証拠を持って論証することと、証拠がなければ何をしてもいいということは意味が異なります

井上博文

井上博文

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私たちのような塾は、研究計画書作成に大いに力を注ぎます。だから常に証拠、根拠、エビデンス、こんな言葉が頭をよぎりますし、これがなければ研究ではありません。私も学生時代に、師匠から「証拠」についてはあまりにも多くのことを言われました。あらゆる学問分野において証拠を出さなくても良いものはありません。だから、研究に少しでも触れた人間は、証拠を出すことが身体に染みついているのが普通ですし、むしろ少しでも質の良い証拠を出すために勉強をしたり、情報収集をしたり、様々な外国語や特殊言語を読む訓練をしたり、調査や実験をしたり、統計をとってみたりと、専門技能を獲得していくわけです。かつて、私が師匠から言われたのは、表題のままですが「証拠を持って論証することと、証拠がなければ何をしてもいいということは意味が違う」ということです。もちろん、世の中には「証拠がなければ・・」ということはいくらでもありますし、例えば仏教の中にも、今も戒律を守って生活をしている仏教僧呂(比丘といいます)もいますが、戒律にはたばこに関する規定はありません。だから意外にヘビースモーカーの僧侶はいるのです。しかし、これは脱法行為というわけでもなく、法の網目をくぐったということでもありません。「証拠がなければ・・」というのは法の網目をくぐって悪意をもって、脱法行為をすることです。証拠を出さない、証拠を隠す、証拠を消す、こういった類のことで、「ばれなければいい」という考えを下地に「立証されなければ罪(詰み)ではない」という考え方に発展したものです。研究者はこういった考えを頭に宿して研究をすると必ず歪みます。これは当時から心に刻んで今に至ります。私たち、研究に携わる人間は、別に脱法行為をして、証拠がなければ何をしてもいいという思いで、研究分野に足を踏み入れるわけではありません。身につけた技術は純粋に研究のために必要なものです。

一方で、最近選挙に絡む買収容疑で逮捕起訴された政治家たちは、その親分と同様、徹底した証拠を残さない手法を前面に出します(実際は杜撰ですが)。それも含めた買収なのでしょうが、「証明できるものならしてみろ」とばかりに漫画さながらの徹底ぶりです。「グレーならば黒ではない」がいつしかスタンダードになり、黒を証明できない方が悪く、ほぼ黒のグレーが官製ネット応援団によってあたかも白であるかのような論調に染められていき、官製に近い政治癒着広告会社が都合の良い情報だけを流し、都合の悪いことは一切無視を徹底するというメカニズムが固定化してしまいました。親分自ら国会で脱法行為を容認するわけですから、ちょっと救いようがありません。

この違いはとても重要で、政治における「現実」を示したものではなく、個々人の人間性の問題です。この8年間で日本人の感覚でとりわけおかしくなっているのは上述の点です。「コメントを差し控える」という言い方は自分を守るために使うものではないのですが、誤用が当たり前になりました。証拠を出さない、出せない人々が政治をすると、言葉の誤用(乱用)、強弁に、最後は逃げ切りつながります。この8年間何度逃げ切りで終了した事件があったか、もはや数えられる人の方が少ないでしょう。

これが研究者ならどうなるかを考えてみると、極めてわかりやすい回答になります。二度と研究の表舞台には立てなくなります。それだけ研究は高い証明能力をもった証拠を出さねばなりません。よい子と小さい子と研究者を志す人、若い研究者は、決して、異様な政治家をスタンダードと見て、まねをしてはいけません。人生がおかしくなってしまいます。



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井上博文(塾講師)

株式会社コムニタス

塾長以下、スタッフが、全ての生徒の状態を正確に把握している。生徒をよく観察し、成長度合、どのような不安や悩みを抱えているか、をしっかりと観察し、スタッフ間で情報共有をしている。

井上博文プロは京都新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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