逮捕されたら会社・学校に連絡はいく?勾留と身分への影響
この記事は、2026年10月2日時点の民法、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)、弁護士法、債権管理回収業に関する特別措置法(サービサー法)、犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律(振り込め詐欺救済法)の規定をもとに、風俗店やメンズエステの利用をめぐって金銭を請求された方に向けて一般的な考え方を整理したものです。個別の事案での見通しは、事実関係によって変わります。
「デリヘルの店の者だと名乗る番号から電話があったが、その店を使ったかどうか自信がない」「店名には覚えがあるのに、教えられた振込先が個人の名前だった」というご相談を受けることがあります。反対に、「たぶん本物の店だと思うので、早く払って終わらせたい」とお考えになり、振込の直前にご相談に来られる方もいらっしゃいます。
インターネット上では「身に覚えのない請求は無視してよい」「架空請求なら払う必要はない」という説明をよく見かけます。どちらもそれ自体は誤りではありません。ただ、風俗の利用をめぐる請求では、実際にどこかの店を利用していることが多く、「身に覚えがない」と言い切れないところに判断の難しさがあります。また、「店が実在するか」という問いには、店そのものが存在するかという問いと、いま請求している人がその店の者なのかという問いの二つが含まれています。
この記事では、請求元の店が実在するのかどうか分からない段階で、払う前に何をどの順序で確かめればよいかを整理します。請求の名目ごとの法的根拠の読み方や、「法的措置」と書かれた書面の扱い、支払った後に相手が別人だと分かった場合の対応は、それぞれ別の記事に委ねます。
「実在するか」は二つの問いに分かれる
店が存在するか、請求者がその店の者か
請求元の確認というと、店の名前を検索して営業しているかどうかを調べることを思い浮かべる方が多いと思います。しかし、店が実在することが分かっても、それだけで請求が本物だとは言えません。実在する店の名前を、店とは関係のない第三者が使って請求してくることもあるためです。
確かめるべきことは「店が存在するか」と「いま請求している人が、その店のために金銭を受け取る立場にあるか」の二つであり、後者のほうが見落とされやすい点です。
風俗の請求で区別がつきにくい理由
風俗の利用では、相手の本名を知らず、源氏名と店の電話番号しか分からないまま利用が終わることが少なくありません。店の看板の名前と運営している会社の名前が異なることや、同じ運営者が複数の店名で営業していることもあります。複数の店を利用していれば、どの店のことを言われているのか本人にも分からない場合があります。
こうした事情から、請求の電話を受けた側は、相手の話す店名や源氏名が自分の記憶と合っているかどうかだけで判断しがちです。請求のかたちを整理すると、おおむね次のように分けることができます。
| 請求のかたち | よくある状況 | まず確かめたいこと |
|---|---|---|
| 店が実在し、店自身が請求している | 利用した日時や源氏名が具体的に示される | 請求の根拠と金額が妥当か |
| 実在する店の名前を、店と無関係の者が使っている | 店名は合っているが、振込先や連絡先が店の案内と違う | 請求者が店のために受け取る立場にあるか |
| 店から依頼を受けたと名乗る者が請求している | 「管理会社」「回収担当」「代理人」などを名乗る | 名乗っている立場が法律上成り立つか |
| 店そのものが確認できない | 店名で調べても営業していた形跡が見当たらない | 自分がその店を利用したことがあるか |
払う前に確かめることに意味がある理由
受け取る立場にない人に払っても、本来の相手への支払いにはならない
お金を払うと、その支払いで債務が消えるのは、受け取る権限を持つ人に払った場合です。権限のない人に払った支払いが例外的に有効とされるのは、その人が受け取る権限を持つように見える外観があり、払った側がそのことを知らず、かつ知らなかったことに過失がない場合に限られます(民法478条)。
つまり、本当に店に対して支払うべきものがあった場合でも、店と無関係の人に払ってしまえば、店からあらためて請求されるおそれが残ります。確認をせずに払った支払いは、「過失がなかった」と言いにくくなるため、払う前の確認は、二重に払う事態を避けるための手立てでもあります。
一度払うと「払う人」として扱われることがある
請求が架空のものだった場合、一度でも支払いに応じると、「この人は払う」と受け止められ、別の名目で追加の請求を受けることがあります。実在の店とその名前を使った第三者の両方から請求され、結果として二重に支払ってしまう場面も考えられます。
支払いを済ませた後に相手が別人だと分かった場合の対応は、【風俗トラブル】支払った後に相手が別人だと分かった|本人確認をしない示談の危うさで解説しています。
最初に確かめるのは自分の利用の記録
請求で示された事実を書き出す
相手の店を調べる前に、まず請求の中で示された事実を書き出しておくことをおすすめします。店名、利用したとされる日時と場所、担当したとされる源氏名、請求の名目と金額、支払いの期限、振込先、相手が名乗った名前と立場、連絡に使われた電話番号やアカウントなどです。
請求の電話が具体的な事実に触れず、「先日の件で」「規約違反があった」といった言い方にとどまっている場合は、その点も記録しておきます。具体的な日時や店名を示さないまま支払いだけを求めてくる請求は、慎重に扱う必要があります。
手元に残っている記録と照らし合わせる
次に、書き出した内容を自分の手元の記録と照らし合わせます。予約のやり取りが残っているメッセージアプリやメール、通話の発着信履歴、クレジットカードや電子マネーの利用明細、ホテルの領収書などが手がかりになります。
照らし合わせた結果、その日時にその店を利用した記録が見当たらなければ、請求そのものが架空である可能性を考えます。架空請求に共通する特徴は、風俗トラブルで不当請求・詐欺を見抜くチェックリストで整理しています。記録の残し方そのものについては、【風俗トラブル】自分側の記録をどう作るか|相談の前に整理しておく材料もあわせてご覧ください。
利用の記録が合っても、それで請求が本物になるわけではない
反対に、利用した日時や店名が合っていたとしても、請求者がその店の者であることまでは分かりません。利用の事実を知っている人が、店の名前を使って請求している可能性もあるためです。利用の記録が一致したら、次は店の存在と、請求者の立場を分けて確かめていきます。
店の存在を公開されている情報で確かめる
店が公に案内している連絡先と照らす
店のウェブサイトや掲載している情報サイトに案内されている電話番号や店名と、請求に使われた電話番号や名乗られた店名が一致しているかを確かめます。請求の電話が、店が案内している番号とまったく異なる番号からかかってきている場合は、注意が必要です。
ただし、店が営業用とは別の番号で客に連絡することもあるため、番号が違うことだけで偽物と決めることはできません。また、この段階で店の案内している番号に自分から電話をかけることには、後で述べるような別の問題があります。
届出確認書という書面
デリヘルなどの無店舗型の性風俗店を営むには、事務所の所在地を管轄する公安委員会への届出が必要です(風営法31条の2第1項)。届出があると、公安委員会はその旨を記載した書面、いわゆる届出確認書を交付し、営業者はこれを事務所に備え付け、関係者から請求があったときは提示しなければならないとされています(同条4項・5項)。また、届出確認書の交付を受けた者以外は、無店舗型の性風俗店を営む目的で広告や宣伝をしてはならないとされています(同法31条の2の2)。店舗型の性風俗店にも、届出と広告宣伝の禁止の仕組みがあります(同法27条、27条の2)。
もっとも、届出の有無を一般の人が検索して確かめられる一覧は、通常は公開されていません。客が「関係者」として届出確認書の提示を求められるかどうかも、はっきりしているわけではありません。届出確認書は、請求者が本当にその店の者であれば示せるはずの書面の一つとして、弁護士が請求者に確認を求める際の材料になると考えておくのが現実的です。
店舗型と無店舗型の違いや、届出のない店を利用した場合の客の立場については、【風俗トラブル】メンズエステの『無店舗型』と『店舗型』|届出の有無で客のリスクはどう変わるかと無許可・無届の店を利用した場合|客の立場はどうなるかで解説しています。
運営会社の名前が分かる場合
請求書面や店のウェブサイトに運営会社の名前が書かれている場合は、国税庁の法人番号公表サイトで、その会社の商号と所在地を調べることができます。登記された会社として存在するかどうかは、ここで一つの目安が得られます。
ただし、看板の店名で調べても会社は出てきませんし、個人で営業している店もあります。会社が実在していても、請求している人がその会社の者かどうかは別の問題です。法人が見つかったことは、確認の途中の一歩と位置づけておくのがよいと考えます。
請求している人の立場を確かめる
店の従業員を名乗る場合
店の店長やスタッフを名乗る人が請求してくる場合、請求の中に店自身の損害と、キャスト本人の慰謝料などが混ざっていることがあります。店の損害であれば店が請求できますが、キャスト本人の損害を請求できるのは原則として本人です。誰の損害について、誰が受け取るのかを分けて確かめることが大切です。この点は、誰に払うのか|店の損害とキャスト個人の損害は別で詳しく扱っています。
店の担当者がキャストの代わりに交渉を進めている場合の問題は、店の担当者が弁護士でない場合|非弁の疑いがある交渉への対応をご覧ください。
店から権利を譲り受けた、回収を任されたと名乗る場合
「店から債権を譲り受けた」と名乗る人が請求してくることもあります。債権の譲渡を支払う側に対して主張するには、譲り渡した側、つまり店から通知があるか、支払う側が承諾していることが必要です(民法467条1項)。譲り受けたと名乗る人が自分で連絡してくるだけでは、この要件を満たしません。
また、他人の権利を譲り受けて、その実行を業とすることは、弁護士法で禁じられています(弁護士法73条)。他人の債権の管理や回収を業として行えるのは、弁護士のほかは、法務大臣の許可を受けた債権回収会社に限られ(サービサー法3条)、許可を受けた会社は法務省のウェブサイトで公表されています。債権回収会社が扱える債権の範囲も法律で限られているため、「回収会社」を名乗る人から風俗の利用料金や罰金の支払いを求められた場合は、名乗っている立場そのものを疑ってみる必要があります。
弁護士を名乗る場合
弁護士を名乗る人から書面や電話で請求を受けた場合は、日本弁護士連合会のウェブサイトで、その氏名の弁護士が登録されているか、所属する弁護士会や事務所の所在地が書面と合っているかを調べることができます。確かめるときは、請求の書面に書かれた電話番号ではなく、自分で調べた事務所の番号を使うようにしてください。
実在する弁護士の名前をかたった請求もあるため、名前が登録されていることと、その弁護士が本当に請求していることは分けて考えます。弁護士が実際に店の代理人に就いている場合の意味は、弁護士名の請求書が届いた|代理人が就いた場合の意味と風俗トラブルで店の「顧問弁護士」が出てきた|客側がまず確認すべきことで解説しています。
振込先と連絡のしかたに表れる手がかり
振込先の名義
指定された振込先が個人名義であったり、店名や運営会社と関係のなさそうな名義であったりする場合は、判断の材料の一つになります。もっとも、店の経営者個人の口座が使われることもあるため、名義だけで偽物と決めることはできません。名義と、請求者が名乗った立場とが説明のつく関係にあるかを見ていきます。
連絡が電話やSNSに限られている
請求が電話やSNSのメッセージだけで行われ、店の所在地や運営者の名前を尋ねても答えない、書面を求めても送ってこないという場合は、請求者が自分の身元を明らかにできない、あるいは明らかにしたくない事情があるとも考えられます。本当に店が請求しているのであれば、請求の根拠や金額を書面で示すことに支障はないはずです。
短い期限と、家族や職場への言及
「今日中に払わなければ家族に知らせる」「職場に連絡する」といった言い方で、確かめる時間を与えないまま支払いを迫る請求もあります。こうした言い方は、請求者が実在の店であるかどうかにかかわらず注意が必要です。期限を切られた場面での伝え方は【風俗トラブル】支払期限を切られた|『今日中に』に応じないための伝え方で、届出をちらつかせた請求については「金を払わなければ通報する」と脅されたら|風俗トラブルにおける恐喝罪への対処法で扱っています。
自分で確かめるときに避けたいこと
確かめようとする行動が、かえって相手に情報を渡したり、新たな請求のきっかけになったりすることがあります。次のような行動は、いったん立ち止まって考えることをおすすめします。
- 請求者が示した番号に折り返し、自分の氏名や勤務先、住所を伝えること。
- 心当たりのある店に片端から電話をかけ、自分への請求があるかを尋ねること。
- 「本人確認のため」と言われて、身分証や顔写真の画像を送ること。
- 「確認料」「手続の費用」など、請求とは別の名目の支払いに応じること。
- 事務所や喫茶店などでの話し合いの呼び出しに、一人で応じること。
心当たりのある店に自分から問い合わせると、請求が第三者によるものだった場合でも、店の側に「何かあった客」として認識され、店から別の請求を受けるきっかけになることがあります。相手がどこまで自分の情報を把握しているかを確かめる前に情報を足していくことは、避けたいところです。着信が続いている場面での考え方は、【風俗トラブル】帰宅途中に店から着信が続いている|折り返す前に決めておくこともご覧ください。
すでに支払ってしまった場合
振込先の金融機関と警察に早めに伝える
支払った後で請求が架空だったと分かった場合は、振込先の金融機関と警察に、早めに事情を伝えることが考えられます。詐欺などの犯罪に利用された疑いのある口座については、金融機関が取引の停止などの措置をとることがあり(振り込め詐欺救済法3条)、口座に残高があれば、被害の回復のための分配金の手続が行われることがあります。
ただし、口座の残高がすでに引き出されていれば、この手続で取り戻せる金額は限られます。振込から時間がたつほど難しくなるため、迷っている段階でも早めに相談することをおすすめします。
相手が本物の店だった場合
支払った相手が本物の店だった場合でも、何についての支払いなのか、これで請求が終わるのかが書面で確認できていなければ、後から追加の請求を受けることがあります。受け取った側に領収書や受領書を出してもらうことが、後日の争いを避ける手立てになります。書面の作り方は、【風俗トラブル】示談金の領収書・受領書をどう作るか|後日の否認に備えるで解説しています。
弁護士に依頼した場合にできること
確認の窓口を弁護士に移す
弁護士が代理人に就くと、請求者とのやり取りは弁護士を通じて行うことになります。弁護士は、依頼者の情報を必要以上に相手に渡さないようにしながら、請求者に対して、どの店のために、誰の何の権利にもとづいて請求しているのかを書面で示すよう求めます。店から依頼を受けたと名乗る場合には、その立場を裏づける資料の提示を求めることもあります。
依頼者が利用したと考えられる店がいくつもある場合でも、弁護士が窓口になることで、依頼者自身が店に問い合わせて情報を広げてしまう事態を避けながら、事実関係を確かめることができます。
家族や職場への連絡を止めるよう求める
請求者が家族や勤務先への連絡を口にしている場合、弁護士は代理人として、今後の連絡は弁護士にのみ行い、依頼者本人や家族、勤務先には直接連絡しないよう求めます。請求が家族や職場にまで広がる前に、連絡の経路を弁護士のもとに集めることを目指します。
請求が本物だった場合は、根拠と金額を検討する
確認の結果、本物の店からの請求だと分かった場合は、次に、請求の名目に法的な根拠があるか、金額が妥当かを検討します。店が「罰金」と称して求めている金額でも、そのまま支払う必要があるとは限りません。名目ごとの検討のしかたは、店からの請求書面の読み方|名目別に法的根拠を突き合わせるで解説しています。
よくあるご質問
店の名前で検索しても出てこない場合は、払わなくてよいのですか
検索しても営業の形跡が見当たらない場合、請求が架空である可能性は考えられます。ただ、店名を変えた、閉店した、看板とは別の名前で営業しているといった事情で見つからないこともあります。判断の軸は検索の結果よりも、自分がその日時にその店を利用した記録があるかどうかに置くのがよいと考えます。
店の公式の番号に電話して、本当に請求しているか尋ねてもよいですか
店が公に案内している番号であれば、請求者が示した番号に折り返すよりは確かな確認方法です。ただ、問い合わせることで、店に自分の名前や利用の事実を伝えることになり、請求が第三者によるものだった場合でも、店との間で新たなやり取りが始まることがあります。どこまで自分で確かめるかは、相談のうえで決めることをおすすめします。
確かめている間に「警察に届ける」と言われました。急いで払ったほうがよいですか
金銭の支払いと警察への届出は別の手続であり、支払ったかどうかだけで刑事の手続が決まるわけではありません。実在するかどうか分からない相手からの届出の予告を理由に、確認をしないまま支払うことはおすすめできません。利用の際に何があったかによって刑事の面での見通しは変わるため、その点も含めて早めにご相談ください。
まとめ
- 「店が実在するか」は、店が存在するかと、請求者がその店のために受け取る立場にあるかの二つに分けて確かめる。
- 受け取る権限のない人への支払いが有効とされるのは、払った側に過失がない場合などに限られる(民法478条)。
- 最初に、請求で示された日時・店名・源氏名と、自分の利用の記録を照らし合わせる。
- 無店舗型の性風俗店は届出が必要で、届出確認書は事務所に備え付けることとされている(風営法31条の2第1項・4項・5項、31条の2の2)。
- 債権を譲り受けたと主張するには、店からの通知か支払う側の承諾が必要となる(民法467条1項)。
- 他人の債権の回収を業として行えるのは、弁護士と法務大臣の許可を受けた債権回収会社に限られる(弁護士法73条、サービサー法3条)。
- 架空の請求に支払ってしまった場合は、振込先の金融機関と警察に早めに伝える(振り込め詐欺救済法3条)。
弁護士法人若井綜合法律事務所では、風俗店やメンズエステの利用をめぐるトラブルに関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。
請求元の店が本当に存在するのか分からない方、支払いを求められて期限が迫っている方は、相手から届いたメッセージや通話の記録を手元にご用意のうえ、お早めにご相談ください。


