京都コムニタスにおけるスタッフの在り方
前回、1月21日(日)心理職スキルアップ講習「動機づけ面接演習〜カウンセリング導入から依存症治療まで〜」を開催することをお知らせしました。
すでにたくさんのお申し込みをいただき、このテーマの関心の高さがわかります。
是非、関心のある方は参加してください。
私たちはここ数年、様々な改革をしてきました。
引っ越しもして、会社名も株式会社コムニタスとし、東京コムニタスも形にしました。
心理職大全を出版するあたりから、これから自分たちが社会でどのように役にたてるかについて、もっと形にしていくことを考えて来ました。
この本にも書きましたが、私個人の基本テーマは、「どの人も大学院に行って、びっくりするくらい勉強して、食べていけるようになること」です。だから、大学院を出た人が食べていける術を考え続けてきました。
最近、私の所属する仏教学会で、パワハラ系の問題が発生していると聞きます。何と関わっているのは、私のよく知る人で、私は友人と思っている人です。私の論文も時々引用してくれる人で、若手のトップを行く研究者と言われてきました。被害を受けたと言う人のことは全く知りませんし、事の顛末も知りませんので、どうこう言えませんが、仏教学会はそろそろ、若い研究者を食べさせる仕組みを作る必要があると考えています。そういう仕組みがあれば、こんなパワハラ騒動が生じる可能性はかなり少なくなるでしょう。そうすれば自然に魅力のある分野と多くの人が考えてくれると思います。
中枢の人は、権威や権力も結構ですが、できるならそれを駆使して、仏教学という学問に属すことで、若手が安心して食べていける仕組みを作って欲しいと心から願います。いろんな軋轢や私財持ち出しもあるかもしれませんが、このコラムでふれた、花園大学の師先生は、その先端を行く先生で、私も彼を尊敬しています。
こういうと、20年前は鼻で笑われました。しかし、もう鼻で笑う時代も終わったと思います。私たちの世代は、気づけばもう若手ではなく中堅です。日本の主流世代では最も人数の多い、第二次ベビーブーム世代です。私はすでにおっさんですが、残りの人生をそこに使いたいと考えています。
雑談ですが、今回のパワハラ騒動の顛末は、被害を受けたという人が新書を出したことで、多いに話題になり、この本はかなり売れているのだとか。私も最近電子版を買って半分くらい読みましたが、失礼ながら、個人名を出して、批判というより悪口三昧という印象です。これは書かれた側は怒るのは無理からぬことです。今、ネット上で「仏教学会の闇」のように言われてしまうことに正直心を痛めています。
その批判?の内容も妥当と言えるのか、と言われると「いろんな意見があっていい」レベルのことが多く、決定打を打つような間違いと言えるものはほとんどないという印象です。
理系分野ならば、実験結果の改竄などを行ってしまうなら、場合によっては人生をかけて告発するということもあるかもしれません。しかし、仏教学においてブッダの真意など、本人に聞いてもわからないからこそ、いろいろな人がいろいろな解釈をし、さらにそれが言語を変えてさらにいろいろな人がいろいろ考えることを2000年繰り返してきた学問です。2000年いろいろを繰り返すことで、仏教の本質とは何かを問い続けてきた学問で、作用と反作用が常にあり、一つの意見に対して、真っ向から否定されるような見解が聖典レベルで書かれていることもあり、またその解釈が東アジアで広くなされ、時には国家権力と深く結びついてまたややこしくなり・・・・終わりがないところがむしろ魅力です。
現代人の研究者だけが間違えているというのは、よほど自分に自信がある人しか言えませんが、私にはそれが「おごれる者久しからず」に見えます。
先日のコラムに2月に法蔵館から『文殊菩薩の研究』が出る旨をお知らせしました。戸城編集長もツイッター(X)で言及してくださっているので、私が書いた編集後記からの引用をします。
これは光川先生から直接うかがった話であるが、中観の研究を進めていると、まずは龍樹を深く知らねばならないという見解にたどり着き、龍樹やその後の祖師を探っていると、有部と般若経典という分かれ道にたどり着き、有部の扉よりも、般若経典の扉を開き、開いてみると、大乗の無限の世界が広がり、手がかりに文殊菩薩を掴んだら、定年になった・・と苦笑いしておられたことを思い出す。
一般の人には暗号みたいな文章だと思いますが、仏教学とはそんなものだと思います。誰かが正しいか間違っているかの論争を否定するものではありませんが、そんなに簡単に結論が導きだせるほど、浅い2000年ではありません。
この著者の光川先生は、他人を名指しで否定的に批判することを「下品」と言っていたことは私の姿勢の一つになっています。自分が正しいと思うならそれだけを主張すればいいし、他人が間違っているから、私が正しいという理屈をたてているように見られることは、この方にとっても不本意なのではないかと思います。少なくとも私にはそう見えます。
私が院生の時、また別の先生が「他人のふんどしで相撲を取るな」とよく言っていました。正しいなら、他人がどう言っていても正しいし、自分の考える正しさと相反する意見があるなら、一定のリスペクトを払ってその見解を読み解くように、その先生は言っていました。
「自分だけが正しいと思うな」
これは、3月に定年を迎える私の師匠が常に言う言葉です。
こういったことを次の世代に伝える年齢になってきたなぁと、思う今日この頃です。
聞くところによると、この被害を受けたという方は、自分で事業をしていて、食べることに困っていないそうです。それは結構なことです。だからこの方に、大学のポストをたてにパワハラなど無意味だよと、言いたいのかもしれません。しかし、仮にそうなら、私としては、研究者の悪口など言うより、自分より苦しんでいる若手に手を差し伸べることを考えてほしいと強く願います。
京都コムニタスでは随時相談を受け付けていますので、お問い合わせいただけたらと思います。
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