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海江田博士プロは鹿児島読売テレビが厳正なる審査をした登録専門家です

「100円のコーラを1000円で売る方法」から読み取るマーケティング理論―中小企業の現状は?―

テーマ:マーケティング

マーケティング用語は数あれど・・

何年か前のことですが「100円のコーラを1000円で売る方法」という本を読んだことがあります。かなりヒットした本と聞いていました。本の内容は、ある企業の商品開発部に所属するメンバー達のやり取りを通じてマーケティング理論を分かり易く解説したものでした。

内容は小説仕立てでビジネスにおけるマーケティングの組み込み方がストーリーを追って理解できるよう書かれていました。

私は、こういった現代マーケティングの理論体系を一通り解説した本を読むのは久しぶりでしたが、初めて聞くような新しい切り口、新しい用語などもいろいろと出てくるので興味深かったことを覚えています。

バリュープロポジション、バリューセリング、プロダクトセリング、カスタマーマイオピア、ブルーオーシャン戦略、イノベーター理論、キャズム理論、といった横文字がこれでもか、これでもかというほど登場します。ま、もちろんそれぞれ取り上げるからにはそれなりの理由のある言葉なので、その意味するところ、内容については勉強になりました。



中小企業には無理筋のプロセス

ただ、ここに書かれている内容は、取り上げられているサンプルの大手企業やそのライバル企業がすべて一定の「マーケティング的な手順」を踏んだ上での話なので、その前提がなければ成立しないものでした。

その手順というのは、市場調査を行ない、商品企画をし、販売戦略をたて、販売促進計画を練り、営業に落とし込む、といったプロセスを踏んでいくことだったのです。それぞれのテーマで、専門のスタッフが課題に取り組みケンケンガクガクの議論を行なう場面が出てきます。

「100円の・・・」においてその各部分は、デフォルメされて書かれているので面白い読み物になっています。分かりやすさを優先させているために途中の細かいところはかなり大雑把に見えました。それは、別にかまわないと思います。

ひとつの読み物ですから、読み易さ、分かり易さに配慮すればこういった書き方になるのでしょう。ただ私には、この本について最初からなにか引っかかるところがありました。

それは、ここに書かれているマーケティングにおけるいずれのプロセスも企業活動においては必要なことではあるが、こういったプロセスそのものを、ほとんどの中小企業は踏襲することはできないだろう、ということでした。



「マーケティング」という概念そのものが希薄

つまり、本文中には「リサーチの結果を受けて商品開発の会議が行なわれた。」などと、サラリと書かれており、実際そう言った場面が度々登場します。

しかし、現実の中小企業では、その当り前のように書かれているリサーチを行なうのかどうか、商品開発を社内で会議にかけて検討するのかどうか、といった業務そのものが問題になるのです。

多くの中小企業にとっては、リサーチを行なう費用もなければ、会議を開くノウハウもない、というのが現状ではないでしょうか。そもそもどうしてそんなことをしなければならないのか、さえ理解されていない場合が多いのです。

長い間「プロダクトアウト」つまり「こっちが提供するものを黙って買っていればいいんだ。」という意識でやってきた中小企業側には「マーケティング」という概念が希薄である・・・というところから中小企業のマーケティングは始めなければならないのです。

多くのマーケティング本は、大企業の企業内事情を前提に書かれており、中小企業の現状とはかなりかけ離れたものになっている、と私が感じる所以(ゆえん)なのです。


中小企業ではおよそ役に立たないノウハウ

マーケティングに関する数々の著作は、大企業の企業内事情を前提に書かれています。これらの書籍を読みながら、私がずっと疑問に感じていたのはこの点でした。

やる気満々で待ち構えている営業部隊に対して、周到なリサーチに基づいた販売促進企画まできっちり組み込まれた新製品を市場に送り込む、といった手順が組めるのは、そういう部署がしっかりと組織作られている大手企業だけです。こういうかっちりとした仕組みなど中小企業には望むべくもありません。

したがって、そのこと(立派な業務プロセス)を前提に書かれたマーケティング本など、中小企業ではおよそ役に立たない、と私は思っています。中小企業にはその立場をよくわきまえたマーケティングの解説が必要なのです。

私は常にその意識を持っていましたので、例えばこのコラムにしてもセミナー資料にしても、常に中小企業を念頭に置いたマーケティング的プロセスを心掛けてきました。そうやって書き溜めた原稿やレジュメは今や相当な分量にのぼっています。



マーケティングなんて大企業特有のものじゃないの?

とりあえず中小企業の場合、「そもそもマーケティングとは、これこれこういうプロセスを踏んで考えていくものなんですよ。」ということを、まず心得てもらわなければなりません。まずはそのレベルなのです。

そういった勉強に際しては、この「100円のコーラを1000円で売る方法」に登場するような大企業をサンプルにしてもかまわないと思います。

しかし、繰り返し述べているように、大企業で行なわれているマーケティング手法を中小企業向けに置き換えて直接解説した論説にはいまだお目にかかったことがありません。つまり、中小企業との接点を親切に意識した解説本などあまり見たことがないのです。

そうなると、そういう点を自ら学習し実践している中小企業など実際には非常に少ないと言わざるを得ません。結果として「マーケティングなどというのは大企業特有の手法だろう。」という考え方になってしまうのです。



マーケティングはすべての企業に必要不可欠な要素

おそらくほとんどの中小企業において、マーケティングを充分に意識した事業計画の策定などは行なわれていないと思います。マーケティングは、端的に言えば、より高い売上を取りに行く方法論です。特に今の時代、どちらかといえば経費の削減を中心とした事業計画、或いは経営計画が多いのではないでしょうか。

ということは逆にマーケティングを意識した事業計画の策定にあえてチャレンジするのは効果的かも知れません。マーケティングを基本に行動計画まで立てられれば、そう言ったことに取り組んでいる企業が少ないだけに、ちょっとした試みでも差別化は図れるかも知れないと思います。

そのためにはともかくマーケティングに対する基本的な理解を深める必要があります。「100円のコーラを1000円で売る方法」などはその点面白い読み物ですが、やはり応用編であることに変わりはありません。

繰り返しになりますが、多くの中小企業の場合、まずは「マーケティングが必要なんだよ。」ということを理解してもらわなければなりません。
そう考えて、私が執筆したのが「小さな会社のマーケティング活用術」です。
ここでは、私が実践してきた掴んだ中小企業向きのマーケティングに関してわかりやすく書いたつもりです。
中小企業の場合こういうレベルから学習して、マーケティングに関する考え方だけでもまず身につけていく、ということが大切であろうと思います。


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海江田博士
専門家

海江田博士(税理士)

税理士法人アリエス

税務相談はもちろんのこと、従来の税理士としての職務に留まらず経営者自身で革新できることを目指した支援を続けています。日本経済をしっかりと支えられる強い基盤を持った中小企業への第一歩のお手伝いをします。

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