しんで下さい。
箸をつけるのはどんぶりと同じように、左下から、右下にかけて下半分を頂きます。ご飯と鰻は、交互に食べるか、一緒に食べればいいでしょう。

下半分、つまり全体の半分食べ終えたら、器を180度静かに回転させ、山を崩すように左から食べます。

この時点で吸い物や、奈良漬などの香の物も一緒に召し上がって下さいね。

最後に蓋を元の状態に丁寧に戻します。
指先を揃えて、両手で持つと美しく見えるでしょう。
特に女性の場合、指先の所作はとても目立ちます。
日頃から指先のお手入れをお忘れなく。

【蒲焼きのうんちく】

フランス料理では「鰻の赤ワイン煮」等の料理がありますが、日本で鰻と言えば、すぐに「かば焼き」を思い浮かべます。

その位「蒲焼き」は、鰻本来のおいしさを見出した日本独特の料理で、米のご飯との相性も抜群だと思います。

まだ栄養学や食品学等の知識もない時代に、鰻効果で猛暑を快適に過ごした先人の知恵には脱帽です。

さらに江戸時代にはボケ防止にも効くとされ、お年寄りも好んで鰻の蒲焼を食していたと言われています。

今は超高齢化社会。
10年先には65歳以上の高齢者の5人に一人が認知症になるのでは?と危惧される中、鰻の需要はますます高まりそうですね。

そしてなんといっても、鰻の蒲焼の魅力は「たれ」にあります。
醤油、みりん、砂糖などで煮詰め、ある期間寝かせますが、このプロセスに独特の秘伝が詰まっており、それに伝統の技が加味されるから、より魅力的になるのでしょう。

ステーキのデミグラスソースもしかりですね。
ソースは英語もフランス語もイタリア語も「sauce」と綴られ、語源はいずれもラテン語の「SAL」、つまり塩の意味が込められているソウでス。

フレンチの「デミグラスソース」と和食の「たれ」。

日本は今や世界一「飽食の国」と言われていますが、美味しい物が食べられることは本当に幸せです。深謝すると共に、何時までもこの状態が持続するよう、それなりの努力も大切ですね。

ところで、蒲焼の名前の由来は諸説あります。

○香りが素早く鼻の中に入ってくるので「香ばや」が転じたとする説。

○鰻を焼いた時の色が樺(かば)の皮に似ているからとする説。

○夏から秋にかけて池や沼等の水中に群生する茶色の蒲の花穂に、鰻を筒状に切って焼いた形が似ているとする説。

○蒲鉾(かまぼこ)から転じたとする説。

さらに、鰻重は店により値段の高い順に「松・竹・梅」のメニューに分かれているケースもありますが、内容の差は様々です。
日本らしい格付けでいいですね。

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平松幹夫
専門家

平松幹夫(マナー講師)

人づくり・まちづくり・未来づくりプロジェクト ハッピーライフ創造塾

「マルチマナー講師」と「生きがいづくりのプロ」という二本柱の講演で大活躍。「心の豊かさ」を理念に、実践に即応した講演・講座・コラムを通じ、感動・感激・喜びを提供。豊かでハッピーな人生に好転させます。

平松幹夫プロは山陽新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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