販売促進について考える―まだまだ手薄な地方企業における販売促進戦略事情―Ⅳ
基本は「商品力」
マーケティングにおける重要な切り口のひとつに「ブランディング」というテーマがあります。これには、マーケティングの中でもそれを得意とする専門家がおり、コンサルティングなどもよく行なわれているようです。また、関連書籍も多数出版されているので、勉強された方も多いことでしょう。この「ブランディング」について、世の中で提供されているそのような一般論ではなく、私なりに考えてみたいと思います。
その基本となるのは、何といっても自社が提供する商品にどれだけ力量があるのか、ということではないでしょうか。ベースとなる商品力が優れていなければ、「ブランド」を宣言することもできないでしょうし、世の中に認知されることもありません。
しかしながら、世の中には単に「商品力」の優れたものは、いくらでも存在します。特に日本の場合、そういった商品が多いと言われています。商品力が優れているだけで、ブランドとして認知されることは難しいのです。
想定される経営面での苦戦
それでは、多くの優れた商品がある中で、ブランドとして認知されるには何が必要なのでしょうか。その一つが「希少性」と言われています。優れた商品であり、かつ「なかなか手に入らない」というのは、ブランド品としての魅力に拍車をかけます。ただ、人々がその「希少性」に気がつき、高い評価を下すのは、むしろブランド品となってからの話であって、その前の段階ではそもそも世間に知られていないので、希少性もなにもないわけです。
「希少性」というのは、高い品質を保ちながら商品提供を続けていれば、もともとそんなやり方では大量生産が不可能なため、自然にそうなっていくものとも言えます。とはいえ、ここで難しいのは、そのプロセスでは利益が出しにくく、苦しい経営が続くということです。高品質の商品を提供する多くの人がこのブランド化を目指すのですが、経営面での苦戦を避けるのは容易なことではありません。(*1)
このようにブランド化というのは、そう願ったとしてもその実現は難しく、ほとんどの場合途中で挫折してしまうのです。それでも何とかしてブランドへの道を追及することはできないものでしょうか。
ブランド化に必要なストーリー
ブランドのもう一つの重要な要素に、そのブランドの持つ「ストーリー」ということがよく言われます。世界のブランドである、フェラーリやエルメス、ルイヴィトンなどいずれをとっても、その背景には人々を魅了する様々なエピソードを持っています。(*2)そういったストーリーの一つ一つがブランドしての価値をさらに高め、人々の羨望を集めることになるのです。
私は、このブランドの持つ「ストーリーをアピールする」という特徴を、私の顧客のブランド化に使えないものかと考えました。そして、たどり着いた方法論のひとつが、これまでお勧めしてきた「経営者による情報発信」なのです。この方法論は、自社の持つ有形無形の様々な企業資産をコンテンツ化して「言葉」を通して情報発信していきましょう、というものです。
ブランディングは「情報発信(アウトプット)」から
その企業の持つストーリーを発信していくという点では、すでにブランド化している企業とやることは変わりません。違うのは、ブランド企業が莫大なおカネをかけてイメージ戦略を構築し、それをまた莫大な費用をかけて広告宣伝に乗せているという点だけです。こちらはそんなお金はかけられませんので、SNSや地方メディアなど、低いコストで発信可能な媒体を利用して情報提供していこうというのです。
向こうは世界、こちらは日本のいち地方という規模の違いこそありますが、やっていることは極めて類似しているといえるのではないでしょうか。このような方法で、自社の持つストーリーを丁寧に発信していけば、そんな試みをやっている企業は極めて少ないので、それだけでブランド化への道のりを追求することになるのです。
「情報発信(アウトプット)」と「ブランディング」・・・一見何の関係もありそうにないこの二つの言葉ですが、自社の提供していく商品に自信があるのであれば、この二つは密接な関連性を持ってその構築(ブランド化)に貢献するのです。
(*1)近年では「リシャール・ミル」という成功事例がありますが・・
(*2)例えば、フェラーリでは、限定記念車販売の際に世界からの希望台数マイナス1台までしか作らない。(300台であれば299台)
また、遭難した船からルイヴィトンの旅行鞄を引き揚げたら、中の衣類が全く濡れてなかった。といったエピソード。
鹿児島黒牛は立派なブランド品でございます。
PS
いつも読んでいただき、ありがとうございます。
上記の通り、いささかユニークな税理士です。
この業界人特有の硬さはみじんもありません。
私と話すと面白い、という方がたくさんいらっしゃいます。
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是非一度お話の機会を・・・・・