【風俗トラブル】店と話がついた後、女性の家族と名乗る人から請求が来たら?

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

風俗店とのトラブルで店と話し合い、示談金を支払って一段落したと思っていたところに、「女性の家族だ」と名乗る人から連絡が来て、改めてお金を求められることがあります。店との間で終わったはずの話を別の人から持ち出されると、もう一度払わなければならないのか、払わなければ警察に行かれるのかと、不安になる方も多いと思います。

 この記事では、店と示談した後に女性の家族を名乗る人から請求を受けた場面について、店との示談の効力がどこまで及ぶのか、家族に請求する権利があるのか、連絡を受けたときにどう動けばよいのかを順に整理します。

本記事は、2026年10月時点の法令(2023年の刑法改正で新設された不同意性交等罪を含みます)に基づく一般的な解説です。個別の事情によって見通しが変わることがあるため、具体的な対応は弁護士にご相談ください。


店と話がついた後に「家族」から連絡が来る場面

 この種の連絡は、たとえば次のような形で届きます。

  • 店に示談金を払った数日後、「娘から話を聞いた。店とは別に話をつけたい」と電話が来た。
  • 女性の夫を名乗る人から「妻が傷ついている。慰謝料を払え」とメッセージが届いた。
  • 兄を名乗る人から「払わないなら警察に行く。職場にも知らせる」と言われた。
  • 店からは「女性には店から話をしてある」と聞いていたのに、家族は示談のことを知らない様子だった。


 どの場合も、まずは店との示談がどこまでを終わらせたものだったのか、連絡してきた人が何の立場で求めているのかを分けて考えることが大切です。その場で金額に応じたり、新たな書面に署名したりする必要はありません。

まず確かめたいのは「店との示談に女性本人が入っているか」


示談の効力は、合意した当事者の間で生じる

 示談は契約の一種で、その効力は原則として合意した当事者の間で生じます。店とだけ示談書を交わした場合、女性本人が当事者になっていなければ、女性本人が持っている損害賠償の請求権まで当然に消えるとは限りません。
 一方で、女性本人が示談書に署名している場合や、店が女性本人から委任を受けて代理人として合意した場合には、女性本人との関係でも話が終わっていると主張できる余地があります。示談書の書き方によって、見通しはおおむね次のように分かれます。

店との示談書の内容女性本人からの請求への影響
女性本人が当事者として署名・押印している女性本人との関係でも解決済みと主張しやすい
店が女性本人の代理人として合意したと書かれ、委任状などがある代理の権限が確認できれば、女性本人にも効力が及ぶと考えられる
店だけが当事者で、女性の名前や関与の記載がない女性本人の請求が残っているとされるおそれがある
「女性の分も含めて解決する」とあるが、女性本人の承諾が確認できない女性本人が認めなければ、女性本人を拘束しないことがある


 店が代理する権限を持たないまま「女性の分も含めて」合意していた場合、女性本人がそれを認めない限り、女性本人との関係では効力を持たないことがあります(民法113条)。その場合、店に支払ったお金の扱いは、店との間で別に話し合うべき問題になります。

清算条項があっても、当事者でない人には及ばないことがある

 示談書によく入っている「本件に関し、当事者間に何らの債権債務がないことを確認する」という清算条項は、書面に名前のある当事者どうしの約束です。店と客の間の清算条項だけでは、女性本人やその家族からの請求を当然に止めることはできません。手元の示談書で、誰と誰の間の清算になっているかを確認してください。
 示談書の控えを持っていない場合や、原本を店に預けたままの場合は、内容を確かめる方法から考える必要があります。この点は【風俗トラブル】示談書の原本を店しか持っていない|控えを求めるべき理由で解説しています。

「家族」自身に請求する権利はあるのか


家族固有の慰謝料が認められる場面は限られる

 風俗店でのトラブルについて損害を受けたと主張できるのは、基本的には女性本人です。民法は被害者が亡くなった場合の近親者の慰謝料を定めていますが(民法711条)、それ以外の場面で家族が自分自身の慰謝料を請求できるのは、例外的な場合に限られると考えられています。「家族として傷ついた」という理由だけで、家族に固有の請求権が当然に認められるわけではありません。
 もっとも、通院の付き添いにかかった交通費を家族が立て替えたといった実費が、女性本人の損害として主張されることはあります。家族からの連絡だからといってすべてを根拠のない請求と決めつけず、どの費目を、どの根拠で求めているのかを確かめる姿勢が大切です。

女性本人の代わりとして連絡してきた場合

 家族が「本人の代わりに」と言って連絡してくる場合、本人から交渉を任されているかどうかが問題になります。成人した女性の家族は、当然には本人を代理する立場にありません。委任を受けているのか、本人の意思に沿った請求なのかは、名乗りだけでは分かりません。
 女性が未成年の場合は、親が法定代理人として連絡してくることがあります。この場合は民事の請求とは別に、年齢に関わる刑事上の問題が生じるおそれもあるため、早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。
 また、弁護士でない人が報酬を得る目的で他人の法律事件の交渉を行うことは、弁護士法72条で禁じられています。家族を名乗る人が、実際には報酬目的で間に入っている交渉役ではないかと感じる場合も、その点を含めて弁護士に確認してもらうとよいでしょう。

本当に家族かどうかは、名乗りだけでは分からない

 連絡してきた人が本当に女性の家族なのか、女性本人がその連絡を知っているのかは、こちらからは確かめにくいものです。店の関係者や女性の知人が家族を名乗っている場合もあれば、女性本人の知らないところで家族が動いている場合もあります。名乗った相手に直接お金を渡すと、相手が誰なのか確認できないまま、支払いだけが残るおそれがあります。
 女性の交際相手や知人を名乗る人からの連絡については、【風俗トラブル】キャストの交際相手・知人を名乗る男性から連絡が来たで詳しく扱っています。

連絡を受けたときに避けたい対応

 家族を名乗る人からの連絡は感情的な言葉を伴うことも多く、早く終わらせたい気持ちから、次のような対応をしてしまいがちです。

  • その場で金額を約束したり、追加の支払いに応じたりすること。
  • 新しい示談書や念書、借用書に署名すること。
  • 自宅の住所や勤務先、ご自身の家族の連絡先を伝えること。
  • 店との示談の内容を、確認しないまま相手に説明すること。
  • 言い返したり責めたりして、感情的なやり取りを続けること。


 特に、「払わなければ警察に行く」「職場や家族に知らせる」といった言葉とともに金銭を求められている場合は、求め方によっては恐喝や脅迫にあたるおそれがあります。ただし、正当な権利に基づく請求かどうか、言葉がどの程度のものかによって評価は変わるため、ご自身で決めつけずに記録を残しておくことが大切です。詳しくは「金を払わなければ通報する」と脅されたら|風俗トラブルにおける恐喝罪への対処法をご覧ください。

連絡を受けた後に取っておきたい対応の順序

 連絡を受けたら、次の順に整理していくと、落ち着いて判断しやすくなります。

  1. 相手が名乗った氏名、女性との続柄、連絡手段、日時、求められた金額とその理由を書き留めます。
  2. 電話の内容は可能な範囲で録音し、メッセージは画面を保存します。
  3. 店との示談書、領収書、振込の記録をそろえ、女性本人が当事者として入っているかを確認します。
  4. 相手には「内容を確認してから回答します」とだけ伝え、金額や条件の話には入らないようにします。
  5. 弁護士に相談し、連絡の窓口を弁護士に移すかどうかを検討します。


 店に「女性本人は示談のことを知っているのか」を確かめたくなることもありますが、ご自身で店と家族の双方に連絡を取ると、話がかえって複雑になることがあります。関わる人が増える場面ほど、窓口を一つにまとめたほうが整理しやすくなります。

刑事手続との関係

 家族を名乗る人から「警察に相談する」と言われると、店との示談が意味をなさなくなるのではと心配になるかもしれません。
 不同意性交等罪などの性犯罪は、告訴がなくても起訴できる罪とされています。そのため、店との示談書に「被害届を出さない」と書かれていても、女性本人が当事者でなければ、女性本人やその家族が警察に相談することを止める効力はありません。また、女性本人と示談が成立している場合でも、それは捜査機関が処分を判断するうえで考慮される事情の一つであり、捜査そのものを止めるものではない点に注意が必要です。
 警察から連絡が来た場合に備えて、店とのやり取りや示談に至った経緯を時系列で整理しておくと、その後の対応がしやすくなります。示談後に刑事手続が動いた場面については、【風俗トラブル】示談金を払ったのに被害届を出された|合意の効果と刑事手続もあわせてご覧ください。

弁護士に依頼した場合の動き方

 弁護士にご依頼いただいた場合、家族を名乗る人に対して弁護士が代理人に就いたことを伝え、以後の連絡を弁護士あてにしてもらうよう求めます。そのうえで、相手の立場と代理の権限の有無、女性本人の意思を確認し、店との示談との関係を整理します。
 女性本人との間ではまだ解決していないと判断される場合には、店との示談で支払った金額や経緯を踏まえ、女性本人との合意書を改めて作ることを検討します。その際は、女性本人の署名、清算条項、互いに連絡しない旨の約束などを入れ、同じ問題が繰り返されないようにします。反対に、女性本人との関係でもすでに解決していると考えられる場合には、その根拠を示したうえで、追加の支払いには応じない旨を伝えます。
 示談書にどのような条項を入れておくべきかは、風俗トラブルの示談書に必ず入れる6条項|抜けると後で効かないで解説しています。なお、交渉の結果は事案ごとの事情によって異なります。

よくあるご質問


家族を名乗る人からの連絡を無視してもよいですか

 返事をしないこと自体が、直ちに不利になるとは限りません。ただ、放置している間に相手が自宅や勤務先に連絡したり、警察に相談したりすることもあります。どう応じるかを決める前に、記録を残し、弁護士を窓口にすることを検討してください。

店に払ったお金を返してもらうことはできますか

 店が女性本人の了解を得ないまま「女性の分も含めて」示談していたことが分かった場合などには、店に支払ったお金の扱いを店と協議する余地があります。ただし、示談書の内容や支払いの経緯によって見通しは変わるため、個別に確認が必要です。

家族が警察に行くと言っている場合、急いで払ったほうがよいですか

 急いで払っても、相手が女性本人の意思を代わりに示せる立場でなければ、女性本人との関係で解決したことにはならないおそれがあります。支払う必要があるかどうか、払うとしたら誰とどのような書面を交わすべきかを確認してから判断することが大切です。

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ご相談をお考えの方へ

 店と話がついた後に家族を名乗る人から請求が来たときは、店との示談に女性本人が入っているか、相手が何の立場で求めているのかを確かめることが出発点になります。その場で新たな約束をせず、手元の書面と記録をそろえたうえで、窓口を弁護士に移すことも含めて検討してください。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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