私立大学は「裏口入学ばかり」ではありません

井上博文

井上博文

テーマ:雑感

裏口入学など特殊事例ですというコラムを少し前に書きましたが、今回の東京医科大学の事例は特殊事例です。すでに理事長と学長が辞任したという報がありましたが、これは単純な問題ではなく、情報が出たことも含めて、政治的な話もあり、かなり複雑な様相を呈しています。いずれにせよ、このようなケースは通常はそう滅多にあることではないのです。「大学入試なんてそんなもん」という言説が流布するのは適切だとは思いません。そう思っているそばから私立大学は「裏口」だらけなる記事を見(てしまい)ました。筆者はまたまたしても池田信夫氏でした。決してこの方の記事を普段から見ているわけではないのですが、「ひどいことを書く人がいるなぁ」と思って作者を見ると、この方の記事に出会ってしまうのです。
この記事はまず

「裏口入学」が贈賄と認定されたら、私立大学は賄賂だらけになる。

という入口から始まります。この段階で池田氏の記事とは気づかなかったのですが、おそらく、賄賂を渡して、一般に多くの人が考えるような裏口入学の事例でも出るのかと思って読み進めようと思いました。ところが、以下、そうではなく、とんでもないことを言い始めます。

「日本のように裏口入学が犯罪扱いされる国は珍しい。図のように私立大学では一般入試は半分以下で、早稲田や慶応でも6割程度だ。半分以上は推薦やAOなどの「裏口」だから、情実入学は日常的に行われている。世界的にも一流大学は有力者や金持ちの子供が寄付金で入学するものというのが常識で、裏口入学は犯罪とは思われていない」

この方特有の決めつけが炸裂していますが、まず前提となる「推薦やAO」は裏口などではありません。入試要項に記載される表の入試です。当たり前のことです。だから、この文章はその時点で前提が崩れています。したがって、世界中で裏口入学が犯罪だと思われていないというのは、そもそも表の入試である以上、当たり前のことです。この方のいう「裏口」というのは、かなり好意的に見て、なにかの比喩なのかもしれませんが、当然、東京医科大学のケースとは根本的に違います。要するにこの方は、東京医科大学と文科省の暗部に切り込むのではなく、これ以下の文章でも主張するように、私学文系はもはや学歴とは言えず、国立は「裏口」が少ないからまだマシと、従来の主張の繰り返しを言いたいようです。こんな間違った理屈で、犯罪行為と正規の入試で入学した人とを、裏口という括りで同じ扱いをする人に、今の大学生を否定される言われはありません。
このような偏見に満ちた思い込みの決めつけで、多くの人を否定するような人にならないように、深くものを考える素養をつけていくのが人文科学の役割です。偏った思考、歪んだ自分だけの正義、多様性を認めない狭量な目線がかつてのオウム真理教を作ったのです。20数年前の若き日、オウム事件を目の当たりにした私たち大人が反省(振り返るという意味で)して、今の若い人々に深くものを考える姿勢を伝えなければなりません。


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