マナーうんちく話453≪冬来りなば春遠からじ≫
日本は四季が豊かで、一年を通じ様々な食べ物に恵まれていますが、「和菓子」も例外ではありません。
本来、和菓子とは日本の伝統的製法で作られたものを意味しますが、明治以降にヨーロッパから入ってきたチョコレートやケーキやクッキーなどの、洋菓子に対して使われています。
また年中行事とも非常に深い関わりがあり、桜の頃には「桜餅」、子どもの日には「柏餅」、秋の彼岸には「お萩」、春の彼岸には「牡丹餅」など、多くの和菓子が日本人の食生活に彩りを添えています。
だいふく、せんべい、ようかん、あめ、まんじゅう等など地域固有の菓子も沢山存在し、数えればきりがない位ですが、お年寄りから子供まであらゆる年代層に愛されています。
そして、1000年以上に渡る長い歴史を有し、日本人の心が詰まっている、日本独特の世界に誇れる文化の一つでしょう。
6月16日は「和菓子の日」です。
ご存知でしょうか?
今から約1300年前の平安の頃です。
夏に疫病が蔓延しましたが、医学の知識に乏しかった時代ですから有効な対策はありません。
そこで仁明(にんみょう)天皇は、年号を縁起のいい「嘉祥(かじょう)」に改め、6月16日にちなんで16の菓子を神前にお供えして、疫病除去と国民の健康を祈願したわけです。
そしたら、疫病が収まり、人々は健康に過ごせるようになったので、この日に和菓子を食べる習慣が付いたと言われています。
この故事にちなみ江戸幕府は、6月16日を「嘉祥の日」と制定し、主君が家臣にたいしてお菓子を配る行事になったとか・・・。
さらにこの故事を何時までも後世に残そうと言うことで、戦後全国和菓子協会が、6月16日を「和菓子の日」に制定しました。
明治になり、西洋医学が入ってくるまでは、災害や病気から逃れるために神に祈りを捧げることが多かったわけですが、夏の夜空を華やかに彩る花火もしかりです。
色々なモノを神にお供えして祈願するわけですが、当時としては大変貴重品であった、米や小豆や甘味料を使用したお菓子をお供えした気持ちは頷けます。
春分の日や秋分の日にお供えする「牡丹餅」も「お萩」も同じ理屈です。
当時、人々が如何に真心をこめて、最善を尽くして祈願したかが身にしみてわかる気がします。
世界屈指の「飽食の国」「美食の国」になった今ではピンと来ないかもしれませんが、今の繁栄はこのような先人の努力があったお陰です。
1000年以上続いている日本独特の行事である「嘉祥の日」、そして「お菓子の日」を再認識したいものです。
今の日本人で、明治以降に西洋から入ってきた「バレンタインデー」や「ホワイトデー」を知らない人はいません。
しかし、1000年以上の歴史を有する日本特有の行事である「嘉祥の日」や、それにまつわる「お菓子の日」を知らない人は多いと思います。
仏教国でありながら、お釈迦様の誕生日よりキリストの誕生日を国民が一丸となって祝うこと、神前結婚式よりキリスト教スタイルに人気がある事、和菓子の伝統行事よりバレンタインデーの方が賑わうこと等など、考えてみれば不思議な気がしませんか?
「国際化の流れだから」と言ってしまうのは、余りにも「お菓子」な気がしますが如何でしょうか・・・。
次回は、茶菓の「いただき方と持て成し方」のマナーです。