マナーうんちく話453≪冬来りなば春遠からじ≫
このところ、自然の猛威が日本を襲い続けている気がします。
しかも、地震も津波も雨も超ド級のモノが多くなった感があります。
今回の台風しかりです。
寺田寅彦の「天災は忘れた頃にやって来る」という有名な言葉がありますが、今では「災害は忘れられないほどやって来る」ですね。
さて今日は、天気が気になりますが、「仲(中)秋の名月」です。
「十五夜」ともいいます。
旧暦の秋には「初秋」「中秋」「晩秋」があり、それぞれ7月、8月、9月になります。そして、今日が旧暦の8月15日になるので、今日のお月さまを「中秋の名月」とか、「十五夜」と表現するわけです。
勿論、「十五夜」はなにも今日に限ったわけではないのですが、今頃は暖かくも寒くもなく、しかも空気が澄んで、今日の月明かりが一年の中でも一番冴えわたるので、観月の行事が生まれました。
この行事は以前にも触れましたが、最初は宮中で美しいお月さまを観賞しながら、詩歌を詠み、宴を開いたのが始まりで、やがて江戸時代に入り、作物を収穫し、感謝して、さらに豊作を祈願する行事として庶民に定着しました。
今では、すっかり秋のレジャーになっていますが、本来は「瑞穂の国」ならではの、豊作を祈念する行事だったわけです。
豊作を象徴するのが、まさに満月だったのでしょうね。
秋の七草の一種である「芒(すすき)」を団子などと共にお供えするのは、芒はイネ科の植物なので、それを米に見立てたためです。
加えて、お月さまは古来より「かぐや姫伝説」等に象徴されるように、日本人の生活の中に溶け込んでおり、月齢により、それぞれとても素敵な名前が付けられました。
前回お話しした「待宵月」、今日の「十五夜」、明日の「十六夜」、さらに「立待月」「居待月」「寝待月」等と続き、十五夜を過ぎてもずっと楽しめます。
しかし、お月様の日々変化する優美な姿に心打たれたのは、日本人ばかりではありません。月を愛でる習慣は各国に存在します。
世界中の多くの芸術家が競って描き、奏でてきたのはご承知の通りです。
ベートーベンのピアノソナタ「月光」、グレン・ミラーの「ムーンライト・セレナーデ」、「ティファニーで朝食を」の主題歌「ムーンリバー」等は、年配の人には懐かしい曲ですね。
勿論最近でも、月を題材にした曲は多々ありますが・・・。
ちなみに月をデザインにした国旗は中近東に多いようです。
昼に灼熱の太陽に悩まされるから、夜には月が心地良く感じるからだそうです。
このように、月がいかに古今東西愛されてきたかが伺えますが、中でも日本は特別です。
日本の先人たちは、自然に対し特に神経を使い、実りの秋には収穫を祈り、そのための多彩な行事を行ってきました。お月見しかりです。
これも自然と大変上手な付き合い方のひとつです。
現在は機械化されて、野菜や米作りが簡単なようですが、自然を甘く見ると、とんでもないことになります。
自然は、恵みももたらすが、時には牙をむきます。
自然の営みを無視し、環境を破壊し、温暖化に拍車をかけると、自然は怒ります。
今日は、古来より最も楽しみにされてきたお盆のようなお月さまを愛でる特別な日です。
こんな時に大型台風に見舞われたことを、自然からの警告と受け止め、素直に反省しなければいけないと思います。
自然を愛し、自然と共生してきた日本人にとって、「十五夜」には素晴らしいロマンがありますが、今、厳しい現実に直面しています。