マナーうんちく話606≪松茸と土瓶蒸しの食べ方≫

平松幹夫

平松幹夫

テーマ:和食テーブルマナー

「味覚の秋」と言われるだけあって、美味しい食べ物が勢揃いする季節です。
木の子もその一つですね。きのこの語源は、「木の子」は「木の子ども」であり、森や林でよくみられたので、昔の人から、そのように名付けられたわけです。

「味シメジに香り松茸」と言われるように、それぞれ個性的な特徴があり、日本料理でも重宝されていますが、それにしても松茸のように、一盛り一万円以上の値が付いては、気軽にと言うわけにはいきませんね。

日本では木の子の食文化や、香りを楽しむ文化は古くからあり、松茸も弥生時代から食された痕跡があります。また万葉集にも詠まれています。

さらに、平安貴族は紅葉狩りと共に松茸狩りも行っていたようですが、江戸時代には庶民の季節のイベントとして定着しました。

そんな松茸が、なぜ一万円もするようになったか?と言えば、ひとえに需要と供給の関係でしょうか。

昭和30年代から40年代はそれほど貴重品ではありませんでしたが、やがて赤松が生える山に縄が張られるようになり、松茸がはえる山は「お宝の山」になったわけです。

ちなみに、日本の食料自給率は約39%ですが、松茸の自給率はどのくらいかご存知でしょうか?現在では恐らく数%で、大半は輸入に頼っているのが実情です。中国、韓国、カナダ、アメリカ等などが主な輸入先ですが、生粋の国産とはいかなくても、味覚の秋に一度は口にしたいものですね。

ところで、会席料理には色々と、家庭ではあまり食べられないものが出てきますが、その代表格が「松茸の土瓶蒸し」ではないでしょうか?
高級料亭なんかで供されたら緊張するかもしれませんね。

土瓶蒸しとは、小さい土瓶を容器にしたもので、松茸を始め、ハモのような白身魚、エビ、ギンナン、三つ葉など、香りの良い素材と、白身の魚のだし汁を入れて蒸した料理です。

あえて土瓶を使用するわけですから、松茸の芳醇な香りと深い味わいを熱々で楽しむ吸い物で、季節感や豪華さが感じられる料理です。

そして、松茸の土瓶蒸しは、「このようにして食べなければいけない」という厳格な作法は有りませんが、前述したように、料理の特徴にそぐった食べ方をしたらいいでしょう。

○杯(お猪口)の上に乗っているスダチをとり、土瓶の受け皿に置いて下さい。

○杯を両手で取り、一旦テーブルの上に置きます。杯は両手で取って下さいね。

○土瓶の蓋をとり、右側に置きます。

○スダチの汁を、少し絞って土瓶の中に入れます。
この際、スダチの汁をしぼり過ぎないようにして下さい。

○杯に汁を注ぎ、先に香りを嗅いで、続いて汁を頂いて下さい。
この際、右手で土瓶を持ち上げて、左手で底を押さえて、静かに汁を注ぐのがポイントです。姿勢にも注意して下さいね。

○汁を頂いたら、具を適宜取りだして頂いて下さい。
具は杯にとって、食べる時には杯を手に持って食べて下さい。

○食べ終わったら、蓋と杯を元通りにして下さい。
スダチの搾りかすは、受け皿においておけばいいでしょう。

松茸の土瓶蒸しの食べ方のポイントは、最初に汁を味わうことですが、汁と具の楽しみ方は他にもあります。

スダチの汁を土瓶の中に入れるのではなく、土瓶の蓋はそのままで、杯の中に巣立ちの汁を少し注ぎ、土瓶の汁を注いで、汁を先に味わってから、土瓶の蓋を開けて、具を食べる方法も有ります。さらに、杯の中にスダチの汁を注ぐ前に汁を入れて、匂いを嗅いで楽しむ方法も有ります。

土瓶蒸しは香りを楽しむ風流な食べ物ですが、熱いので火傷に注意して、楽しく美味しく食して下さい。

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平松幹夫
専門家

平松幹夫(マナー講師)

人づくり・まちづくり・未来づくりプロジェクト ハッピーライフ創造塾

「マルチマナー講師」と「生きがいづくりのプロ」という二本柱の講演で大活躍。「心の豊かさ」を理念に、実践に即応した講演・講座・コラムを通じ、感動・感激・喜びを提供。豊かでハッピーな人生に好転させます。

平松幹夫プロは山陽新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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