諸行無常・盛者必衰の理

井上博文

井上博文

テーマ:仏教

『平家物語』祇園精舎の鐘の声、諸行無常の・・・・の諸行無常です。
祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。たけき者も遂にはほろびぬ、ひとへに風の前の塵に同じ。

ここまでは結構丸暗記している人も多いと思います。私もここまでです。実際はこの続きがあって、盛者必衰の事例を国内外に求めます。秦の趙高、漢の王莽、梁の朱忌、唐の禄山、国内は承平・天慶の平将門、原純友、源義親、藤原信頼、平清盛があげられています。

現総理大臣をこの中に入れるのはあまりも上記の人に失礼ですので、それはしませんが、歴史の汚点であることは間違いありません。しかし、反省すべきはこの人ではありません。この人は、そのような思考の持ち主ではないでしょう。恥という概念があるなら、平家物語の冒頭を読んだだけで、恥ずかしくて、今の職に恋々としがみつくことはできないでしょう。そのため、繰り返しですが、反省すべきは、彼を選んだ私たち一般国民です。この記事は私たちに反省材料を与えてくれます。

新型コロナに限らず、ここ数年、自然災害がなかった年を正確に言える人はいないのではないかというくらい、何らかの自然からの不幸が私たちを襲います。しかし、これも諸行無常ですから、同じ状態で維持されることはなく、常に変化し続けているというのが理です。諸行無常は、盛者必衰にだけ当てはめられるのではなく、最高に不幸を感じている私たち自身にとっても当てはまります。いくら不幸に思えることがあっても、それは瞬間のものであって、その瞬間が過ぎれば少しでも違ったものになっています。その理は新型コロナウイルスとて逃れることはできません。私たちにとってポジティブに無常かネガティブに無常かは、わかりませんが、どちらになっても適応できるように生きるための智慧を身につけておくことが科学的な生活です。世の中は、仏教的には苦で満ちているという現実があるわけですから、基本的に自分の思い通りになることなどありません。問題は、どの程度、思い描いたものから外れていて、自分の力でどのくらい近くできるか、あるいはできないかをよく計算して、できることを精一杯することです。

と、ここまで書いていたら、件の違法状態で定年延長が閣議決定された検事の方が、賭け麻雀をしたとの記事が出たとのことで辞任意向というニュースがでました。何も人生を賭けて麻雀をすることもなかろうにと思いつつ、なぜ、公務員の定年延長法案が引っ込められたのかも合点がいきました。

おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。たけき者も遂にはほろびぬ、ひとへに風の前の塵に同じ。

春はもうすぐ終わりそうですが、総理大臣にとっても、国民にとっても悪夢は続きそうですが、必ずこの記述のようになっていきます。先人の知性に学びましょう。



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