「妊娠した」「病気になった」と請求されたら|妊娠詐欺・示談金詐欺の見極め方
本記事は、風俗店の利用後に、キャストや店から妊娠や性感染症を理由として金銭を求められた方に向けて、ご自身で相手に連絡する前に確かめておきたい点をまとめたものです。2026年11月時点の法令と実務に基づく一般的な説明であり、個別の事情によって取るべき対応は変わります。
風俗店を利用した後、しばらくしてからキャスト本人や店から「妊娠した」「性病をうつされた」と連絡が来て、中絶費用や検査費用、休業の補償などを求められることがあります。心当たりがある場合もない場合も、突然の連絡に動揺し、早く終わらせたい一心でその日のうちに支払ってしまう方は少なくありません。
しかし、この種の請求は、妊娠や感染の事実そのもの、時期の整合性、自分との因果関係、請求額の内訳など、確かめるべき点が多く残ったまま進みやすいという特徴があります。弁護士ドットコムに寄せられている相談を見ても、中絶費用と休業補償を支払って「これで終わり」と言われた後に入院費を求められた、事実を確かめないまま勤務先への連絡をきっかけに支払い、その後さらに高額な要求を受けた、といった経過が目立ちます。
この記事では、自分で返信や支払いをする前に確認しておきたい7つの項目と、弁護士への相談に切り替える目安を整理します。
妊娠・性病を理由とする請求に共通する特徴
妊娠や性感染症を理由とする請求は、ほかの風俗トラブルと比べて、請求する側にとっても請求される側にとっても事実の確認が難しいという点に特徴があります。
妊娠であれば、本当に妊娠しているのか、利用日と妊娠の時期が合うのか、自分以外の相手の可能性はないのか、といった点が問題になります。性感染症であれば、感染の有無と時期、ほかの感染経路が考えられないか、利用時の行為の内容から感染しうるのか、といった点が問題になります。いずれも医療情報やプライバシーにかかわるため、相手が資料を出したがらない一方で、こちらから確かめる手段も限られます。
こうした事情から、請求の根拠がはっきりしないまま、金額だけが先に示されることが多くなります。争点ごとの法的な整理は、避妊の有無が争点になる場面|感染・妊娠の主張と請求で詳しく扱っています。
自分で動く前に確認したい7項目
以下の7項目は、相手に返信する前、支払う前に、手元のメモに書き出しておきたいものです。分からない項目があること自体も、判断の材料になります。
誰が、どの経路で請求しているか
まず、請求しているのがキャスト本人なのか、店の担当者なのか、あるいはキャストの交際相手や知人を名乗る人物なのかを確かめます。あわせて、連絡が店の電話番号から来たのか、個人のLINEやSMSなのか、勤務先への電話なのかといった経路も記録しておきます。
キャスト本人以外が交渉に出てくる場合、その人物に話をまとめる権限があるのか、支払ったお金がキャスト本人に届くのかがはっきりしないことがあります。反対に、店を通さずキャスト個人から連絡が来ている場合は、後から店が別に請求してくる可能性も考えておく必要があります。誰と合意すれば話が終わるのかを見極めることが、最初の確認事項になります。
主張の内容と時期がかみ合っているか
利用した日、そのときの行為の内容(避妊具を使用していたか、挿入を伴う行為があったか)、連絡が来た日を時系列で並べます。
一般に、市販の妊娠検査薬で判定ができるのは性行為からある程度の日数が経ってからとされています。利用から数日で「妊娠した」と告げられた場合は、主張の内容と経過が合っているかを慎重に見る必要があります。性感染症も疾患によって潜伏期間が異なり、症状が出た時期や検査を受けた時期と利用日の関係が、因果関係を考える手がかりになります。
避妊具を使用していた、そもそも挿入を伴う行為はなかったなど、相手の主張の前提と自分の認識が違う点があれば、具体的に書き出しておきます。
根拠となる資料が示されているか
妊娠であれば医療機関の診断書や受診の記録、中絶であれば手術の領収書や明細、性感染症であれば検査結果や診断書が、請求の根拠となる資料です。実際には、画面越しに一瞬見せられただけ、写しはもらえなかった、という例も少なくありません。資料の有無と、どのような形で示されたかを記録しておきます。
なお、資料が本物であっても、それだけで自分との因果関係まで裏付けられるわけではありません。性感染症を理由とする請求の場合は、自分自身も医療機関で検査を受けておくと、健康面の安心だけでなく、その結果が後の話し合いで意味を持つことがあります。診断書の読み方については、【風俗トラブル】キャストの診断書を見せられた|怪我や体調不良を理由にした請求、感染の主張への向き合い方については【風俗トラブル】性病をうつしたと言われた|検査結果の扱いと請求への向き合い方もご参照ください。
請求額の内訳と、費目ごとの性質
「全部で○○万円」と総額だけを示される場合は、何にいくらを求めているのかを確かめます。費目によって、認められやすさや確認すべき点が異なるためです。
| 費目 | 一般的な考え方 | 確認したい点 |
|---|---|---|
| 中絶費用 | 合意のうえの性交渉による妊娠であれば、当事者で分担するという考え方がとられることが多い | 手術の時期、領収書や明細の有無 |
| 検査費・治療費 | 実際にかかった費用であることと、自分との因果関係が前提になる | 検査結果、診療明細 |
| 休業の補償 | 休んだ期間と、それによって減った収入を示す資料が必要になる | 休業の期間、金額の算定の根拠 |
| 慰謝料 | 合意のうえの行為であれば直ちに認められるものではなく、同意のない行為や避妊についての偽りなど、個別の事情が問われる | 主張されている具体的な事情 |
| 罰金・違約金 | 店の規約に基づくと言われても、そのまま有効になるとは限らない | 規約の内容、利用前の説明の有無 |
費目ごとの検討は、治療費・検査費・休業損害は認められるのか|請求項目別の検討で詳しく解説しています。
すでに払ったもの・渡したもの・署名したもの
その場で支払ったお金、預けたり撮影されたりした身分証、書かされた誓約書や念書、「妊娠したら責任を取る」といった一筆など、すでに相手の手元にあるものを書き出します。一度支払ったときに相手が「これで終わり」と言ったかどうか、それが書面に残っているかどうかも重要です。
中絶同意書への署名を求められることもあります。母体保護法が人工妊娠中絶について同意を求めているのは本人と配偶者で、婚姻関係にない相手の同意は法律上の要件とはされていません。医療機関の運用として署名を求められる場面はありますが、署名した書面が、後の話し合いで「父親であることを認めた」材料として扱われるおそれもあります。署名する前に、その書面の内容と意味を確かめておくことが大切です。
すでに支払ってしまった場合の考え方は、払ってしまった後に取り戻せるか|恐喝・強迫を理由とする返還で整理しています。
家族・職場・警察への言及があるか
「払わなければ家族に伝える」「会社に連絡する」といった言葉が添えられていないかを確認します。妊娠や感染による実際の費用を求めること自体は正当な権利行使になりうるとしても、家族や勤務先に知らせると告げて支払いを迫る方法は、伝え方によっては恐喝に当たる可能性があります。
また、「警察に行く」「同意はなかった」と言われている場合は、民事の金銭の問題に加えて、刑事手続の見通しを考える必要が出てきます。いずれの場合も、相手の言葉は要約せず、スクリーンショットや着信履歴、メモでそのまま残しておきます。請求が正当な範囲を超える境目については、店の請求が恐喝に変わる線引き|正当な権利行使との境界をご覧ください。
期限や面談を急がされていないか
「今日中に振り込んでほしい」「手術の日が迫っている」「店に来て話をしてほしい」など、期限や面談を急がされていないかを確かめます。期限が迫ると、ここまでの確認を飛ばして支払ってしまいがちです。
一人で店や指定された場所に出向くと、その場で新たな書面への署名を求められることもあります。期限を区切られても、確認に必要な時間がほしいと伝えることはできます。
自分で連絡する場合に避けたいこと
ご自身で相手とやり取りを続ける場合でも、次のような対応は後の話し合いを難しくするおそれがあります。
- 資料を確認しないまま、求められた全額をその場で振り込むこと。
- 「自分の子だと思う」「うつしたのは自分だと思う」など、事実を認める内容をメッセージで送ること。
- 感情的な言葉や、相手を責める内容を送ること。
- 一人で店や指定された場所に出向くこと。
- 内容をよく読まずに誓約書や念書、同意書に署名すること。
- 受け取りの記録や、これで終わりとする約束がないまま支払いを済ませること。
支払いに応じる場合でも、金額と内訳、これ以上の請求をしないこと(清算条項)を書面に残し、受け取りの記録を手元に置いておくことが大切です。書面に入れておきたい条項は風俗トラブルの示談書に必ず入れる6条項|抜けると後で効かない、受け取りの記録の作り方は【風俗トラブル】示談金の領収書・受領書をどう作るか|後日の否認に備えるで解説しています。
弁護士への相談に切り替える目安
次のような状況に当てはまる場合は、ご自身でのやり取りを続ける前に、弁護士への相談を検討する意味が大きくなります。
| 状況 | 相談を検討したい理由 |
|---|---|
| 一度支払った後に、追加の請求が来た | 話の終わりの線が引けておらず、請求が続くおそれがある |
| 資料を求めても出てこない、写しをもらえない | 主張の真偽を確かめられないまま、金額だけが動いている |
| 家族や職場への連絡をほのめかされた | 請求の方法そのものに問題がある可能性があり、窓口を代える意味が大きい |
| 「同意がなかった」「警察に行く」と言われた | 民事の請求に加えて、刑事手続の見通しを考える必要がある |
| 請求額が高額、または連絡のたびに増えていく | 費目と金額の根拠を一つずつ確かめる必要がある |
| キャスト本人以外の人物が交渉に出てきた | 誰と合意すれば話が終わるのかを整理する必要がある |
| 相手が出産を考えていると伝えてきた | 認知や養育費など、長い期間にわたる問題を含むことになる |
どれにも当てはまらない場合でも、確認の結果、分からない項目が多く残るようであれば、相談を検討してよい段階です。自分で交渉するか弁護士に任せるかの分かれ目については、【風俗トラブル】店との交渉を自分でするか弁護士に任せるか|分かれ目になる5つの事情もあわせてご覧ください。すでに自分で相手に連絡してしまっている場合でも、そこから方針を立て直すことはできます。
弁護士に依頼した場合に変わること
弁護士にご依頼いただいた場合、相手との連絡の窓口は弁護士に一本化され、ご本人が直接やり取りをする必要はなくなります。そのうえで、診断書や領収書などの資料の提示を求め、主張されている事実と時期、請求額の内訳を一つずつ確かめていきます。
話し合いがまとまる場合は、合意の当事者を明確にし、清算条項や接触をしない旨の条項などを入れた合意書を作成します。結果は事実関係や相手の対応によって変わりますが、確認と交渉をご本人から切り離すことで、焦って支払う状況を避けやすくなります。
まとめ
- 請求しているのが誰で、どの経路で連絡が来ているかを最初に確かめます。
- 主張されている妊娠や感染の時期が、利用日や行為の内容とかみ合っているかを見ます。
- 診断書や領収書などの資料と、請求額の内訳を確認してから判断します。
- すでに支払ったものや署名した書面は、後の話し合いに影響するため整理しておきます。
- 家族や職場への連絡をほのめかされた場合や、追加の請求が続く場合は、早めに弁護士への相談を検討します。
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妊娠や性感染症を理由とする請求は、事実の確認が難しいぶん、焦って対応すると後から見直すことが難しくなりがちです。相手に返信や支払いをする前に、ここで挙げた7つの項目を手元で整理しておくだけでも、取れる選択肢は変わってきます。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
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