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井上博文

大学院・大学編入受験のプロ

井上博文(いのうえひろふみ) / 塾講師

株式会社コムニタス

コラム

臨床心理士と公認心理師の違い

2019年7月12日

テーマ:公認心理師になるには

コラムカテゴリ:出産・子育て・教育

前回も少し触れましたが、最近、公認心理師に対する関心が高まるとともに、様々な見方が生じています。その中には少し誤解も含んでいるのではないのかなと思ってしまうものもあります。特に臨床心理士は大学院資格で、公認心理師は学部卒業で取れる資格だという言説はちょっと注意した方がいいと思います。

この2年、当塾は、公認心理師試験対策に力を注いできましたが、もちろん、臨床心理士指定大学院受験対策にも同様に力を入れています。これから、公認心理師になろうと考える人も、当面は、臨床心理士指定大学院に進むのが、最も合理的な道だと考えられます。つい先日も、10年近く前に心理学の学部を出ている人が、単位の読み替え申請が通って、ようやく気持ちよく大学院を受験できる状態になりました。今は、私たちもそのような作業に、たくさんアドバイスをしているところでもあります。

臨床心理士という資格は、これまで最も格のある心理系の資格でした。これから変わってくるかもしれませんが、それは昨年誕生した公認心理師となった方々のあり方次第だろうと思います。

周知の通り、臨床心理士は資格認定協会が出す民間資格です。現在、35000人を超える臨床心理士がおり、年間の合格率は6割程度です。非常に安定している資格です。ここ15年ほどでは、だいたい2500から2600人が受験して、1500から1600人が合格するという数字が継続しています。ところが、以前も書きましたが、昨年、2214人の受験で1408人が合格しました。これらの数字は、受験者が2000人を超えた平成15年以来、最も少ない数字です。現時点で指定大学院はそこまで減っていません。やめると宣言しても学生が残っている間は、受験者がいるということですから、純粋に受験者と合格者が減っているのです。間違いなく公認心理師の影響があります。

臨床心理士を国家資格にしようとという動きはこれまでにもありました。2005年に医療心理士とのいわゆる二資格一法案で国会を通りかけましたが、最終的には国会が解散するという・・・当時の私たちもひっくり返りました。もう臨床心理士の国家資格は無理かと思っていたところに、臨床心理士とは別の国家資格が創設されるという話が出てきました。当初は公認とはついていない「心理師」という資格を検討しているという話が出ました。しかし、それがどのような経緯を経たかはわかりませんが、突如現れたのが国家資格としての「公認心理師」でした。私が一番最初に公認心理師についてこのコラムで触れたのは2014年5月1日です。ここから徐々に今の公認心理師法までになっていきました。

まず、注目すべきは臨床心理士の方です。臨床心理士は、一般化したのは1995年の阪神大震災以後です。これ以降、スクールカウンセラーとして、一般に浸透した面も大きかったと思います。スクールカウンセラー事業は今も続いておりますが、多くの場合、一ヶ月待ちなどもあるそうで、そろそろ勤務日を増やすなどの措置が必要です。それでも20年を超え、立派な歴史があります。公認心理師のイメージはこの臨床心理士の歴史なくしては語れません。特に養成システムは公認心理師の養成システムに影響を与えつつも、違いの出たところです。
具体的には、臨床心理士は大学院卒が条件ですが、公認心理師は必ずしもそうではありません。また臨床心理士は学部では卒論、大学院では修論があるのが一般的ですが、公認心理師はいずれも不要です。私は公認心理師にとってこの点はあまり望ましいとは思いません。研究は臨床心理士に任せるということでしょうか。いずれ、数は少ないかもしれませんが、Bルートで大学院を出ずに、つまり臨床心理士の資格をもたず、公認心理師のみの資格を取る人も出ると思いますが、少なくとも研究という面においては大きな差がつくと思うのですが、お偉い人々がこれをどう考えているのかは全くわかりません。私が聞き及ぶ範囲では、病院に勤めている人は、公認心理師をとるように言われている人が多いようです。おそらく医療機関では国家資格を持っていると給料に反映することはあり得そうです。また、そのうち採用基準に記載されることが予測されます。その際、臨床心理士はどうなるのかは、不明です。
しかし、現時点では基本的に活躍の場は重なってきます。ここは資格に対する個人の考え方が反映されるところですが、公認心理師を臨床心理士ベースで考えるか、あるいは全く別の資格として使い分けるか、この点がこれからの公認心理師を作っていく上での分かれ目になると見ます。それぞれの考え方と、漠然とした社会の空気が決めていくのだと思います。今、予測できることとしては、以前に公認心理師と臨床心理士は別資格と考えましょうというコラムを書きましたが、基本的には別の資格と考えるのが妥当です。試験問題を見ても、法律を見ても、公認心理師は、カバーすべき幅がより広くなった資格と言えます。
しばらくは、日本臨床心理士資格認定協会も公表した通り、臨床心理士と公認心理師はしばらくは共存共栄関係を目指すのだと思います。このバランスが崩れるときが来るかどうかは不明ですが、はっきり言えば、ほとんどの大学の先生は、崩れると見ています。どう崩れるかはわかりませんが、私もそう思っています。また、臨床心理士は5年ごとの資格更新がありますが、公認心理師はありません。多くの先生方は、公認心理師のレベルについて、疑問があると仰います。臨床心理士の場合、大学院卒という意味での質の担保はありますが、公認心理師は質の担保は試験のみですから、もしかすると、遠からず、ものすごく難しい問題にならざるを得なくなるかもしれません。
以上から、当面は、臨床心理士と公認心理師とのダブルライセンスを保有することが重要だと考えられます。
受験に関する情報がない方は、是非当塾までご相談ください。


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