マナーうんちく話823《九里より旨い十三里》

平松幹夫

平松幹夫

テーマ:歳時記のマナー

早速ですが、表題の「九里よりうまい十三里」の対象になる食べ物は何だと思いますか?

答えは「サツマイモ」です。
我が家も先日収穫しましたが、幼い頃、秋の遠足でサツマイモ掘りを体験された方も多いと思います。

サツマイモは美味しくて、食物繊維の塊で、栄養価も高く、しかも焼き芋などにして簡単に食すことが出来るから、非常に便利の良い食べ物ですね。

原産地は中南米で、コロンブスがスペインに持ち帰り、それが中国を経由して琉球から九州の薩摩を経て、江戸に伝わったと言われています。

当時は飢饉も珍しくなく、米が出来なくなると、たちまち困窮します。
そこで、土地がやせていても結構収穫が見込めるサツマイモを幕府が奨励するわけですが、やがて焼くだけで美味しく食べられる「焼き芋屋」が登場してきます。

焼き芋は美味しくて手軽な食べ物だったわけですが、一番の魅力は今と異なり、値段がとても安かったところにあるようです。

恐らく焼き芋は、当時のファーストフードの代表格だったわけでしょうが、サツマイモは栗(クリ=九里)より格下になります。

だから、当時の焼き芋の看板は、少し奥ゆかしく「八里半」と表現したそうです。

しかし、何事も負けず嫌いの江戸っ子です。
丁度今頃、つまり秋本番の焼き芋は、甘くて、ホクホクして、栗(九里)より美味しいとしました。

だから「栗(九里)より(四里)旨い十三里」としたわけですが、このネーミングが江戸の人々に大受けして、いつの間にか「サツマイモ=十三里」になったわけです。

夏の暑い時期に鰻が売れなくて困っている時に、「本日土用丑日」(今日は土用の丑の日で鰻を食べる日です!と言う意味)のキャッチコピーを考え出した平賀源内にせよ、「九里よりうまい十三里」のコピーを考えた焼き芋屋の主人にせよ、素晴らしい感性の持ち主だったのでしょうね。

ちなみに、この「本日土用丑の日」というキャッチコピーは、日本で一番古いキャッチコピーとされており、300年以上の歴史があります。

やはりキャッチコピーは、シンプルで解りやすいのが一番受けると言うことでしょうか。

また、このコピーのお陰で、鰻は夏の食べ物だと思っている人も多いようですが、脂がのって一番おいしい時期は晩秋から初冬にかけてです。

それにしても、これらのキャッチコピーが受けたと言うことは、江戸時代の人々の職字率が如何に高かったかということではないでしょうか。

職字率とは、文字を読んだり書いたりして理解する能力のことですが、当時の武士はほぼ100%、庶民でさえ50%を超えており、世界一だったと言われています。

「衣食足りて礼節を知る」と言う言葉がありますが、平和な世が長く続いた江戸時代には多様な文化が花開きます。

外食文化もしかりですが、衣食住に恵まれて来ると、教養を身につけたい欲望が湧いてきます。

だから藩校や寺子屋に通う子供が増え、読み書きそろばんが出来るようになりますし、礼儀作法にも精通するようになるわけです。

日本の義務教育は世界一で、加えて日本は礼節の国ですが、この頃に培われた遺伝子を忠実に受け継いでいると言うことですね。

平和で、四季がもたらす秋の風情や恵みに感謝しつつ、文化の秋、体育の秋、食欲の秋、読書の秋を、心や体や舌や目で謳歌するのもお勧めです。

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平松幹夫
専門家

平松幹夫(マナー講師)

人づくり・まちづくり・未来づくりプロジェクト ハッピーライフ創造塾

「マルチマナー講師」と「生きがいづくりのプロ」という二本柱の講演で大活躍。「心の豊かさ」を理念に、実践に即応した講演・講座・コラムを通じ、感動・感激・喜びを提供。豊かでハッピーな人生に好転させます。

平松幹夫プロは山陽新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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