マナーうんちく話73≪話好きになる方法とは?≫
先日、梅酒用の青梅を沢山いただきましたが、量が多かったので、またその一部をご近所にお配りしました。
「飽食の国」日本では、多種多様な果物や野菜が年中市場に出回っていますが、梅は今の時期だけで、旬を実感させてくれる数少ない農作物です。
そして、梅から作る梅酒は、焼酎等に漬け込んで作るアルコール飲料ですが、家庭でも気軽に出来るので、古くから健康飲料として親しまれていますね。
ところで、頂き物をした時、それが貴重な物であったり、食べきれない場合に、他人に差し上げる事が有ると思いますが、その際、どのような言葉を使用されますか?
「お裾分け」と言う言葉を使用される方が多いと思いますが、如何でしょうか?
他人から頂いた物の一部を、また他の人に差し上げる事を、「裾わけ」と言いますが、「お裾分け」とは、「裾わけ」を丁寧に表現した言葉です。
そして「裾」とは、膝から下と言う意味ですが、服の下の部分を指す場合が多いですね。
すなわち、裾とは末端の部分で、主要な部分ではないと言うことです。
早い話し、裾とは「つまらないもの」だと言うことです。
従って、「お裾分けです」と言うことは、「つまらないものです」と言う意味になりそうですね。
勿論、本当につまらないものではなく、そこには、日本人独特の謙虚な気持ちが込められている気がします。
しかし、このような謙虚な気持ちも、差し上げる方も、頂く方も、互いに共通認識できていればいいですが、頂く側が、直訳して、「裾=つまらない物」と解釈したら、事は複雑です。
実際に、「つまらない物」という本来の意味を理解されている方は、意外に低いのが現状です。
ちなみに「つまらない物」の本来の意味は、「マナーうんちく話446《つまらない物の真意とは?》」を参考にして下さい。
そこで私は、「お裾分け」という言葉より、「お福分け」と言う言葉を使用しています。
昔から、「初物(旬の物)は、寿命を75日延ばす」と言われており、旬の梅は、まさに寿命を延ばす「福」を頂いたことになるので、その一部を差し上げるわけですから、「お福分け」となるわけです。
「お福分け」という表現の方が、なんだかワクワクして気分が良くなる気がしませんか?
頂かれた方も、縁起が良いと言って大変喜んで下さると思います。
このコラムでも、すでに何度もお話ししましたが、五穀豊穣や健康を神様に祈願する際に、野菜等をお供えして神事を執り行いますが、神事が終われば、そのお供え物を下げ、祭主や神事に参加した人が、それを頂くわけですが、「福」と言う意味は、まさに、このことを意味するそうです。
だから、「福を授かる」とか、「福の神」などと表現しますね。
従って、「お裾分け」と言う言葉も謙虚さが感じられていいと思いますが、「お福分け」は、さらに響きが良くなり、気持ちまでハッピーになれます
特に、目上の人や、年長者には受けますよ。
日本語は、世界屈指の美しい言葉だと言われておりますが、実に不思議な力が有ります。時には人を不愉快にしたり傷つけたり、あるいは、喜びや勇気や希望の原動力になったりするので、慎重に選びたいものです。
今でも滅多に見られなくなりましたが、長寿や結婚式などのお祝いをする時には、お盆に品物を載せ、袱紗を掛けて渡しますが、頂いた側は、そのお盆に、懐紙や半紙を載せてお返しします。
これを「お移り」と言いますが、「お目出度が移りますように」との意味です。
「お福分け」も「お移り」も、幸せの気持ちのやり取りです。
宅配便利用が増えた現代だからこそ、このようなやりとりは嬉しいですね。