マナーうんちく話453≪冬来りなば春遠からじ≫
稚魚の不漁により、価格が鰻上りに高騰している鰻ですが、その点、鮎は鰻と同じ位高級魚で美味ですが、値段も落ち着き、食す機会が多い魚ですね。
今年も鮎の美味しい季節がやってきました。
釣りやグルメに、ワクワクされている方も多いと思います。私もその一人です。
鮎は川魚の「女王」と呼ばれるだけあって、姿、形、香り、そして味は格別で、古くから日本人に親しまれ、季節により様々な呼び方を持っています。
鮎は、早春から春にかけては、川を遡(さかのぼ)ります。
これが「上り鮎(のぼりあゆ)」「若鮎」で、秋になると今度は産卵をするため、川を下りますが、これが「下り鮎」「落ち鮎」です。
また、スイカやキュウリに似た独特の香りがするので「香魚」、さらに、一年で一生が終わるので「年魚」、加えて、水の中では口が銀色に光るので「銀口魚」とも呼ばれています。
さらに、春の季語では「若鮎」、夏の季語では「鮎」、秋の季語では「落ち鮎」、冬の季語では「氷魚(ひうお)」などと、四季折々の季語を持っています。
鮎も戦後養殖が行われるようになったため、天然と養殖がありますが、何を持って天然と定義するか私にはよく解りませんが、一般的には、養殖と天然の見分け方で、一番わかり易いのは色だと思います。天然の鮎は黄色が濃く表れ、養殖は黒色がかっているのが特徴とされています。
次に匂いです。天然モノは香りがきついですが養殖はあまり匂いません。
また、天然の鮎は、主に藻類を食すので脂肪分は有りませんが、養殖は脂肪が多いのが特徴です。
毎年6月に入って、鮎魚が解禁になると、「鮎魚解禁、太公望繰り出す」等と言う身だしなみで初夏の風物詩として掲載されますが、鮎はいずこにも生息します。全国的に特に鮎が有名な川があるようですが、なんといっても「おらが故郷の鮎」が一番のようですね。
ところで「最近の若者は・・・。」と言い出したら年を取った証拠と言われますが、それと同じく、歳を重ねて来ると、つい「蕎麦の食べ方」と「鮎の塩焼きの食べ方」についてウンチクを語りたくなるものです。
およばずながら私もその内の一人ですので、今回は「鮎の塩焼きの食べ方」についてのウンチクです。
堅苦しい決まりはないと思いますが、歯の丈夫な人と丈夫でない人、改まった場所と気軽な場所、天然と養殖、鮮度等により多少異なります。
歯が丈夫で、気軽な雰囲気で食す、天然の鮎の塩焼きは、先ず尾びれ・背びれを取り除き、丸かじりする。かじるのは、頭からでも腹からでもお好きな所からどうぞ。品や教養はかなぐり捨てて、とにかく丸かじりする。これに勝る食べ方はないでしょう。
鮎は香りと内臓のほろ苦さが、何とも言えない味です。
身は食べるが、内臓は苦手と言う人には向きません。
歯が丈夫でなく、鮎の内臓が苦手な人は、秋刀魚等と同じ食べ方がお勧めです。
先ず、上の身を頭の部分から尾にかけて食し、上辺が済んだら、背骨と頭をはずして下の身を食べる食べ方です。
次に、身をほぐして、頭と骨を外して食す方法です。
箸で身の部分を押さえて、身をしっかりほぐして下さい。
ポイントはしっかりほぐすことです。ほぐれたら、頭を手で持って、軽くねじるようにしながら、頭と身体を切り離します。この際、頭と身体の境の部分の皮をキチンと切って下さいね。但し骨は切らないでください。
こうして、頭を持って、少しねじりを入れた状態でゆっくりと引いて頂いたら、頭と身体が綺麗に切り離せます。そしたら、頭と骨の部分を皿の上側に置き、身の部分を食します。
ちなみに、鮎は「魚」編に「占」と書きますが、これは色々な説が有ります。昔、神功天皇が鮎で戦の勝ち負けを占ったからと言う説や、鮎は縄張りを持つ習性、つまり自分の居場所を独占するので「占」と言う字が付く説が有ります。
この夏、鮎を食べる機会が有れば、大吟醸酒と共に、うんちくを語りながら、楽しく上記の食べ方をおためしください。