マナーうんちく話504≪あなたなら、どう答える?≫
若葉が萌え、花が咲き、命が躍動するこの時期は一年で最もアクティブな気分になりますね。
「何かいいことありそうな」という期待感からでしょうか?
旅行に行くのも素晴らしい所だから。
服を買うのも似合いそうだから。
人に会うのもためになりそうだから。
そんな気持ちにさせてくれるのが緑のそよ風です。
「長い人生前向きに歩みなさい!」と励ましてくれているようですね。
前回自己紹介のお話しをしましたが、新年度は多くの人達と親交を深める絶好の機会でもあります。
日本人は親交を深めるために酒を酌み交わしてきましたが、これは昔も今も同じです。
家庭、地域、職場の絆が希薄化し、「無縁社会」と言うキーワードが生まれ久しくなりましたが、その傾向は深まるばかりという感があります。
こんな時だからこそ、酒の席を大切にするのもお勧めです。
ところで、酒の席と言えば乾杯がつきものですが、これについては《マナーうんちく話454&455「乾杯と献杯」》を参考にして頂くとして、今回は「返杯」に触れてみます。
■返杯とは?
同じ杯で酒を飲み交わすこと。
■返杯の意義
同じ杯で酒を飲み交わすと言えば不衛生と思われる方もいると思います。
しかし、この返杯の意義は連帯感を強めるために行われる習慣です。
日本人は今でも、何か事があるに付け酒を酌み交わす習慣があります。
共に酒を酌み交わすと言うことは、魂の交流を意味していたわけです。
だから共に酒を飲むということは、同じ瓶や樽に入った酒を飲むか、同じ杯で飲むわけです。
まさに共食文化ですね。
一つの物を互いに分けあって、絆を深めるわけです。
神前結婚式の時には「三三九度」を、「親族盃の儀」を執り行いますが、これにより親族関係が生まれるわけです。
歓迎会等の飲み会で、「献酒」「返杯」が有れば、単に酒を注いでもらうのではなく、魂を交流しようという大きな意味があります。
目上の人から杯を頂くのを「献酒」と言います。
この時には「頂戴します」「頂きます」等と言って両手で受けて下さい。
飲み終えたら、「ありがとうございました」の言葉を添えて、杯を返すのが「返杯(盃)」です。
最近何かと衛生面に敏感すぎる気がしてなりません。
過度な宣伝のせいでしょうか?
勿論衛生面に気をつけることはとても大切ですが、度を過ぎてもどうかと思うわけです。
「献酒」「返杯」を非衛生だからと言って拒否するか、有り難く頂戴して魂を交流するか?
あなたはどちらでしょうか?
江戸時代、二人の武士が互いに何かを誓う時には「二人盃」をしたそうです。
互いの心を一つにすることが目的ですが、このような美意識は現代社会においても受けると思うのですが、如何でしょうか?