【風俗トラブル】配偶者が店に直接連絡してしまった|交渉の窓口を整え直す
風俗店を利用した後、「本番行為をした」として店から罰金や示談金を求められるというご相談は、当事務所にも寄せられています。その場で金額を告げられ、身分証を撮影され、書面への署名を求められると、冷静に判断する余裕はなかなか持てないものです。
この記事では、本番行為を理由とする店からの金銭請求について、弁護士に相談する前に確かめておきたい事柄を8つのチェック項目に整理しました。すべてが揃っていなくてもご相談はできますが、手元の情報を整理しておくと、見通しを立てやすくなります。
本記事は2026年11月時点の法令に基づいて作成しています。売春防止法については、買う側の勧誘行為などを規制の対象に加える方向で見直しの議論が進められていますが、執筆時点では改正法は成立していません。今後の改正の内容によっては、記載の一部が変わる可能性があります。
本番行為を理由とする請求には、性質の違う3つの問題が含まれている
本番行為をめぐる請求では、店から示される金額の中に、性質の異なる問題がまとめて含まれていることがよくあります。チェック項目に入る前に、全体を3つに分けて捉えておくと整理しやすくなります。
| 問題の種類 | 主な相手 | 考える内容 |
|---|---|---|
| 店との間の問題 | 店舗・運営者 | 規約違反を理由とする罰金・違約金・迷惑料に、支払う根拠があるか |
| キャスト本人との間の問題 | 行為の相手となったキャスト | 同意の有無をめぐる事実関係と、損害賠償や示談の要否 |
| 刑事手続の問題 | 警察・検察 | 不同意性交等罪などの犯罪にあたるか、被害届が出ているか |
まず押さえておきたいのは、売春防止法には売春の相手方となった客を処罰する規定がないという点です(2026年11月時点)。そのため、同意のうえで本番行為に至ったというだけで、客が直ちに刑事責任を問われるわけではありません。一方で、相手が拒んでいたのに行為に及んだ場合などは、不同意性交等罪(刑法177条)に問われる可能性があり、法定刑は5年以上の有期拘禁刑と重く定められています。
また、私人である店が「罰金」を科すことはできません。店が「罰金」と呼んでいるものは、法的には規約違反を理由とする違約金や損害賠償の請求として扱われ、その金額が妥当かどうかは個別に検討されます。店に支払ったとしても、キャスト本人との関係や刑事手続が当然に片づくわけではない点にも注意が必要です。
客の法的な位置づけについては、対価を払って本番に至った場合|売春防止法上、客はどう位置づけられるかで詳しく解説しています。
弁護士に相談する前のチェックリスト8項目
相談の前に確かめておきたいのは、次の8項目です。分からない項目や思い出せない項目があっても構いません。分かる範囲でメモにしておくと、相談の時間を有効に使えます。
- 請求しているのは誰か。
- 請求の名目と金額の内訳。
- 行為に至った経緯と、同意をめぐる事実関係。
- その場で署名・作成した書面の有無と内容。
- 相手に渡った個人情報の範囲。
- すでに支払ったお金と、その記録。
- 警察が関わっているかどうか。
- 相手とのやり取りの記録と、告げられた期限。
チェック1 請求しているのは誰か
店長やスタッフが請求しているのか、キャスト本人なのか、あるいはキャストの知人や「店の関係者」を名乗る第三者なのかを確かめます。本番行為によって精神的・身体的な損害を受けたと主張できるのは、基本的には行為の相手となったキャスト本人です。
店が受け取った金銭がキャストに渡るのか、キャスト本人がその解決に納得しているのかが分からないままでは、後から本人から改めて請求されたり、被害届を出されたりするおそれが残ります。店名、担当者の名前、連絡に使われた電話番号やアカウントなど、分かる範囲で控えておきましょう。
チェック2 請求の名目と金額の内訳
「罰金」「違約金」「迷惑料」「示談金」「キャストの検査費・治療費」「休業補償」など、どのような名目で、いくらを求められているかを整理します。名目がまとめて示されている場合でも、内訳を分けて見ると、根拠のある部分とそうでない部分が見えてくることがあります。
店の規約やホームページに「本番行為は罰金100万円」などと書かれていることがありますが、そうした条項の金額がそのまま認められるとは限りません。実際の損害とかけ離れた金額は、公序良俗(民法90条)に照らして効力が制限されることもあります。規約を利用前に示されたかどうか、どのような形で同意したかもあわせて思い出しておきます。
規約の効力については、誓約書の「罰金100万円」は本当に払う義務がある?法的効力を検証もご参照ください。
チェック3 行為に至った経緯と、同意をめぐる事実関係
本番行為をめぐる請求で特に重要になりやすいのが、行為に至った経緯です。どちらから話が出たのか、追加料金のやり取りはあったか、行為の前後にキャストがどのような言動をしていたか、拒む言葉や態度があったか、避妊具を使用していたかなどを、覚えている範囲で時系列に沿って書き出しておきます。
不同意性交等罪は、相手が同意しない意思を形成し、表明し、または全うすることが難しい状態にさせたり、その状態に乗じたりして性交等をした場合に成立します。「店の規約違反であること」と「犯罪にあたること」は別の問題であり、どちらにあたるかは具体的な事実関係によって判断が分かれます。
相談の際には、不利に思える事情も含めて、ありのままを伝えることが大切です。弁護士には守秘義務がありますし、事実と異なる前提で方針を立てると、後で警察が関わったときに対応が難しくなるおそれがあります。成立要件の詳細は「本番=即逮捕」ではない|不同意性交等罪の成立要件を条文から確認するで解説しています。
チェック4 その場で署名・作成した書面の有無と内容
示談書、念書、誓約書、借用書、自認書など、その場で署名や押印をした書面があるかを確認します。書面の写真や控えがあるか、相手方として署名しているのは誰か(キャスト本人の署名があるか)、どのような条項が入っているかも重要です。
書面に署名していても、それで直ちに支払いが確定するわけではありません。部屋から出られない状態で長時間にわたって迫られた、署名しなければ帰れないと告げられたといった事情があれば、強迫による取消し(民法96条1項)を主張できる場合があります。裁判例でも、風俗店が利用者を軟禁に近い状態に置いて示談書に署名させた事案について、強迫を理由に取消しを認め、店の請求を退けたもの(東京地裁平成29年2月28日判決)があります。
もっとも、取消しが認められるかどうかは状況によって異なります。署名した時間帯や場所、その場にいた人数、言われた言葉などを、できるだけ詳しく思い出しておきましょう。書面の効力については、脅されて署名した念書・示談書は有効か|「無効」と「取消し」の違いで整理しています。
チェック5 相手に渡った個人情報の範囲
運転免許証や保険証などの身分証の撮影、名刺や社員証の提示、勤務先・自宅・実家の住所、家族の連絡先など、店側に何が知られているかを確認します。身分証を手に持った状態で、謝罪する様子を動画で撮影されたというご相談もみられます。
家族や勤務先に知らせると告げられている場合は、その言葉の内容と日時を記録しておきます。弁護士が窓口となった後は、ご本人やご家族、勤務先への直接の連絡を控えるよう求めるのが一般的です。合意に至る際には、取得された個人情報の破棄や、第三者に開示しないことを条項に入れることを検討します。
身分証を求められた場面への対応は、身分証の提示・撮影を求められた場合|応じる義務と拒否の帰結でも解説しています。
チェック6 すでに支払ったお金と、その記録
その場で現金を渡した、指定された口座に振り込んだ、分割で払い始めたなど、すでに支払った金額と方法を確認します。振込明細、受領書、ATMの利用明細などは残しておきます。受領書を受け取れなかった場合も、日時と金額、受け取った人を書き留めておきましょう。
振込先が店名義ではなく個人名義の口座だった場合や、支払った後にもさらに請求が続いている場合は、支払った金額が何に対するものだったのかが曖昧になっている可能性があります。支払い済みの金額は、その後の交渉で考慮される事情の一つになります。
振込先の確認については、【風俗トラブル】振込先が個人名義の口座だった|払う前に確かめることもご覧ください。
チェック7 警察が関わっているかどうか
その場に警察官が来たか、警察から電話や呼び出しがあったか、店から「被害届を出した」「警察に相談した」と伝えられたかを確認します。警察が実際に関与しているかどうかで、急ぐべきことや対応の順序が変わります。
「警察に行く」「被害届を出す」という言葉が、支払いを促すために使われる場面もあります。一方で、実際に相談が進んでいることもあるため、言葉だけで判断せず、いつ、誰から、どのように告げられたのかを記録しておくことが大切です。警察から連絡があった場合は、事情聴取に応じる前に弁護士に相談することをご検討ください。
詳しくは、【風俗トラブル】キャストが警察に相談したと聞かされた|本当かどうか確かめる方法はあるかで解説しています。
チェック8 相手とのやり取りの記録と、告げられた期限
LINEやSMSのメッセージ、通話履歴、留守番電話、録音などは消さずに残しておきます。自分にとって不利に思える内容でも、削除すると経緯が分からなくなり、かえって説明が難しくなることがあります。
あわせて、「今日中に」「○日までに振り込まなければ」などと期限を切られているかどうかも確認しておきます。期限があると焦ってしまいがちですが、期限が迫っていることを相談の際にお伝えいただければ、優先して対応すべきことを一緒に整理できます。録音の扱いについては、録音はどこまで証拠になるか|風俗トラブルでの残し方もご参照ください。
チェックリストを一覧で確認する
相談の前に手元で確認できるよう、8つの項目を表にまとめました。
| チェック項目 | 確認すること | 手元に用意したいもの |
|---|---|---|
| 請求しているのは誰か | 店・キャスト本人・第三者のいずれか | 店名、担当者名、連絡先 |
| 請求の名目と金額の内訳 | 罰金・違約金・示談金などの名目と金額 | 請求内容のメモ、規約の画面 |
| 行為に至った経緯 | 誰から話が出たか、拒む言動の有無 | 時系列のメモ |
| 署名・作成した書面 | 書面の種類、署名者、条項 | 書面の写真や控え |
| 渡った個人情報 | 身分証、勤務先、家族の情報 | 撮影・提示したもののメモ |
| 支払ったお金 | 金額、方法、受け取った人 | 振込明細、受領書 |
| 警察の関与 | 臨場・連絡・被害届の有無 | 連絡のあった日時と警察署名 |
| やり取りの記録と期限 | メッセージ、通話、録音、期限 | スマートフォンの画面、録音データ |
相談の前に控えておきたいこと
請求を受けた直後は、早く終わらせたい気持ちから、後で見直すことが難しくなる行動をとってしまうことがあります。弁護士に相談するまでの間は、次のような対応は控えることをおすすめします。
- 求められるまま、新たな書面に署名・押印すること。
- 「今すぐ払えば終わる」と言われ、内訳を確かめずに支払うこと。
- 支払いのために、カードローンなどで急いで借入れをすること。
- 事実と異なる内容を含む謝罪文や自認書を、自分から作って送ること。
- キャスト本人に直接連絡を取り、謝罪や交渉をしようとすること。
- メッセージや通話履歴を削除すること。
すでにいずれかをしてしまった場合でも、その後の対応で整理できることはあります。したことを隠さずに、相談の際にお伝えください。即時の支払いを求められた場面については、【風俗トラブル】「今すぐ払えばこの場で終わる」と言われた|即時払いを求められたときの判断で解説しています。
弁護士に相談・依頼した後の一般的な流れ
弁護士に依頼すると、まず店側に受任を通知し、以後の連絡窓口を弁護士に一本化します。ご本人やご家族、勤務先への直接の連絡を控えるよう求めることで、請求への対応を落ち着いて進めやすくなります。
そのうえで、店側の主張とその根拠を確認し、請求の中身を仕分けます。店への支払いに根拠が乏しい部分があれば、その点を指摘して協議します。キャスト本人に損害が生じていると考えられる場合には、本人の意思を確認したうえで、本人を当事者に含めた合意を目指すことがあります。
合意に至る場合は、金銭の支払いをもって一切を解決したことを確認する清算条項、被害届を出さないこと(すでに出されている場合は取り下げること)、取得した個人情報の破棄、今後の接触の禁止などを合意書に入れることを検討します。どのような条件で合意できるか、請求額がどこまで見直されるかは事案によって異なり、結果をお約束できるものではありません。ただ、事実関係と記録が整理されているほど、交渉の方針は立てやすくなります。
合意書に入れる条項については、風俗トラブルの示談書に必ず入れる6条項|抜けると後で効かないで詳しく解説しています。
よくあるご質問
チェック項目が揃っていなくても相談できますか
ご相談いただけます。請求を受けた直後は、書面の控えがない、何を言われたか正確に覚えていないということも珍しくありません。覚えている範囲のことと、手元に残っているものをお持ちいただければ、そこから一緒に整理していきます。
同意があったと思っているのに「強要された」と言われたら、どうすればよいですか
同意の有無は、行為の前後のやり取りや状況から判断されます。ご自身の認識と相手の主張が食い違っているときこそ、記憶が新しいうちに経緯を書き出し、やり取りの記録を残しておくことが大切です。相手の主張に合わせて、事実と違う内容を認める書面に署名すると、後で説明が難しくなるおそれがあります。
店にお金を払えば、警察沙汰にはならないのですか
店との間で合意しても、それだけで刑事手続が止まるとは限りません。被害を申告できるのはキャスト本人であり、店との合意がキャスト本人の意思を反映していなければ、後から被害届が出される可能性は残ります。支払いの前に、誰との間で、どのような内容の合意をするのかを確かめておくことが大切です。詳しくは、【風俗トラブル】示談金を払ったのに被害届を出された|合意の効果と刑事手続をご覧ください。
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まとめ
本番行為を理由とする店からの請求は、店との問題、キャスト本人との問題、刑事手続の問題が重なり合っていることが多く、一つずつ切り分けて考えることが出発点になります。今回の8つのチェック項目は、その切り分けのための材料です。すべてを揃えてから動く必要はありませんので、分かる範囲で整理したうえで、早めにご相談ください。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


