公認心理師試験過去問を見る際は日本語をしっかり分析しましょう⑧
周知の通り、昨年の公認心理師試験は事例問題の配点が1問3点でした。これによって、事例以外の問題を勉強すべきかどうか、ネットでも様々な意見が出たようですが、このコラムでも触れましたが、私たちの解答再現では、事例問題は正答率が73%でした。114点で換算すると、83点ほどを平均して取っていることになります。すなわち、最低点で考えるならば6割を事例で見込めることになります。逆から言えば、それ以上見込むのは危険ということでもありますが、いずれにせよ、昨年は、事例での逆転が多かったとも言えます。しかし、配点が高いと、その分、間違ったときの破壊力もありますので、取れる問題をいかに確実に取るかということが重要課題になります。あとは、2つの正答の問題がやっかいだと言う声、1問はわかったけれど、あと1問がという声も多かったと思います。
北海道試験問59
27歳の女性A、会社員。3年前から大きなプロジェクトの一員となり、連日深夜までの勤務が続いていた。気分が沈むため少し休みたいと上司に申し出たところ、認められなかった。徐々に不眠と食欲不振が出現し、出勤できなくなった。1週間自宅にいたが改善しないため、精神科を受診した。自責感、卑小感及び抑うつ気分を認め、Aに対して薬物療法が開始され、主治医は院内の公認心理師に面接を依頼した。
Aへの公認心理師の言葉として、最も適切なものを1つ選べ。
① 趣味で気晴らしをしてみましょう。
② 労働災害の認定を申請してはどうですか。
③ 自分のことを責める必要はないと思います。
④ 他の部署への異動を願い出てはどうですか。
⑤ 私が代わりに労働基準監督署に連絡しましょう。
事例問題は、まずは事例をしっかり読まねばなりません。その上で状況を把握すること、決めつけが一番危ないことを認識して問題を見ることがスタートラインです。問題文と選択肢が関連のある場合と、ほとんど関係しないのではないのか、という場合が一部ありましたが、基本的にはあまりありませんし、今年はもっと精密な問題が出るのではないかと予想しています。
この問題文の重要箇所をチェックすると、会社員、連日深夜までの勤務、気分が沈む、休みの申し出が認められなかった、不眠、食欲不振のあと、出勤ができなくなった、精神科受診、自責感、卑小感、抑うつ気分、薬物療法、主治医、公認心理師に面接を依頼、などです。
精神科の主治医と公認心理師が出た時点で、「指示」という言葉は併せて想定しておく必要があります。あとは選択肢の難易度も重要です。何をもって難易度が高いとするかは、知識問題と必ずしも同じではありません。おそらく問題作成者からすると、事例問題の選択肢作成の方が難しいと思います。これが、事例問題の正答率が上がる要因と一つと考えられます。問題作成が難しい時は、元国語講師として言いますが、明らかに間違った選択肢を作らざるを得ない、特に極端な言葉、「絶対」系、「○○だけ」系とかを入れてしまいがちになります。あとは、心理としての常識に反することも想定できます。
この問題の場合、初動として、①は論外、⑤は論外、クライエントがそこに訴えないけど、できない、などと言うならば、話は変わるかもしれませんが、少なくとも希望している旨も情報にありません。②④は越権、労働災害になるかどうかなどこれだけの情報ではわかりません。④はクライエントが希望していないので違います。③が残りますが、自責感、卑小感、このあたりが根拠になりそうです。したがって③になります。
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