【風俗トラブル】妊娠・性病を理由とする請求|弁護士に相談する前のチェックリスト12項目

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

妊娠や性病への感染を理由に、風俗店のキャストや店から金銭を求められたとき、多くの方がまず抱えるのは「本当に自分が原因なのか」「いくら払えば終わるのか」という不安です。この種の請求では、事実を確かめるための資料が相手の手元にあることが多く、ご相談の時点では判断材料がそろっていないことも少なくありません。

 この記事では、弁護士に相談する前に整理しておくと話が進めやすくなる12の項目を、チェックリストの形でまとめました。すべてがそろっていなくても相談はできます。分かる範囲で書き出しておくだけでも、取れる手段を早い段階で見通しやすくなります。

この記事は、2023年7月施行の刑法改正(不同意性交等罪の新設など)を反映した内容です。結論は個別の事情によって変わるため、具体的な対応は弁護士にご相談ください。


妊娠・性病を理由とする請求で整理が必要になる理由

 妊娠や性病を理由とする請求には、ほかの風俗トラブルと比べていくつかの特徴があります。

  • 妊娠や感染の時期には幅があり、原因が利用者のうちの一人に絞れるとは限りません。
  • 診断書や検査結果は相手の医療情報で、どこまで見せるかは相手が決めることになります。
  • 中絶には時期の制限があるため、「手術日が迫っている」と期限を区切られやすい面があります。
  • 本番行為の有無や避妊具の使用、同意の有無といった別の主張が重なりやすくなります。


 中絶費用の負担については、性行為の当事者双方が不利益を公平に分担すべきだとする考え方を示した裁判例があり、一定の負担が問題になる場面はあります。また、相手からの話し合いの求めに一切応じないことが、かえって不利に働くこともあります。

 一方で、相手が示した金額や内訳がそのまま認められるとは限りません。休業補償や慰謝料が上乗せされている場合には、項目ごとに根拠を分けて確かめる必要があります。払うべきものと、確かめるべきものを切り分けるために、事実の整理が出発点になります。

相談前チェックリスト12項目の一覧

 まず全体を一覧で示します。各項目の確かめ方は、この後の見出しで順に説明します。

項目確かめる内容
項目1請求してきたのは誰か
項目2請求の金額と内訳
項目3支払いの期限と、請求に添えられた言葉
項目4利用した日時・店舗・利用回数
項目5行為の内容と避妊具の使用
項目6相手が示した根拠資料と、その日付
項目7妊娠の場合の週数と相手の意向
項目8性病の場合の病名・検査日と自分の検査
項目9すでに支払ったお金・署名した書面・預けた物
項目10相手に知られている個人情報
項目11自分が送ったメッセージ
項目12どのような解決を望むか


請求の相手と中身を確かめる

 最初に、誰が、何を、いつまでに求めているのかを整理します。

項目1 請求してきたのは誰か

 請求の主体は、キャスト本人、店の担当者、キャストの交際相手や知人を名乗る人物、相手方の代理人弁護士など、事案によってさまざまです。誰が窓口なのかによって、交渉の進め方や、合意した内容が誰に対して効力をもつかが変わります。

 キャスト本人とだけ話をまとめたのに、後から店や別の人物が請求してくるという流れもあり得ます。名乗った名前、肩書き、連絡に使われた手段(電話・SMS・LINE・SNSなど)を書き出しておきましょう。店を通さない連絡については【風俗トラブル】キャスト本人から個人のLINEで連絡が来た|店を通さない請求の扱いでも整理しています。

項目2 請求の金額と内訳

 妊娠を理由とする請求では中絶費用、前後の通院費や検査費、休業補償、慰謝料などが、性病を理由とする請求では治療費、検査費、休業補償、慰謝料などが挙げられることが多いようです。

 相手が告げた金額を、言われたとおりの言葉で書き留めておきます。総額だけを示されている場合は、その旨をメモしておけば足ります。実際にかかった費用と、損害として主張されているものとでは、確かめる根拠が異なるためです。項目ごとの考え方は治療費・検査費・休業損害は認められるのか|請求項目別の検討で解説しています。

項目3 支払いの期限と、請求に添えられた言葉

 「◯日までに振り込んでほしい」「手術日が決まっている」といった期限の示し方と、「家族に知らせる」「職場に連絡する」「警察に行く」といった言葉が添えられているかを確かめます。

 添えられた言葉は、できるだけ原文のまま残してください。法的な手続を取る意向を伝えることと、相手を怖がらせて支払わせようとすることとでは、意味合いが大きく異なります。その区別はご自身で判断せず、記録をもとに弁護士と確かめるほうが安全です。

利用時の事実関係を整理する

 次に、相手の主張と照らし合わせるための、ご自身の側の事実をまとめます。

項目4 利用した日時・店舗・利用回数

 利用した日時、店名、コース、利用した場所(店舗・ホテル・自宅)、同じキャストを何回、どの期間に利用したかを書き出します。予約のメール、決済の記録、ホテルの領収書などが残っていれば手元に集めておきましょう。

 妊娠の週数や、病気ごとに異なる潜伏期間と照らし合わせるとき、この日付が基準になります。記憶があいまいな部分は「おそらく」「はっきりしない」と書き添えておけば十分です。

項目5 行為の内容と避妊具の使用

 本番行為があったかどうか、避妊具を使っていたか、途中で外れたことはないか、誰の申し出でそうなったか、同意についてどのようなやり取りがあったかを整理します。

 弁護士には守秘義務があります。ご自身に不利だと感じる事実も含めて正確に伝えていただくことで、見通しの精度が上がります。本番行為そのものについて、売春防止法には客を処罰する規定はありません。ただし、「同意がなかった」と主張されると、不同意性交等罪(刑法177条)が問題になる余地が生じます。争点になりやすい場面は避妊の有無が争点になる場面|感染・妊娠の主張と請求でも取り上げています。

相手が示した根拠資料を確かめる

 妊娠・性病を理由とする請求では、根拠となる資料の中身と日付が特に重要になります。

項目6 相手が示した根拠資料と、その日付

 妊娠検査薬の画像、診断書、エコー写真、性病の検査結果票、医療機関の領収書や見積書など、相手から示された資料を一覧にします。それぞれについて、いつ、どの医療機関で作られたものか、画像だけを見せられたのか書面で受け取ったのかを記録しておきます。

 資料の提示を強く迫ると、話し合いがこじれることがあります。どの資料を、どのような形で求めるかは、弁護士を通じて整えるほうが進めやすいでしょう。資料の読み方は【風俗トラブル】キャストの診断書を見せられた|怪我や体調不良を理由にした請求も参考になります。

項目7 妊娠の場合の週数と相手の意向

 相手から伝えられた妊娠の週数や出産予定日、中絶を考えているのか出産を考えているのか、手術日がすでに決まっているのかを書き留めます。

 母体保護法上の人工妊娠中絶は、現在は妊娠22週未満に限られています。同法の同意は「配偶者」のものとされており、結婚していない相手の男性の同意は法律上の要件ではないと解されていますが、医療機関から署名を求められることもあります。出産する場合には、認知や養育費が別の問題として生じ、相手が認知を求めて裁判所の手続(民法787条)を取ることも考えられます。自分の子かどうかに疑問がある場合の考え方は風俗・パパ活相手から妊娠を理由に金銭請求された|認知・養育費の考え方で解説しています。

項目8 性病の場合の病名・検査日と自分の検査

 相手から伝えられた病名、検査を受けた日や診断を受けた日、症状が出た時期を記録します。あわせて、ご自身が検査を受けたかどうか、受けた場合はその日付と結果も整理しておきましょう。

 潜伏期間は病気によって異なり、相手の感染経路が一つとは限りません。ご自身の結果が陰性であれば判断材料の一つになりますし、陽性であっても、それだけで相手への感染の原因が自分だと決まるわけではありません。ご自身の健康のためにも、早めに医療機関で検査を受けておくことをおすすめします。検査結果の扱いは【風俗トラブル】性病をうつしたと言われた|検査結果の扱いと請求への向き合い方で詳しく触れています。

ご自身の側で起きていることを整理する

 すでに取った行動や、相手の手元にある情報も、対応を考えるうえで欠かせない材料です。

項目9 すでに支払ったお金・署名した書面・預けた物

 支払った金額と日付、振込先、領収書の有無を確かめます。誓約書、念書、借用書などに署名している場合は、その写しや写真があるかどうかも重要です。身分証を撮影された、預けたといった事情があれば、それも書き出しておきます。

 一度支払った後に、入院費や追加の治療費として別の請求が届くことがあります。最初の支払いの際にどのような約束を交わしたかによって、追加請求への向き合い方が変わります。書面に入れておくべき内容は風俗トラブルの示談書に必ず入れる6条項|抜けると後で効かないで整理しています。

項目10 相手に知られている個人情報

 本名、電話番号、住所、勤務先、家族構成、SNSのアカウントなど、相手がどの情報を把握しているかを、分かる範囲で書き出します。どの経路で知られたのか(予約時の登録、会話の中で話した、身分証を見せたなど)も添えておくと、情報の広がりを見積もりやすくなります。

項目11 自分が送ったメッセージ

 「責任を取る」「費用は全部払う」といった約束や、妊娠・感染を認めるように読める言葉を送っていないかを確かめます。不安から送った言葉でも、後で合意や事実の承認として扱われることがあります。

 送ったメッセージは削除せず、日時が分かる形で画面を保存しておいてください。やり取りを消してしまうと、経緯が分からなくなり、ご自身に有利な事情まで示せなくなるおそれがあります。

どのような解決を望むかを決めておく


項目12 どのような解決を望むか

 「家族や職場に知られずに終えたい」「できるだけ早く区切りをつけたい」「金額を抑えたい」「事実関係を争いたい」など、ご自身が何を優先したいかを書き出します。出産の可能性がある場合は、子との関わり方についての考えも整理しておくとよいでしょう。

 これらの希望は、ときに両立しないことがあります。たとえば、事実関係を細かく争うほど解決までの時間は長くなりがちです。優先順位がはっきりしていれば、弁護士もそれに沿った選択肢を示しやすくなります。

相談までの間に避けたいこと

 チェックリストを整理している間も、相手からの連絡は続くかもしれません。次のような行動は、後の交渉を難しくすることがあります。

  • 内訳や根拠を確かめないまま、求められた金額を支払うこと。
  • その場の求めに応じて、誓約書・念書・借用書に署名すること。
  • 妊娠や感染を認める内容、または相手を強く責める内容のメッセージを送ること。
  • 相手とのやり取りや自分が送ったメッセージを削除すること。
  • 店や相手の指定する場所に出向き、一人で話し合いに応じること。


 返事をせざるを得ない場合は、「弁護士に相談したうえで改めて連絡します」といった短い返答にとどめるのが一つの方法です。連絡を一方的に断つのではなく、窓口を整えてから話し合うという姿勢を示すことが、結果として早い解決につながることがあります。

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 妊娠や性病を理由とする請求は、相手の体調や将来にかかわる話でもあるため、ご自身の不安だけで動くと、かえって話がこじれることがあります。この記事の12項目は、すべて埋まっていなくてもかまいません。分かっていることと分からないことを分けておくだけで、相談の場で次に何を確かめるべきかが見えやすくなります。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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