マナーうんちく話516≪袖触れ合うも多生の縁≫
「一宿一飯の恩義」と言う言葉をご存知でしょうか?
「一宿」は一晩泊めて頂くことで、「一飯」は一回食事をご馳走になることです。
つまり、旅の途中で一晩泊めて頂いたり、食事をご馳走になって、他人の世話を受けることですが、チョッとした恩を他人から受けたら、決してその恩を忘れてはいけませんよ!と言う戒めです。
西洋には巡礼の旅人を地域の人が無償でもてなす、いわゆる「ホスピタリティー」と言う精神が有りますが、古今東西「もてなし」の文化は有るものですね。
ただ日本では、「恩を受ければ、その恩を返す」という独特の文化が根付いています。例えば、葬式で香典を出したら「香典返し」があり、結婚祝いには「内祝」と呼ばれる返礼が有ります。
葬式や結婚式は何かと経費がかかるから、主催者にお金を差し出すわけですが、頂く方は、もらいぱなしになったら、頂いた人に頭が上がりません。
さりとて、頂いた金額をそのまま返したら、折角の思いやりの心を無にすることになるので、頂いた金額の半分位を返すわけです。
TBS系ドラマで、平成の最高の視聴率を誇った「半沢直樹」の「2倍返し」と言う言葉がブームになっていますが、香典や打ち祝いの大体の相場は二分の一位が多いようです。
だから日本では、香典や結婚祝いで現金を贈れば、出した方も「お返し」を期待する雰囲気が有るのも事実です。二分の一くらいのお返しを期待していたのに、三分の一くらいのお返ししかなかったと言って不機嫌になる人もいます。
過度なお返しを期待する人は、最初のギブを控えめにされる事をお勧めします。
「ギブ&テイク」の関係が良いという人も多いようですが、現実には難しいと思います。
的確に的を射た例えではないかもしれませんが、「称賛」と「お世辞」があります。どう違うかと言えば、称賛は相手の良いところを心から褒めることです。
一方、お世辞は、褒める代わりに褒めたことへの見返りを求めます。
いずれも人間関係には大切ですが、お世辞ばかりでは信頼を失いかねません。
と言うことは、与えても返礼を要求しない「ギブ&ギブ」の精神が理想ではないでしょうか?
「人の喜びは自分の喜びだ」と思える人は本当にハッピーな人です。
また、恋愛や親子間の愛は、見返りを求めないから崇高なものなのです。
「ギブ&ギブ」では、一見損をするようですが、実は意外に、後になって得る物が多いわけです。
特に良好な人間関係を築く際にはとても有効です。
ところで、お陰さまで《マナーうんちく話》が今回600回を迎えました。
深謝の至りですが、私がコラムを書き始めた動機は、33年間の接客の仕事で得た知識や経験が、社会に貢献できないか?と考え、うんちく話を始めました。
そして、読んでいただけ人に、いかに価値あるモノにするか?と言うことを考慮し、マイベストプロ事務局の担当者の知恵も頂きながら、現在に至りました。
そして、この積み重ねが、思いをよらぬ好結果をもたらし、「ギブ&ギブ」精神の素晴らしさを、身をもって知ることができました。
「ギブ&ギブ」は、先に何かをしてもらう事ではなく、何が出来るかが先決です。
つまり、ギブを先行して、相手が喜んでくれれば、別に期待しなくてもその喜びが自分に帰ります。
だから、良好な人間関係を築いている人は「ギブ&ギブ」精神が旺盛です。
ギブの内訳は多種多様です。喜びの言葉で有ったり、笑顔で有ったり、明るい挨拶で有ったり、物で有ったり、情報で有ったりしますが、これは「思いやりの心」の根源をなすものです。
友好関係とは、そうした交流から生まれます。
と言うことで、《マナーうんちく話》、これからも何卒よろしくお願いいたします。