マナーうんちく話179≪福を呼ぶ正月の食べ物≫

平松幹夫

平松幹夫

テーマ:歳時記のマナー

日本の正月は神様と共に食事をするところに大きな特徴が有ります。前回お話しした「神人供食」で、「祝い箸」の両端が細くなっているのは、一方を神様が使用し、もう一方を人間が使用するためです。とてもユニークな文化ですね。
今回は、縁起の良い正月の食べ物のお話しです。
大切な人との食卓で、話しの花を咲かせていただければ嬉しい限りです。

●年越し蕎麦
大晦日に、神様をお迎えする準備が整ってから家族揃って食します。江戸時代の町人が、そば団子を食べていたのが始まりとされていますが、今では、蕎麦のように、細く、長く、長寿にあやかるという願いがあります。

●若水迎え
元旦に最初に汲む水の事を「若水」と言います。勿論今のように水道のない時代ですから、水は井戸や川から汲んでいたわけですが、この水を汲みに行くことが「若水迎え」で、この水は向こう一年間の邪気を払うと言われています。この水を汲む時に「福汲む」「幸汲む」等とお目出度い言葉を口にします。勿論、雑煮などのご馳走はこの水で作ります。
そういえば、これに関連したニュースを、12月27日のテレビのニュースでしていましたね。
舞台は出雲大社でした。

●お屠蘇(とそ)
お雑煮・おせち料理を食べる前に家族揃って、新年のあいさつを交わした後で、一年間の無病息災を祈って飲む薬酒です。漢字の意味は病魔を退治するという意味です。
飲む順番は、お年寄りがいらっしゃればその方の長寿にあやかり歳の順に飲みますが、お年寄りがいなければ年少者から飲みます。年少者から飲むのは、若者の精気にあやかるからです。あくまで酒ですから運転にはくれぐれもご注意を!

●お雑煮
年末に神様にお供えした野菜等を元旦に下げ、前述の「若水」で料理します。味噌仕立て、すまし汁仕立て、また形も丸い形、四角い形など、それぞれ地域により異なります。ちなみに雑煮は、元々室町時代に儀礼の席で供されていましたのが始まりです。今でも目出度い時等にはお餅をつく風習は全国津々浦々で存在します。そもそも、おもちは保存性が高く、熱を加えればすぐ食べることが可能で、それでいて腹もちがいい、最高の食べ物だったわけです。欠点はカビですね。瑞穂の国ならではの生活の知恵だと感心します。

●おせち料理
もともと桃の節句、端午の節句、重陽の節句など、節句の料理を「おせち料理」と呼んでいましたが、今では正月の料理のみを、おせち料理と呼ぶようになりました。このおせち料理も一年の無病息災を祈るものですから、縁起の良い食べ物のオンパレードで、語呂合わせによるものが多いのはご承知の通りです。外が黒、中が赤の重箱に詰め、1の重から与(4)の重の4段重ねにする事が多いようです。市販の物は3段重ねが多いような気がします。時間が有れば、一つ一つ、そのいわれを思い浮かべながら、手作りしてみるのも良いものですよ。

●7草がゆ
1月7日に7草(なずな・せり・はこべら・ごぎょう・ほとけのざ・すずな・すずしろ)を入れた「7草がゆ」を食すと、邪気を払い、病気にならないとされています。縁起担ぎの側面も多々ありますが、ご馳走で疲れた胃を休めると言う効用が有り、昔の人の生活の知恵から生まれた発想です。余談事ですが「7草」には、「秋の7草」と「春の7草」があり、前者は観賞用、後者は食用です。

●鏡開き
1月11日に、御供えしていたおもちを下げ、ぜんざいなどにして食べます。武家社会の延命祈願の風習で、このお餅を食すと無病息災になると言われていました。武家社会の風習ですから、お餅を「切る」という表現は縁起が悪いので、あえてお餅を「開く」と表現しています。また、大小二つあるのは、月(陰)と日(陽)を表し、「福」と「徳」が重なり、さらに縁起が良くなると考えられていたからです。ちなみに正月に里帰りされた神様は期間中、この鏡餅に鎮座されます。

大体以上ですが、昔の人はことのほか縁起を担いだものですね。
そして、この現象は食べ物ばかりではなく、正月の行事にも至る所に表れております。次回はその正月行事に触れて行きます。


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平松幹夫
専門家

平松幹夫(マナー講師)

人づくり・まちづくり・未来づくりプロジェクト ハッピーライフ創造塾

「マルチマナー講師」と「生きがいづくりのプロ」という二本柱の講演で大活躍。「心の豊かさ」を理念に、実践に即応した講演・講座・コラムを通じ、感動・感激・喜びを提供。豊かでハッピーな人生に好転させます。

平松幹夫プロは山陽新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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