マナーうんちく話569≪泥より出でて、泥に染まらず≫
【冠婚葬祭の知識とマナー11】 「十六夜の月」の楽しみ方
12日は、ススキを刈ってきて、それを徳利に活け、酒とつまみ、そして「月見そば」を用意して、お月見を楽しみました。今年はとてもキレイでしたね。
皆様方の地域では如何でしたか?
お月見の夜が晴れ渡り、お月さまが大変美しくみられる夜は「良夜」と呼ばれ、大変好まれましたが、雲ったり晴れたりして、満月が見えたり見えなかったりするのも、風流が有って、これも良しとされました。しかし、全く雲に隠れてお月さまが見えなかったら、「無月」「雨月」のように呼ばれ、「十六夜」や「十七夜」に望みをつないだわけです。
実は、「仲秋の名月は10年に9年は見えず」と江戸時代から語り伝えられているそうです。
それだけ仲秋の名月の日に、天候に恵まれる確率は低いということです。
だから、「十五夜」がだめなら、「十六夜」を楽しめば、ということになります。
「十五夜」を楽しむことが出来たら、「十六夜」は少し趣を変えて楽しむことになります。
ところで、十五夜の月に比較し十六夜の月は、40分位遅れて出てくるので、その様子を、お月さまがためらいながら出てくると解釈し、昔の貴族たちは、16夜の月に「いざよいの月」というネーミングを付けました。ちなみに「いざよう」とは「ためらう」「ちゅうちょする」という意味です。
さらに、十七夜の月は立ってお月さまが出るのを待つので「立待月(たちまちづき)」、十八夜の月は立って待ったら少々しんどくなるので座って待つことにする「居待月(いまちづき)」、十九夜になるとさらに月の出が遅くなるので寝て待つ「寝待月(ねまちづき)」と名づくました。
出る時刻も、形も、日々変化するお月さまに、それぞれ相応しい名前を付けて、言葉でも親しんできた、昔の貴族たちの感性には甚だ感心させられます。
そして、お月見には、旧暦9月13に月を愛でる「十三夜」のお月見が有ります。
今年は10月9日(日)が十三夜になります。
実は、「十三夜」に再度お月見をすれば、何か良いことに恵まれるという言い伝えがあります。要は、お月見は、9月と10月、両方すれば幸運が期待できるということですね。
日本では昔から、「月」に関する看板や商品、さらに和歌や俳句は数えきれないくらい在り、日本人とお月さまは如何になじみが深いかということを物語っています。
このことは、月が風流や風雅のみならず、信仰の対象としても、日本人の心に深く刻み込まれてきた結果ではないでしょうか。
「十六夜の月」は、夜が遅いので、大人が楽しむものだと思います。
お月さまが出てくるのを、酒でも酌み交わしながら気長に待ち、やがてほろ酔い気分になり、何気なく空を見上げたら、そこにはキレイなお月さんがほほ笑んでいた!なんていうのは如何でしょうか?
このようにして、風情を楽しみながら、酒を酌み交わす相手がいる人は幸せです。
「日月は 一物つのために その明を暗くせず」という名言が有ります。
太陽や月は世界中を平等に照らし、その恩恵は公平である。という意味です。
同じ「月」でも、日本のように大いなるロマンを抱き新月から満月までそれぞれを目で楽しみ言葉で楽しむのと、西洋のように狼男やドラキュラーのように忌み嫌うのとでは、人生の生き方に大きな違いが有るのではと思います。
お月さまに寄せる日本人の思いは、人生を心豊かに生きるヒントが満載されています。