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どっちを切るのか!?!―片方を選ばざるを得ないとすれば・・・・―(後編)

海江田博士

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テーマ:事業承継、後継者問題

今日の目次
後継者の方が圧倒的に不利
だんだん嫌気がさしてくる
人生にも事業にもタイミングが大切
後継者の力量は未知数ではあるが・・
サポートに徹して欲しい

後継者の方が圧倒的に不利

先代経営者と後継者との価値観の違いによるバトル。
このバトルは、大抵の場合、後継者の方が不利になります。いかに時代の価値観が変わったとはいえ、それを理路整然とロジカルに説明することは難しいからです。それは時代を反映した包括的な「雰囲気」みたいなものなので、言葉でうまく説明することは難しいのです。
一方、先代の成功体験は具体的かつ過去の確定事項であります。それなりに自信もあるでしょうから、これを主張するとなると強いものがあります。おまけに、多くの場合、まだ事業の実権やお財布(会計)も握っています。こと経営に関する論争や対立が起こったとき、圧倒的に不利なのは後継者の方なのです。
ただ、この対立が短く終わるときもあります。先代が意外に早く退いたときとか、病気に罹ったり亡くなったときです。その場合、すんなりと後継者に経営権が移りますので、今度は逆にその後継者の力量がリアルに問われることになるのですが。

だんだん嫌気がさしてくる

問題は、この後継者問題が長引いたときです。後継者がまあまあいい年齢に達しているのになかなか事業承継が行なわれない・・・このケースです。
私はいくつかのケースを見てきましたが、ここが長くなって、いつまでも後継者が待たされると、だんだん嫌気がさしてきます。そうなると、たいていの場合、後継者は本業以外のところに目が向くようになるものです。
もうどうでもいいから、ゴルフや酒でも飲みに行って憂さを晴らすか、ということになりかねないのです。(私も一時そうなりかけました。)
それはそれで情けない、と言えなくもないのですが、人間、ネガティブな状態であまり長く待たされると腐ってくるものです。しかも、まだ若い未熟な時期だったらなおさらです。だからといって、これを無視するわけにはいかないから難しいのです。

人生にも事業にもタイミングが大切

さて、ここからがさらに今日の本題であり、結論ということになります。タイトルの「どっちを切るのか!?!」という話になるのです。
先述のように、後継者と目されていてもあまり待たされると、潰れてしまいかねません。そうなると、先代がいよいよ年老いてから、さあどうぞ、となっても、もう事業がうまくいく可能性は低いと言わざるを得ません。人生にも事業にもタイミングが大切なのです。
一方、先代がまだ元気にもかかわらず、心ならずも後継者に事業経営を譲ったとしたらどうだろう?先代に対して「可哀そうに、すっかり弱って、ボケちゃったりするんじゃないの?」という、同情的な意見も考えられますが、まあ私は、現実にはそんなことはないだろうと思っています。
しばらくは呆然としていたとしても、やがて何かしらの楽しみみたいなものは見出すのではないか、と思うのです。というか、そこは自分で考えてもらわなければ仕方がありません。

後継者の力量は未知数ではあるが・・

冷たいことを言うようですが、大事なのは先代の人生よりも、次の時代まで長く続いていくであろう事業の方なのです。ここには、後継者を含めた従業員やその家族など、より多くの人間の人生がかかっているからです。
さてここで、タイトルの「片方を選ぶとすれば・・・」という結論になってきます。まあ何も排除するつもりはないのですが、あえて言わせてもらえば、このバトル、先代の方に引っ込んでもらいたいのです。仮に先代が、現在の力量で事業をしばらく引っ張って行けたとしても、年齢を考えればその年数は限られています。
一方、後継者の力量は、やってみなければわかりません。先代の時代に比べて、経営そのものが難しい時代に入っていますし、その力量はあくまでも未知数なのです。ただ、それでも後継者にかけてみるしかないのではないでしょうか。
先代は少し離れたところから、ピンチを迎えたときだけサポートできるポジションを取っていて欲しい、というのが私の考えです。つまり、後継者がいる場合の「後継者問題」に関する私の結論は、上記のようにはっきりしています。先代は、自分の都合で引き継ぐタイミングをあまり引っ張らないで欲しい、ということなのです。

サポートに徹して欲しい

そのためには、先代は世の中をきちんとウォッチングしていてもらいたい、と思います。そこで「ああ、これには自分はついて行けないな。何がなにやらさっぱりわからんわ。」という現象がしばしば見られるようになったならば、引き時を考えるべきだと思います。
そういった現象と自分が経営している事業を結びつけるイマジネーションこそが大事なのですが、そのイマジネーションが湧かなくなったら引き時だと考えます。そこを見誤ってしまうと、せっかくの事業が大きく時代に後れを取ることになりかねません。
一方、その辺の時代感覚は、後継者の世代は、ほぼ間違いなく持っています。足りないのは経験だけなのです。そこは先代が補ってあげればいいのです。
後継者がいる場合、事業が時代に合う形でうまく継続できるかどうかは、その引継ぎのタイミング、腹の決め方にかかっていると思います。そして、そのキャスティングボードを握っているのはあくまでも先代なのです。
タイトルでは「どちらかを選ぶとすれば・・」みたいな書き方をしましたが、要は手掛けている事業がいい形で長く続いていけばいいだけの話です。そのためには、後継者が無事にテイクオフできるように、最大限サポートに徹するのが先代の役割ではないでしょうか。



次世代への事業承継、なかなか難しい


おしまい

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海江田博士
専門家

海江田博士(税理士)

税理士法人アリエス

税務相談はもちろんのこと、従来の税理士としての職務に留まらず経営者自身で革新できることを目指した支援を続けています。日本経済をしっかりと支えられる強い基盤を持った中小企業への第一歩のお手伝いをします。

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