【解決事例】デリヘルの本番行為で警察から連絡があり150万円を請求された男性が75万円の示談で解決した事例
この記事は、2026年9月30日時点の民法・刑法・刑事訴訟法・道路交通法の規定をもとに、風俗店の利用中や利用後のトラブルで、財布やスマートフォン、身分証などを店に預けさせられた方に向けて書いています。個別の事情によって結論は変わりますので、実際の対応は弁護士にご相談ください。
「トラブルになった後、店のスタッフに『話が済むまで預かる』と言われてスマホと財布を渡してしまった」「免許証を置いていくよう言われ、そのまま帰されたが、返してほしいと連絡しても応じてもらえない」。風俗トラブルのご相談では、請求された金額の話と並んで、手元から離れた所持品をどう取り戻すかというご相談が少なくありません。
所持品について世間でよく見かける説明は、「自分の物なのだから返してもらえる」「そもそも店に渡さないようにする」というものです。どちらも誤りではありませんが、すでに渡してしまった方にとっては、店がなぜ返さないのか、どういう順序で求めれば返ってきやすいのか、返ってくるまでの間に何をしておけばよいのかが見えにくいままです。
この記事では、店に渡してしまった財布・スマートフォン・身分証などを返してもらうまでの考え方と手順に絞って説明します。店による持ち物確認そのものの適法性や、請求された金額の妥当性、警察に押収された場合の手続は、それぞれ別の解説に委ねます。また、端末内のデータを消す方法や、店に知られずに持ち帰る方法は扱いません。
この記事で扱う場面
この記事は、次のような場面を想定しています。
- 本番行為や盗撮などを指摘され、話し合いが終わるまでの「預かり」として所持品を渡した。
- 示談金を用意するまでの「担保」として、財布やスマートフォンを店に置いてくるよう求められた。
- 身分証を預けたまま帰され、その後の連絡で返却に応じてもらえない。
- 所持品を取り上げられ、返してほしいと伝えても「払えば返す」と言われている。
持ち物を確認させるよう求められた段階の対応は店の持ち物確認はどこまで許されるか|店側の探索行為の適法性で、身分証の提示や撮影に応じるかどうかは身分証の提示・撮影を求められた場合|応じる義務と拒否の帰結で扱っています。
店が所持品を持っていることの法的な位置づけ
まず押さえておきたいのは、財布やスマートフォンを店に渡したからといって、その持ち主が変わるわけではないという点です。店は物を手元に置いているだけで、所有者は引き続きご本人です。そのうえで、店が「返さない」と言うときにどのような理屈が考えられるのかを整理します。
所有者は返却を求めることができる
所有者は、自分の物を他人が正当な理由なく持っている場合、その返還を求めることができます。民法に「返還請求権」という名前の条文があるわけではありませんが、所有権の内容(民法206条)から当然に認められる権利として扱われています。預かり続ける理由がなければ物は持ち主に返すのが原則であり、「話が済んでいないから」という事情だけで、返却を拒み続けられるわけではありません。
店側が持ち出しやすい理屈と、その限界
店が返却を渋るときの説明と、それが法律上どう評価され得るかを並べると、次のようになります。
| 店側の説明 | 考えられる法的な根拠 | 確認したい点 |
|---|---|---|
| 話が済むまで預かる | 留置権(民法295条) | 請求が「その物に関して生じた債権」といえるか。所持品と関係のない罰金や示談金は、通常これにあたらない |
| 払うまでの担保として預かる | 担保の合意(質権など) | 担保の前提となる支払義務が本当にあるか。金額に争いがあれば、担保の話も定まらない |
| 払えなければ店のものにする | 物で支払わせる約束 | 支払期限の前に、物の所有権を取得させる約束をすることは、質権について民法349条が禁じている形にあたり得る |
| 証拠だから渡せない | 証拠の保全 | 証拠を残す必要があるとしても、本体を店が預かり続けることまで当然に認められるわけではない |
留置権は、たとえば修理を頼んだ時計の修理代のように、その物自体から生じた債権があるときに認められるものです。また、占有が不法行為によって始まった場合には留置権は認められません(同条2項)。脅して所持品を取り上げたような経緯があれば、店が留置権を主張する余地はさらに狭くなります。
自分の手で渡したことの意味
「自分から渡してしまったので、もう何も言えないのではないか」と心配される方もいます。渡した経緯は、返却を求める権利そのものを失わせるものではありません。ただし、使える手続には影響します。たとえば、占有を奪われた人が返還を求める占有回収の訴え(民法200条)は、本人の意思で渡した場合には「奪われた」とはいえないと判断されることがあります。反対に、脅されて渡した事情があれば、その渡させ方自体が強要や恐喝として問題になり得ます。いずれにしても、渡したときの状況をできるだけ具体的に記録しておくことが、後の交渉の土台になります。
その場で取り返そうとしないほうがよい理由
自分の物である以上、隙を見て持ち帰りたい、力ずくでも取り返したいと考えるのは自然なことです。ただ、この場面での実力行使は、かえって状況を難しくすることが少なくありません。
自分の物でも、実力で取り戻すことは原則として認められない
法律上の手続によらずに自分の力で権利を実現することは自力救済と呼ばれ、原則として許されていません。最高裁も、法律の手続によっていては権利の侵害を防げない緊急やむを得ない特別の事情がある場合に、必要な限度でのみ例外的に許されるという考え方を示しています。さらに刑法は、自分の物であっても他人が占有している物は、窃盗などの罪との関係では他人の財物とみなすと定めています(刑法242条)。持ち主であることは、実力で取り戻してよい理由にはならないと考えておくのが無難です。
揉み合いは、新しいトラブルの種になる
店員と揉み合いになれば、けがをさせた、突き飛ばされたといった新しい争いが加わります。本番行為や盗撮をめぐる請求に暴行や傷害の主張が重なると、話し合う材料が増え、解決までの道のりは長くなりがちです。複数の店員に囲まれた場面でのやり取りは複数の店員に囲まれた場面|その場での言動が後に持つ意味で、帰ることを妨げられている場合の考え方はその場から帰してもらえない|監禁と不退去の境界で説明しています。
返却と引き換えに署名や支払いをしない
「ここに署名すれば返す」「今払えば返す」と言われると、物を取り戻したい一心で応じてしまいがちです。しかし、その場で署名した書面や支払った金額を後から見直すには、相応の手間がかかります。所持品の返却と、請求に応じるかどうかは本来別の話です。返却を条件にした署名や支払いには、その場では応じず、いったん持ち帰る形をとることをおすすめします。期限を切られた場合の伝え方は【風俗トラブル】支払期限を切られた|『今日中に』に応じないための伝え方を、すでに署名してしまった場合の考え方は脅されて署名した念書・示談書は有効か|「無効」と「取消し」の違いを参考にしてください。
返ってくるまでの間に止めておくもの
所持品が店にある間は、中身を使われたり見られたりするおそれを否定しきれません。返却を求める交渉と並行して、ご自身でできる手当てを先に済ませておくと、落ち着いて交渉を進めやすくなります。
| 手元にない物 | 先にできること | 気をつけたい点 |
|---|---|---|
| クレジットカード・キャッシュカード | カード会社や金融機関に連絡し、利用の一時停止を申し出る | 停止を申し出る理由は、手元にないという事実をそのまま伝えれば足りる |
| スマートフォン | 別の端末から各種サービスのパスワードを変更する。端末の遠隔ロック機能を使う | 盗撮などが問題になっている場合、遠隔でデータを消す操作は、証拠を消したと受け取られるおそれがある |
| マイナンバーカードなどの身分証 | マイナンバーカードは専用の窓口で一時停止を申し出ることができる。預けた経緯をメモしておく | 身分証の写しを取られている可能性も念頭に置く |
| 運転免許証 | 預けた日時と相手を記録しておく | 運転するときは免許証の携帯が義務付けられている(道路交通法95条1項)ため、戻るまで運転は控える |
| 社員証・名刺・会社の端末 | 勤務先の規程に沿った届出が必要かを確認する | 届出の範囲や伝え方は、事前に相談しておくと判断しやすい |
なお、財布の中の現金が「示談金の一部」「罰金」として抜き取られていた場合は、所持品の返却とは別に、支払った金銭を取り戻せるかという問題になります。この点は払ってしまった後に取り戻せるか|恐喝・強迫を理由とする返還で、店が科す「罰金」の考え方は「罰金」を請求された|私人が罰金を科すことはできないで扱っています。
返してもらうための手順
所持品の返却を求めるときは、感情的なやり取りを避け、何を、いつ、どのように返してほしいのかを一つずつ特定していくことが大切です。
預けた物を特定し、記録に残す
最初に、店に渡した物をすべて書き出します。財布なら中に入っていたカード類や現金の額、スマートフォンなら機種や色、ケースの有無まで、分かる範囲で具体的にしておきます。あわせて、いつ、どこで、誰に、どのような言葉とともに渡したのかも記録します。返却を求める連絡は、電話だけで済ませず、メールやメッセージなど日時と文面が残る形でも送っておくと、後で「そんな連絡は受けていない」と言われることを防ぎやすくなります。
返却の求めを、請求への回答と切り離す
店からの請求に対する答えと所持品の返却の求めを一つの連絡に混ぜると、「払わないなら返さない」という交換条件の話に持ち込まれやすくなります。返却については「預けた物を返してください」とだけ伝え、請求については内容を確かめたうえで別に回答する、と分けておくのが一つの方法です。請求の中身を確かめる前に交換条件に乗らないことが、後の交渉の幅を残すことにつながります。
受け渡しの場所と方法を決める
返却の話がまとまっても、ご本人がひとりで店に取りに行くと、その場で改めて請求や署名を求められることがあります。受け渡しは、郵送や宅配便で送ってもらう、代理人を通じて受け取るなど、ご本人が店の中で店員と向き合わずに済む方法を選ぶほうが、落ち着いて進めやすくなります。
返ってきたときに確かめること
受け取ったら、できるだけ早く中身を確認します。カード類や現金がそろっているか、スマートフォンの設定が変えられていないか、見慣れないアプリや連絡先が加わっていないかなどです。気になる点があれば、受け取った日時とあわせて記録しておきます。
弁護士が入ると何が変わるのか
所持品の返却は、ご本人が店と直接やり取りするより、弁護士を窓口にしたほうが進みやすい場面があります。
窓口が代わることで、交換条件の話から離れやすくなる
弁護士が代理人として入ると、店との連絡は弁護士を通じて行うことになります。返却の求めを書面で伝え、請求への対応は別に協議するという形を示すことで、「払えば返す」という話し方から、返却の段取りそのものの話に移りやすくなります。私がこれまで扱ってきた事案でも、請求への対応とあわせて、預けさせられた身分証や私物の返却を実現したものがあります。【解決事例】風俗店での盗撮発覚で身分証を預けさせられた|返還を受け、示談金100万円(分割)で解決した事例、【解決事例】同意書に署名させられた後の風俗トラブル|身分証の返還と示談成立までの流れ、【解決事例】デリヘル利用時の無断録音トラブル|弁護士介入による迅速な交渉で不当な高額請求を退け私物を回収した事例もあわせてご覧ください。
交渉で返してもらえない場合
交渉で返してもらえない場合には、裁判所の手続を使うことも考えられます。所有権に基づいて物の引渡しを求める訴えを起こすほか、急ぐ事情があれば仮処分を申し立てる方法もあります。もっとも、裁判所の手続には時間と費用がかかり、トラブルの経緯が裁判所の記録として残ることにもなります。所持品の価値や、請求への対応とのかね合いを踏まえて選ぶことになるため、手続を使うかどうかは相談のうえで判断していただくのがよいと考えています。
警察が関わっている場合は扱いが変わる
店が警察を呼び、所持品が警察に渡っている場合は、店との交渉ではなく刑事手続の中で返却を考えることになります。警察が提出を受けたり押収したりした物は、捜査に必要な間は保管され、必要がなくなれば還付という形で返されるのが基本です(刑事訴訟法123条・222条)。盗撮に使われたとされる端末であれば、中身の確認が終わるまで返らないことが多く、裁判になれば没収の対象になることもあります。この場面の流れはスマホ・PCを押収された|いつ返るのか、中身はどこまで見られるのかで、提出を求められた段階の考え方は【刑事事件】警察に「スマホを任意で出してほしい」と言われた|応じる前に確認することで説明しています。
また、店が「警察に渡す」と言いながら手元に置き続けている場合もあります。警察に渡ったのかどうかがはっきりしないときは、その点を確かめることから始めます。
返ってきても残る問題
所持品が手元に戻っても、それですべてが片づくとは限りません。返却の後に残りやすい問題を二つ挙げます。
写しや撮影された情報は、物と一緒には戻らない
身分証や名刺は、預けている間に写しを取られたり、撮影されたりしていることがあります。スマートフォンについても、ロックが解除された状態で渡していれば、中身を見られた可能性は残ります。物の返却と、写しや情報の扱いは別の問題として整理する必要があるため、示談をする場合には、写しの破棄や第三者に渡さないことを条項として書面に入れておくことが考えられます。個人情報を握られた場合の考え方は風俗店・キャストに個人情報を握られた|悪用・晒しを防ぐにはで、示談書に入れておきたい条項は風俗トラブルの示談書に必ず入れる6条項|抜けると後で効かないで説明しています。
盗撮のデータは、返却とは別に話し合う
盗撮が問題になっている場合、店やキャストの側は、撮影されたデータが消されることを求めるのが通常です。この場合、端末を返してもらうこととデータをどう扱うかは、切り離して考えることになります。ご本人の判断だけでデータを消してしまうと、後で事実関係を説明しにくくなることもあるため、消去の方法やその確認の仕方は、交渉の中で相手方と取り決めていくのが一般的です。
ご相談の際に整理しておいていただきたいこと
所持品の返却についてご相談いただく際は、次の点を分かる範囲でまとめておいていただくと、話が進めやすくなります。
- 店に渡した物の一覧と、それぞれの中身。
- 渡した日時・場所・相手と、そのとき言われた言葉。
- 渡すときに署名した書面や、写しを取られた書類があるかどうか。
- 店から示されている請求の内容と金額。
- 警察が来たかどうか、所持品が警察に渡ったかどうか。
- カードの利用停止など、すでに済ませた手当て。
記録がそろっていなくても、ご相談いただくことはできます。覚えている範囲でお話しいただければ、足りない部分は一緒に確認していきます。
よくあるご質問
身分証を預けたまま帰ってきてしまいました。もう返ってこないのでしょうか。
帰ってきたことで、返却を求める権利がなくなるわけではありません。預けた経緯と身分証の種類を整理したうえで、日時と文面が残る形で返却を求めることから始めます。返ってくるまでの間は、マイナンバーカードの一時停止など、ご自身でできる手当てを並行して進めておくとよいでしょう。
店から「払えば返す」と言われています。払ったほうが早いのではないでしょうか。
支払えば返ってくる可能性はありますが、請求の金額や根拠を確かめないまま支払うと、後から見直すことが難しくなります。また、一度支払った後に、別の名目で請求が続く例もあります。返却の話と支払いの話を分け、請求の中身を確かめてから判断することをおすすめします。
夜遅くでも相談の連絡をしてよいですか。
事務所の受付は営業時間中が基本ですが、営業時間外に事務所へお電話をいただいた場合も、連絡があったことは24時間、所属弁護士と事務局に共有されます。事案によっては、担当の弁護士から営業時間外にご連絡することもあります。所持品が店にある状態が続いている場合は、その場で決める前に、まずお電話ください。
まとめ
- 店に渡した財布やスマートフォンの所有者は変わらず、正当な理由がなければ返却を求めることができる(民法206条)。
- 罰金や示談金は、通常、所持品に関して生じた債権とはいえず、留置権の根拠にはなりにくい。占有が不法行為によって始まった場合は留置権が認められない(民法295条)。
- 払えなければ所持品を店のものにするという約束は、民法349条が禁じている形にあたり得る。
- 自分の物でも実力で取り戻すことは原則として許されず、他人が占有している物は他人の財物とみなされる(刑法242条)。
- 返却の求めは、請求への回答と切り離し、日時と文面が残る形で伝える。
- 返ってくるまでの間に、カードの利用停止やパスワードの変更などの手当てを進めておく。
- 警察に渡った物は、刑事手続の中で還付を待つことになる(刑事訴訟法123条・222条)。
- 写しや撮影された情報は物と一緒に戻らないため、示談の条項で扱いを取り決める。
弁護士法人若井綜合法律事務所では、風俗トラブルに関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。店に所持品を預けたまま返してもらえない方、返却と引き換えに署名や支払いを求められている方からのご相談にも対応しています。
所持品が手元にない状態が続くと、その不安から、請求に応じてしまいたくなることもあると思います。その場で決める前に、一度ご相談ください。


