厳しい面接と優しい面接は一見わかりません
まずは短所から考える思考を変える
面接の時によく聞かれることとして長所と短所があります。面接官は、基本的に受験者とは会ったことがないという立場をとります。内部生でも同様です。京都文教大学は、教員はゼミ生の面接はしないというルールがあると聞いています。となると、面接官は、受験生がどんな人か知らないという前提が成立しているということになります。
この質問項目には、まず長所を一生懸命考えてください。なぜか短所ばかりクローズアップする人が多いのですが、短所はそんなに一生懸命考える必要はありません。面接の場で短所を主張してもいいことはありません。面接対策で共通して厄介な思考(不安)は、
「できると言って、できなかったらどうしよう」
です。風呂敷を広げすぎるのは良くはないですが、面接官からしてみても、「○○ができません」「□□もできません」「△△は無理です」などと連呼されることは不愉快なのです。面接の場で、「できない」を聞きたいわけではないのです。そのようなアピールをされても、「そうか、できないのか、じゃあ合格させてみよう」とはまずならないでしょう。
こんなパターンに気をつけましょう。
Q「あなたの長所と短所を言ってください」
A「私の長所は●●です。短所は気が短い、協調性がない、云々」
短所で自分の悪いところを一生懸命探して、力一杯自分をけなす人がいます。おそらく真面目なのでしょうが、気が短いだの協調性がないなどと言ってしまうと、致命傷になりかねません。医療従事者は気が短いのは問題ですし、協調性が仮にないとすると、不適格者の烙印を押されるでしょう。短所は後付けで結構です。私からすると不思議なのですが、なぜか短所から入る人が多いのです。実際、
「短所は思いつくけど、長所がわかりません。どうしたらいいですか」
とよく質問を受けます。
長所探しは「できることから」
長所を考えるときは、よく自己分析して、自分の良いところ、売り物になるところ、得意なもの、能力、今できることこれまでしてきたこと、医療者にむいている性格などは常に頭の中に入れておく必要があります。例えば、人の話がよく聞けるというのは、一応美徳と言えますので、長所として使えます。また、ボランティアなどを根拠に行動力があるというのも使える事例としてあげられます。
心理系大学院の場合は、心理職としての適性を意識した長所を考えておくのが良いでしょう。例えば、他人の話をよく聞くことができる、ということは、職能として基本的なことですので、長所として使えます。漠然としてはいますが、安心感を与えられるというのも使えます。何も見当たらないという人は、このあたりから膨らますのも良いと思います。
長所の基本は、「できること」です。時制は今と過去です。ただし、過去は場合によります。いずれにしても自分のできることをまずリストアップすることがスタートラインです。
長所は具体的にする
長所を言うときの注意点は、具体的であることで、抽象的にしないということです。抽象論で自己アピールをすることは理論上不可能ではありませんが、かえって難しいのではないかと思います。ダメパターンを一つ。
「何事にも興味をもってやってみることが自分の長所です」
これで面接官が、「うん、そうか!」とはなりません。この場合、大切なのは、「どういう風に興味があるのか」「どこにどんな興味があるのか」「何をするのか」これらを全部具体的に言わないと長所になりません。臨床心理士指定大学院の場合で、これをアレンジしてみると、例えば
「私は不登校の子どもの別室登校の支援のあり方に関心があり、その実際を見るために、学びのパートナーの経験を2年したことにより、別室登校の子どもと深く関わった経験を持っている。話してみると家族のことや、勉強のことなどの話を聞いて欲しい子どもが多く、じっくり話を聞く支援が重要であることを知識として得ている」
長くなりましたが、こんな感じでアレンジすると具体的になります。この場合、不登校と別室登校と、支援に関する知識と経験があるということが手札として持っているということになります。何事にも興味を持つことは大切なことです。無関心はあってはならないことです。だからといって、何にでも興味を持っていることを、瞬間的に聞き手に証明するのは無理でしょう。事実であることを相手に伝えるには、どこまでも具体性を追求する必要があるのです。
「興味を持ったことはやってみないと気がすまない性格です」
こんなものも同じです。やってみないと気がすまないだけで何かをしたという証明はついていません。つまり長所になっていないのです。大切なことは、「今手に何を持っているか」「相手にどんな手札を見せることができるか」です。その「何」と「どんな手札」とは、つまり、「できること」です。社会人の方は仕事で培ったスキルは間違いなく使えます。他にもスキル系で言えば、
「英語が話せる」
「○○の資格がある」
「●●のスコアが△△点(もちろん高得点)」
「統計学ができる」
次に経験系
「子どもと関わった経験が豊富」
「キャプテンをしていたので、人望と統率力がある」
「自分でサークルを一から立ち上げたので、何もないところから新しいものを生み出す能力がある」
「ボランティアをしてきたので、臨床の人間関係がわかる」
「ボランティアをしてきたので、困っている人の主訴がわかる」
「ボランティアをしてきたので、困っている人の利益を考えることができる」
このような経験は使用可能です。ただし、
「不登校経験があるので、不登校者の気持ちがわかる」
こういった系統はあまりおすすめできません。自分が不登校だったからといって、他人の不登校の気持ちがわかると証明になるとは限らないからです。少なくとも「長所」にはなりにくいでしょう。
自己アピールは長所を前提とする
近年面接で自己アピールが問われるケースが増えています。看護大編入で、滋賀県立大学は私が知る限り必ず自己アピールが問われています。たいていは1分ですが、最大で2分の自己アピールが出されたことがあります。全く準備をしていなければ2分はかなりつらいと思います。やはりしっかりと準備をしておきたいところです。自己アピールに関してはこれまでも書いてきました。
セルフエフィカシー
いつも言うのは自分をケーキ屋さんのケーキと思えということです。実際、当塾の生徒さんの中には、伊勢丹のケーキ屋さんに行って、勉強してきたという人もたくさんいます。ケーキ屋さんのケーキは、間違いなく「甘くておいしい」のでしょうが、それをアピールしているケーキはないと思います。店員さんに質問して「甘くておいしいです!」と笑顔で言われても買う気にはなかなかなれないでしょう。やはり、買う側からすると、他と比べてどう違うのか、どうおいしいのか、という微妙な違いが知りたいということと、そのケーキにしかないオリジナリティやスペシャリティが知りたいから質問をするはずです。ケーキが好きでない人、関心のない人からすると、ほとんど違いがわからないような微妙な差異かもしれませんが、そこを掘り下げて説明できると、そのケーキにさらなる魅力が具わってくるのです。しかし、一方で、なかなかそんなアピールポイントを探すのは難しいという人も、むしろ多くいます。そうなると自分が普段目を向けないような強みに気づこうという意思をもって、自分を観察し直す必要があります。その意味で自分も知らない「強み」に気づく4つのヒントという記事は参考になることが多く、有益かと思います。ここに指摘される以下の4つの問いかけは一度は考えたいものです。
1. 今まであなたを支えてきたスキルは何ですか?
2. 強さを感じさせてくれるもの何ですか?
3. 子どもころ何で目立っていましたか?
4. あなたが無視しがちな褒め言葉は何ですか?
私は、いつも1.3.4を塾生に聞いています。特に4は重視しており、何もなければ、「誰か近い人にほめてもらってきてください」という指示を出します。たいていの人は「え~この年になって無理です」といったことを言いますが、実際にほめてもらうと、結構たくさんの気づきが得られます。そして実際ほめてもらえることで、アピール材料にしてもよいという考えをもつこともできます。是非、参考にしてみてください。自分の強みとは、とあらためて考えてみると意外に自己評価しにくいものです。だから面接対策としては、必ず適正な自己評価をしてから、自己アピールを作るように言っています。京都コムニタスの強みとしては、自己評価できる範囲での強みとは、生徒の状態を把握する能力と言ってよいと思います。私たちスタッフが、生徒の現状とこれからの可能性について常に情報が共有できています。だから、授業だけに来ているか、授業以外でも塾に来ているかも把握しています。きめ細かいという言葉も軽いくらいよく見ていることが、自分で言える強みです。
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