マナーうんちく話90≪懐紙の優雅な使い方≫
お造りは旬の魚介の刺身で、日本人なら誰もが口にする料理ですね。
それだけに、それなりの知識を身に付け、美しく食べたいものです。
お造りは「刺身」とも言われますが、新鮮な魚介類を生のまま薄く切り、醤油、ワサビ、ショウガ等を付けて食べる、四方を海で囲まれた日本だから発達した料理です。
その歴史は古く室町時代からとみられます。
生魚を薄く切るわけですから、本来なら「切り身」と表現するべきですが、武家社会では「切る」という言葉は嫌われたため、「切り身」ではなく「刺身」になったと言う説があります。
加えて、タイやヒラメやスズキなどの魚を薄く切り分けてしまったら、魚の名前が解らなくなるので、それぞれの切り身に、その魚のヒレを刺したので「刺身」になったと言う説もあります。
また、「刺す」という表現も嫌がる人がいるので、あえて「お造り」という表現が生まれたわけです。
ちなみに、魚を切ることを「作る」「造る」といったので、「造り身」といわれていたのが、「身」が省かれ「造り」に接頭語の「お」を付けて「お造り」になったと言うわけです。
但し、尾頭付きの伊勢海老やタイなど美しく盛られた切り身を「お造り」、単なる切り身を「刺身」と表現する場合もあります。
さて、お造りの食べ方ですが、たいていが白身と赤身の盛り合わせになっているので、淡白な白身や海老、烏賊、貝類から、脂の多い赤身を頂けば良いでしょう。
ワサビは醤油に溶かす人もいれば、刺身に適量載せて食す人もいますが、好のみの食べ方で良いと思います。
薬味も是非味わって下さいね。
また、主要な料理にそえる少量の野菜や海藻類を「つま」といいますが、この「つま」の意味は、メインの料理と野菜や海藻類を夫婦とみなしているので「妻」になります。
「つま」があることで見た目がきれいになる効果や、抗菌作用、さらに生臭い匂い消しの役割がありますから、刺身と共に召し上がって下さいね。
食べる時に、醤油が垂れたら服が汚れるので、「手盆」あるいは「手皿」といって、箸を持たない手で受けて食べる光景を良く見かけますが、手皿・手盆ではなく刺身醤油の皿で受けて下さい。
かしこまった席では懐紙で受けられる事をお勧めします。
これから色々な料理が出て参りますが、美しく食べて頂くためには懐紙は必須品です。