店からの請求書面の読み方|名目別に法的根拠を突き合わせる
風俗店を利用してから数日、あるいは数週間が経ったころに、店の番号から電話がかかってきたり、「先日のご利用の件で至急ご連絡ください」「キャストへの損害について話し合いが必要です」といったSMSが届いたりすることがあります。突然の連絡に驚いて、すぐに折り返したり、謝罪の言葉を並べた返信を送ったりしたくなる方は少なくありません。しかし、後日届いた請求への最初の返信は、その後の話し合いの前提になりやすい部分です。この記事では、後日の電話・SMSでの請求に対して、送ってよい文面と避けたい文面を例文とともに整理します。
この記事で紹介する文面は、一般的な考え方を示すための例です。請求の理由や相手方の態度、すでにやり取りした内容によって適切な返し方は変わりますので、そのまま使う前に事情に合っているかをご確認ください。
返信する前に整理しておきたいこと
後日の請求は、利用当日のトラブルと違い、相手が時間をかけて準備したうえで連絡してきている場合があります。一方で、利用した覚えのない店を名乗る連絡や、実在するか分からない店からの請求が紛れていることもあります。返信の文面を考える前に、届いた連絡から次の点を確かめておくと、返し方を選びやすくなります。
- 連絡してきたのは誰か(店の名前、担当者の名前、キャスト本人、代理人を名乗る人物など)。
- 何を理由にした請求か(本番行為、盗撮の疑い、キャストの怪我、キャンセル料など)。
- 金額が示されているか、示されている場合はその内訳。
- 返答や支払いの期限を区切られているか。
- 家族や勤務先への連絡、警察への相談などに触れているか。
- 利用した日時や店の名前が、自分の記憶と一致しているか。
まず押さえておきたいのは、電話にその場で出なければならない、SMSにすぐ返信しなければならないという法律上の決まりはないという点です。相手が「今日中に連絡がなければ」と期限を区切ってきても、それだけで支払いの義務が生じるわけではありません。焦って返信する前に、少し時間を置いて状況を整理することは、ごく正当な対応です。
あわせて、利用した覚えのない店からの請求であれば、架空請求の可能性も考えられます。請求元の確かめ方については、【風俗トラブル】請求元の店が実在するか分からない|払う前の確認方法や風俗トラブルで不当請求・詐欺を見抜くチェックリストもあわせてご覧ください。
返信の文面に入れること・入れないこと
後日の請求に返信する場面では、文面が短いほど後から読み違えられる余地が小さくなります。伝えるのは「連絡を受け取ったこと」「すぐには回答しないこと」「内容を書面などで示してほしいこと」程度にとどめ、事実関係や金額には触れないのが基本です。文面に入れてよい要素と、入れないほうがよい要素を表にまとめます。
| 区分 | 具体的な内容 | 理由 |
|---|---|---|
| 入れてよい要素 | 連絡を受け取ったことの確認 | 無視していないことを示し、相手を不必要に刺激しにくい |
| 入れてよい要素 | 即答できないので検討の時間がほしいこと | その場で結論を出さずに済む |
| 入れてよい要素 | 請求の根拠や金額の内訳を書面で示してほしいこと | 内容が記録に残り、比較や検討がしやすくなる |
| 入れてよい要素 | 弁護士に相談する予定であること | やり取りの窓口を移す準備になる |
| 入れないほうがよい要素 | 行為の内容を認める言葉 | 後の話し合いや手続で、事実を認めたものと扱われるおそれがある |
| 入れないほうがよい要素 | 金額や支払い時期の約束 | 合意が成立したと主張される材料になりやすい |
| 入れないほうがよい要素 | 勤務先、家族構成、自宅住所などの新しい情報 | 相手が持つ情報を増やし、連絡先を広げることにつながる |
| 入れないほうがよい要素 | 相手を責める言葉や感情的な反論 | 対立が深まり、こちらの言葉が問題にされることもある |
送ってよい文面の例
ここからは、場面ごとに返信の例を紹介します。いずれも、事実関係を認めたり否定したりする部分を含めず、やり取りを落ち着いた形に整えることを目的としています。
請求の内容を書面で示してもらうよう求める例
電話で一方的に金額を告げられた場合や、SMSの内容だけでは何を求められているのか分からない場合には、内容を形に残してもらうことを求める返し方があります。
例文:「ご連絡を拝見しました。お電話では内容を正確に把握することが難しいため、請求の理由と金額の内訳を書面またはメールでお示しいただけますでしょうか。内容を確認したうえで、改めてご連絡いたします。」
この文面は、相手の主張を受け入れたとも退けたとも読めない形になっています。書面で示してほしいと伝えておくと、後から請求額が変わったときにも比べることができます。連絡のたびに金額が変わっていく場合の考え方は、【風俗トラブル】請求額が連絡のたびに増えていく|金額が動く請求への向き合い方で解説しています。
即答を控え、検討の時間をもらう例
期限を区切られて回答を迫られている場合でも、その場で結論を出す必要はありません。時間がほしいことを、短く伝えるだけで足ります。
例文:「ご連絡ありがとうございます。すぐにはお答えできませんので、内容を確認する時間をいただけますでしょうか。こちらから改めてご連絡いたします。」
「いつまでに返事をする」と具体的な日付を自分から示すかどうかは、状況によります。日付を示すと、その日までに連絡しなかったことを理由に強く出られることもあるため、相談先が決まってから伝えるという方法も考えられます。
弁護士に相談する予定を伝える例
自分だけで対応を続けることに不安がある場合は、相談を始めることを伝え、それ以上のやり取りを控える返し方があります。
例文:「本件については弁護士に相談のうえで対応いたします。今後のご連絡は、改めてお知らせする窓口からさせていただきます。」
この段階で、相談先の事務所名や相談日などの詳しい情報まで伝える必要はありません。「弁護士に相談すると言ったら態度が変わった」「弁護士を入れたら話は終わりだと言われた」という相談も寄せられますが、相談すること自体は誰にとっても正当な選択肢です。
身に覚えがない・相手が分からない場合の例
利用した覚えのない店からの請求や、どの利用についての話か分からない連絡には、こちらから情報を補わないことが大切です。
例文:「ご連絡の内容に心当たりがありません。どのような根拠によるご請求か、書面でお示しください。」
「〇月〇日に〇〇店を利用した件ですか」と自分から日時や店名を挙げてしまうと、相手が持っていなかった情報を与えることになりかねません。数か月前の利用について突然連絡が来た場合の整理は、【風俗トラブル】数か月前の利用について突然連絡が来た|時間が経ってからの請求もご参照ください。
弁護士に依頼した後の例
弁護士に依頼した後は、本人が直接やり取りを続けないのが通常です。弁護士から相手方へ連絡が入るまでの間に連絡が来た場合は、次のような短い返信にとどめるか、返信せずに弁護士へ伝えることになります。
例文:「本件は弁護士に依頼しております。今後のご連絡は代理人の弁護士までお願いいたします。」
依頼後に本人が個別に返信すると、窓口を一本化した意味が薄れてしまうおそれがあります。電話がかかってきた場合も、出るかどうか、出たときに何を言うかを、あらかじめ弁護士と決めておくと落ち着いて対応しやすくなります。
避けたい文面の例
次に、後日の請求に対して送ってしまいがちな文面のうち、後の話し合いで不利に働くおそれがあるものを紹介します。
謝罪と事実の承認が一体になった文面
例:「本番をしてしまい申し訳ありませんでした。どうすれば許していただけますか。」
相手に不快な思いをさせたことへのお詫びの気持ちがあったとしても、行為の内容と結びついた謝罪は、事実を認めた言葉として扱われるおそれがあります。実際の出来事が相手の主張と異なっている場合には、とくに注意が必要です。謝罪の気持ちをどう伝えるかは、事実関係を整理してから考えても遅くありません。
金額や支払いを約束する文面
例:「おっしゃる金額をお支払いします。分割でもよろしいでしょうか。」
その場を収めたい一心で支払いを申し出ると、金額や支払い方法について合意ができたと主張される材料になりやすくなります。請求額が妥当かどうか、そもそも支払う理由があるのかを確かめる前に、金額に触れる言葉は控えたほうがよいでしょう。
感情的な反論や相手を責める文面
例:「そんな請求は詐欺だ。これ以上連絡してきたら、こちらも黙っていない。」
不当だと感じる請求に強い言葉で返したくなるのは自然なことです。ただ、こちらの文面が相手を脅すような内容に読める場合、相手に新たな言い分を与えてしまうこともあります。反論があるときほど、文面は短く、事実関係に触れない形にとどめるのが無難です。
新しい個人情報を伝えてしまう文面
例:「家族には言わないでください。会社は〇〇なので、平日は昼休みなら電話に出られます。」
家族や職場に知られたくないという不安から、勤務先や連絡しやすい時間帯を伝えてしまうことがあります。しかし、相手が知らなかった情報を伝えると、連絡の経路を広げる結果にもなりかねません。家族や職場に知られることへの不安がある場合の考え方は、家族・職場に知られずに風俗トラブルを解決する方法|弁護士が解説で解説しています。
電話で話すことになった場合の受け答え
着信に出てしまった場合や、留守番電話に「折り返さなければ自宅に伺う」といった伝言が残されていた場合など、電話で話さざるを得ない場面もあります。電話はやり取りが記録に残りにくく、相手のペースで話が進みやすいため、次の点を意識しておくと落ち着いて対応しやすくなります。
- 最初に相手の名前と所属、連絡先を確認すること。
- 「確認してから改めて連絡します」と伝え、その場で結論を出さないこと。
- 行為の内容や金額について、認める言葉も否定する言葉も控えること。
- 勤務先や家族のことなど、聞かれても答える必要のない情報は伝えないこと。
- 通話の日時と、相手が話した内容をすぐにメモに残すこと。
すでに着信が繰り返されている場合の対応は、【風俗トラブル】帰宅途中に店から着信が続いている|折り返す前に決めておくこともご参照ください。また、家族が先に電話に出てしまった場合は、【風俗トラブル】家族が店からの電話に出てしまった|家族への説明とその後の交渉で整理しています。
返信の前後で残しておきたい記録
後日の請求は、何度かに分けて連絡が来ることが少なくありません。どの時点で誰が何を言ったのかが後から分かるように、次のような記録を残しておくと、相談の際にも状況を伝えやすくなります。
- SMSやメッセージの画面(送信元の番号や日時が分かる形)。
- 着信履歴と留守番電話の録音。
- 通話した日時と、話した内容のメモ。
- こちらから送った返信の文面。
- 請求書面や振込先の案内などが届いた場合はその原本や画像。
SMSを削除したり、相手の番号を着信拒否にしたりする前に、まず記録を保存しておくことが大切です。着信拒否にするかどうかは、記録を残したうえで、今後の対応方針とあわせて考えるとよいでしょう。書面で「法的措置」などの言葉が使われている場合の考え方は、【風俗トラブル】店から届いた請求書面に「法的措置」と書いてある|本当に訴えられるのかをご覧ください。
自分で返信するより弁護士に任せたほうがよい場面
ここまで紹介した例文は、あくまで最初の返信を整えるためのものです。次のような事情がある場合は、自分で返信を続けるよりも、早めに弁護士へ窓口を移すことを検討したほうがよいと考えられます。
- 家族や勤務先への連絡、警察への相談などをほのめかされている。
- 示談金や罰金として高額な金額を示されている。
- 店に来るよう求められたり、自宅を訪ねると言われたりしている。
- 請求の理由に、本番行為や盗撮など刑事事件に関わる内容が含まれている。
- すでに自分で謝罪や支払いの約束をする返信をしてしまった。
すでに自分で返信してしまった場合でも、その後の対応で整えられることはあります。その点については、【風俗トラブル】弁護士に頼む前に自分で連絡してしまった|その後の交渉への影響で解説しています。自分で対応するか弁護士に任せるかの判断材料は、【風俗トラブル】店との交渉を自分でするか弁護士に任せるか|分かれ目になる5つの事情もあわせてご覧ください。
後日届いた電話やSMSでの請求は、最初の返信の言葉選びによって、その後の話し合いの進み方が変わることがあります。すぐに返信しなければと焦るときほど、短く、事実関係や金額に触れない形で返し、記録を残したうえで相談先を探すことが、状況を落ち着いて整理する第一歩になります。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


