まなーうんちく話798《月々に 月見る月は 多けれど・・・。》
先人は、自然が織りなすちょっとした変化も敏感に捉えると共に、太陽や月のめぐるリズムを詳細に観察し、季節を感じ取ってきました。
そしてその節目になるのが、昼と夜が同じ長さになる「春分の日」と「秋分の日」であり、さらに、昼が最も長く夜が短い「夏至」と、夜が最も長く昼が短い「冬至」です。
この春分と秋分、さらに夏至と冬至の事を「二至二分(にしにぶん)」と言います。
そして、二至二分に四季のそれぞれの始まりである立春、立夏、立秋、立冬、すなわち「四立(しりゅう)」を加えたものが「八節」です。
これらを基盤にして、小暑、大暑、小雪、大雪、小寒、大寒等を加味して一年を二十四の節季に分類したわけで、これが《マナーうんちく話》に度々登場する「二十四節季」です。
12月22日は、一年のうちで昼が最も短く、最も夜が長い冬至です。
冬の季語としてすっかりおなじみの「柚子湯」は、冬至に、風呂にユズを浮かべて入いる習慣で江戸時代から始まったと言われております。
柚子は香りや酸味が強い日本を代表する柑橘類ですが、この度目出度くユネスコの世界文化遺産に登録された「和食」においても、伝統的な薬味や香辛料としても重宝されています。
前回触れました「風呂吹き大根」に柚子味噌を添えて食べるのも良いですね。
邪気払い、血行促進、融通が効くようになるとの願いを込めて柚子を使用しますが、柚子が手に入らなければ、食べた後のミカンの皮をネットなどに入れた「ミカン風呂」も、同じような効果が期待できますのでお勧めです。
この他、冬至には「ん」の付く食べ物、例えば「かぼちゃ(南京)」、人参、レンコン、うどん、ぎんなん等を食べると幸運に恵まれると言われております。
ところで日本の二十四節季の始めは立春からですが、古代中国では冬至が一年のスタートになった時代も有ったそうで、柚子湯につかり、柚子の強い香りで身体を清めたとも言われております。
ちなみに、冬至は太陽の光が最も弱い日で、なにかと災厄に見舞われやすい日です。しかし、この日を過ぎると今度は、一日毎に昼が長くなり、太陽の光も強さを増してきます。
陰が極まって陽に転じる意味で、「一陽来復(いちようらいふく)」とも言われますね。悪い事が続いた後に、幸運がやってくると言う意味で使用されることもあります。
コンピューター万能の現在でも、結婚式は殆どの人が大安吉日にこだわりますが、中には仏滅の日に挙式をするカップルもいます。
どん底の日に挙げれば、これからは上に上がるのみと言う理屈です。
立春にも同じ事が言えます。
冬至は太陽の力がどん底の日ですが、立春は寒さがどん底の日で、いずれも後は上向くだけです。
早い話し、悪い事ばかりは続かないと言うことです、
つまり「春の来ない冬は無い」と言うことです。
物事が全て順風満帆の時には特に意識しませんが、旨く行かなくなった時はイライラします。一生懸命努力したにもかかわらず結果が伴わない時には、悩んだり苦しんだり落ち込んだりします。
この時期が季節で言えば一番寒い真冬で、どん底の日です。
しかし、この時に無理やりに季節を早め、春が来るのを焦ってはいけません。
真冬には真冬にしかできないことがあります。
味噌や酒を仕込むことや寒中水泳などもそうです。
どん底の時には、苦労する事、耐える事を経験し学ぶ時です
そして、そのプロセスを経て、初めて花咲く春が訪れます
春に華々しく咲く桜も、厳寒の厳しさ無しでは花開く事はありません
冬は花も少なく山も眠りますが、終わりの季節ではありません。
希望に満ちた明るい未来を築くための「下ごしらえ」の季節なのです。